飲食店版

新事業進出・ものづくり補助金(新事業進出枠): 店の外に売上をつくる大型支援

2026年10月19日更新 / 定番制度の飲食店向け解説

ナビコッコ
「店の売上は席数×回転×単価が天井」。物理法則のようなこの限界を超える方法が、店の外に売る新事業です。冷凍餃子の製造販売、名物ダレのEC、他店への卸。席を使わない売上を持つ店は、雨の日も定休日も稼ぎます。その立ち上げ投資に大型補助を付けるのがこの制度です。

飲食店の売上には物理的な天井があります。席数×回転×単価×営業日数です。どれだけ繁盛しても、売上はこの式の外には出られません。この式の外に売上を作る方法が「店の外に売る」新事業です。冷凍餃子の製造販売、名物メニューのEC、セントラルキッチンからの卸。新事業進出・ものづくり補助金の新事業進出枠は、その立ち上げの建物・設備に数千万円級の支援を用意した、飲食で使える最大級の制度です。この補助金の公募は第4回で終わり、新規の受付は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の新事業進出枠に移りました。補助下限750万円・補助率1/2は新事業進出枠も同じです。申請するときは、新制度の公募要領で要件を確認しましょう。

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制度の骨格

位置づけ事業再構築補助金の後継。新市場・新事業への進出を支援
規模補助額の下限は750万円。上限は従業員規模別に2,500万〜7,000万円・補助率1/2基本。総投資の目安は1,500万円以上
対象経費建物費(改修・建築)・機械装置・システム等。大型投資向け
要件の軸新事業性+付加価値額の成長+賃上げ関連。金融機関・支援機関の関与も
公募の状況第4回で公募終了。新規の受付は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(新事業進出枠)へ

飲食の「新事業」5つの型

  • 製造小売(冷凍・レトルト化)。名物メニューの冷凍商品化。急速冷凍機は100〜300万円・小規模加工場の整備は500〜1,500万円が相場観です。急速冷凍機・包装機・加工場の整備で、店の味を全国商品に変えます。冷凍設備の記事で取り上げた技術の進化が、この型の追い風です
  • EC・通販。自社EC・モール出店・ふるさと納税返礼品。EC構築は30〜150万円、モール手数料は10%前後です。製造とセットで「作って売る」まで通した計画にすると、新事業性が明確になります
  • セントラルキッチン。多店舗化・卸・給食受託の基盤です。2店舗目以降の仕込み人件費を2〜3割減らせる規模が、検討を始める目安です。仕込みを集約すると、既存店の省力化にもつながります。給食・弁当・ケータリングの受託は官公庁や学校の入札案件として出ることも多く、過去の落札金額は入札コンパスで業務別に調べられます。受託単価の相場をつかむのに役立ちます
  • 大規模業態転換。5つの中でいちばん注意が要る型です。要件の「市場の新規性」は、既存事業とは異なる顧客層(法人か個人か、業種、行動特性など)を相手にすることを指します。居酒屋→焼肉のように、同じ地域の個人の外食客を相手にしたままの転換は、この説明が立ちにくい型です。公式の手引きでも、アイスクリーム店がかき氷を売っても客が同じなら要件を満たさない、という例が示されています。業態を変えるなら、今の店では取れていない顧客層を狙う計画にして、はじめて候補になります
  • フランチャイズ・のれん分け本部化。教育システム・マニュアル・本部機能への投資。承継の記事で書いた「型化された店」は、この道にも繋がります

計算例: 冷凍餃子の製造販売

  • 餃子が名物の中華食堂が、加工場+急速冷凍機+包装ラインに総投資1,500万円、補助率1/2で補助750万円・自己負担750万円とします。補助額が下限の750万円ちょうどなので、経費の一部が対象外と判断されて補助額が下限を割ると、採択取消になる点に注意しましょう
  • 冷凍餃子30個入り1,200円・粗利率50%・月3,000パック(EC+店頭+地元スーパー卸)で年商4,320万円・粗利2,160万円の事業計画が立ちます
  • もちろん3,000パックは簡単ではありません。でも席数12の店の売上天井が年2,000万円だとすれば、製造販売は天井そのものを引き上げる投資です
  • この規模は事業計画書を「第二の創業計画」として書き、金融機関の融資(自己負担分)・認定支援機関の関与まで一体で組む規模の話です。書類づくりの負担は持続化補助金の数倍と覚悟してください

許可の地図: 作る前に保健所へ

  • 店内提供の営業許可と製造販売の許可は、別の制度と考えましょう。そうざい製造業・菓子製造業・冷凍食品製造業など、商品によって必要な許可が変わり、専用の区画・設備基準があります
  • EC販売には食品表示(原材料・アレルゲン・栄養成分)と賞味期限設定の根拠(検査)が必要です。1商品あたり数万円の検査費も計画に入れましょう
  • 「今の厨房で作って売ればいい」という選択肢は、真っ先に外れます。営業許可の厨房と製造許可の施設は基準が違います。だからこそ加工場整備が補助対象になるのです。すべては設計前の保健所相談から始まります

申請前の自己診断

  1. 投資規模は1,500万円以上か。補助額の下限が750万円・補助率1/2なので、総投資1,500万円以上が目安です。それより小さく数百万円なら持続化補助金、機器単体なら省力化投資補助金が見合います
  2. 「新事業」の一行説明が立つか。「既存の店の改善」ではなく「新しい市場に新しい商品を」の線が引けるか
  3. 財務体力はあるか。補助は後払いです。自己負担+立替の資金調達(つなぎの記事)を金融機関と組めるか
  4. 人はいるか。製造責任者やEC担当の当てはあるか。店主が店に立ちながら全部やる計画は、審査でも現実でも行き詰まります

段取り: 6ヶ月の長期戦

  1. 6ヶ月前。事業構想・投資規模の確定。金融機関への打診と認定支援機関の選定
  2. 4ヶ月前。保健所への許可相談(製造業許可の施設基準)・加工場物件の当たり
  3. 3ヶ月前。事業計画書の作成開始。市場・数値・体制の3点を「第二の創業計画」の水準で。gBizIDは初日に
  4. 2ヶ月前。相見積もり・設備仕様の確定・賞味期限検査の段取り
  5. 公募〜採択後。締切1週間前提出→採択→交付申請→交付決定→着工。工期が実施期間に収まっているかが、いちばん注意して管理する点です

よくある誤解

  • 「大型補助金は大企業向け」。中小企業向けの制度です。従業員8人の食堂が1,500万円の加工場を作るといった、まさにその規模を想定した設計です
  • 「店が繁盛してから考える話」。逆の面もあります。席数の天井に当たっている繁盛店こそ、成長の受け皿が店の外にしかありません。行列は新事業の市場調査が済んでいる証拠でもあります
  • 「採択されれば安心」。補助金は後払いで、建物投資は先払いです。採択はゴールではなく、金融機関と本格的に相談する始まりです。交付決定から入金までの長い期間を、融資と組み合わせて乗り切りましょう

計算例②: 業態転換の判断軸

  • 売上の落ちた居酒屋(月商250万円・営業利益ほぼゼロ)が焼肉業態へ転換するケース。改装・ロースター・ダクトで総投資1,200万円、補助率1/2なら補助額は600万円で、本制度の補助下限750万円に届きません。この規模のままでは対象外です
  • 転換後の計画が月商350万円・営業利益率8%なら年336万円です。補助なしで1,200万円を融資と自己資金でまかなうと、回収は約3.6年です。現状維持(利益ゼロ)と比べれば投資の意味はありますが、判断の軸は補助金ではなく、転換後の月商350万円が本当に立つかどうかです
  • 投資を1,500万円以上に広げても、居酒屋も焼肉店も個人の外食客が相手なので、市場の新規性要件の説明が立ちにくい転換です。転換は「今の常連を一度手放す」決断でもあります。客層データ・商圏の競合・スタッフの再教育まで含めて、転換先業態の記事と事業計画書の記事で詳しく検討してから踏み切りましょう
  • この転換の計画書は、融資審査や規模を落とした持続化申請に使い回せます。採択率の記事の「計画書は資産」は、大型制度ほど当てはまる原則です

検討チェックリスト

  • ☐ 投資規模から制度選択(本制度か持続化・省力化か)をしたか
  • ☐ 「何が新事業か」を一行で説明できるか
  • ☐ 製造・販売の許可を保健所に確認したか
  • ☐ 自己負担分の資金調達を金融機関と相談したか
  • ☐ 新事業の責任者の当てはあるか
  • ☐ 認定支援機関の関与要件を確認したか
  • ☐ 賞味期限検査・食品表示の費用を計画に入れたか(製造販売の場合)
  • ☐ 不採択時の代替ルート(融資・持続化)を描いたか
  • ☐ 売り先の当て(意向書・仮契約)を先に付けたか
  • ☐ 実施期間と工期・納期の整合を確認したか

製造販売でいちばん先に決めたいのは、売り先です。作る工程は設備と許可で形になりますが、売り先がなければ在庫が残るだけです。設備より先に、地元スーパー・EC・ふるさと納税のどこで何パック売るかの当てを付けましょう。販路の仮契約や意向書は、審査でも実現可能性を示すいちばん強い証拠になります。

まとめると、新事業進出枠は、飲食店が「席数の物理法則」の外に売上を作るための足がかりです。名物メニューという資産を店の外で売上に変える設計図。それを描く覚悟のある店にとって、新規の受付が移った新事業進出枠は、飲食で使える大きな資金源になります。

参考・出典

現在の公募状況

現在、この制度に関連する公募が1件募集中です(2026年10月19日時点・毎朝自動更新):

対象か要確認締切まで11日

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

中小企業の新事業進出・海外展開・高付加価値事業進出を支援。飲食店も対象の可能性があるが、条件詳細が不明瞭。

地域: 全国 上限: 9,000万円 締切: 2026年10月30日

開業に使える制度は、どの地域に多いか

2026年10月19日時点で該当する71件を地域別に数えました。うち全国対象が7件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている45件で見ると、中央値は100万円、最大は5億円です。下から4分の1は30万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切は【募集期間延長】「さかいでからはじめる創業支援補助金」の募集…の2026年10月30日(あと11日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

よくある質問

Q. 新事業進出補助金は今どうなっていますか?

A. 中小企業新事業進出補助金の公募は第4回で終わり、新規の受付は2026年から「新事業進出・ものづくり補助金」の新事業進出枠に移っています。新市場・新事業への進出を建物費・機械装置などの大型投資で支える枠で、補助下限750万円、上限は従業員規模別に2,500万〜7,000万円、補助率1/2です。要件・金額は公募回で変わるため、最新の公募要領で確認しましょう。

Q. 飲食店はどんな使い方ができますか?

A. 冷凍食品・レトルトの製造販売(製造設備・加工場)、EC・通販事業の立ち上げ、セントラルキッチン整備、フランチャイズ本部化などが「新事業」の型になります。業態転換は、居酒屋から焼肉のように同じ個人の外食客を相手にしたままだと、市場の新規性要件(既存事業とは異なる顧客層)を満たしにくい点に注意しましょう。既存店舗の単純な改装・増床も対象になりにくいです。

Q. 小さい店でも対象になりますか?

A. 中小企業向けの制度なので従業員数の下限はありませんが、補助額の下限が750万円で補助率1/2のため、総投資1,500万円以上の計画が前提です。付加価値額の成長・賃上げ関連の要件もあります。投資規模が数百万円までなら持続化補助金、機器単体なら省力化投資補助金のほうが規模に見合います。投資規模から制度を選ぶ順番で考えましょう。

Q. 製造販売を始める場合、許可はどうなりますか?

A. 店内飲食の営業許可と、製造販売(そうざい製造業・菓子製造業・冷凍食品製造業等)の許可は別物です。ECで全国に売るなら食品表示・賞味期限設定の科学的根拠も必要になります。設備投資の前に保健所への相談が必須です。

Q. 審査は厳しいですか?

A. 大型の制度なので、審査もそれ相応に厳しくなります。新事業の市場分析・数値計画・実行体制が審査の中心で、金融機関や認定支援機関の関与を求められる場合もあります。「店の延長の思いつき」ではなく「第二の事業の創業計画」として書く覚悟が要る制度です。

他の定番制度

公開 2026年8月16日 / 最終更新 2026年10月7日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源

更新履歴(2件)
  • 本文中の制度の呼び方を、後継制度「新事業進出・ものづくり補助金」の新事業進出枠に更新
  • 公募は第4回で終わり新制度の新事業進出枠に移った点を追記、補助下限750万円から総投資1,500万円以上が前提と修正、居酒屋→焼肉の転換は新規性要件を満たしにくいと修正
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