飲食店版

新事業進出補助金: 店の外に売上をつくる大型支援

2026年9月3日更新 / 定番制度の飲食店向け解説

ナビコッコ
「店の売上は席数×回転×単価が天井」——この物理法則を破る方法が、店の外に売る新事業です。冷凍餃子の製造販売、名物ダレのEC、他店への卸。席数ゼロの売上を持つ店は、雨の日も定休日も稼ぐ。その立ち上げ投資に大型補助を付けるのがこの制度です。

飲食店の売上には物理的な天井があります。席数×回転×単価×営業日数——どれだけ繁盛しても、この式の外には出られない。この式の外に売上を作る方法が「店の外に売る」新事業です。冷凍餃子の製造販売、名物メニューのEC、セントラルキッチンからの卸。新事業進出補助金は、その立ち上げの建物・設備に数千万円級の支援を用意した、飲食で使える最大級の制度です。

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制度の骨格

位置づけ事業再構築補助金の後継。新市場・新事業への進出を支援
規模上限は従業員規模別で数千万円級・補助率1/2基本
対象経費建物費(改修・建築)・機械装置・システム等。大型投資向け
要件の軸新事業性+付加価値額の成長+賃上げ関連。金融機関・支援機関の関与も

飲食の「新事業」5つの型

  • 製造小売(冷凍・レトルト化) — 名物メニューの冷凍商品化。急速冷凍機は100〜300万円・小規模加工場の整備は500〜1,500万円が相場観です。急速冷凍機・包装機・加工場の整備で、店の味を全国商品に変えます。冷凍設備の記事の技術進化が、この型の追い風です
  • EC・通販 — 自社EC・モール出店・ふるさと納税返礼品。EC構築30〜150万円・モール手数料10%前後の世界で、製造とセットで「作って売る」一気通貫の計画にすると新事業性が明確になります
  • セントラルキッチン — 多店舗化・卸・給食受託の基盤。2店舗目以降の仕込み人件費を2〜3割圧縮できる規模から検討ラインです。仕込みの集約は既存店の省力化にも波及します。給食・弁当・ケータリングの受託は官公庁や学校の入札案件として出ることも多く、過去の落札金額は入札コンパスで業務別に調べられます(受託単価の相場観づくりに)
  • 大規模業態転換 — 客層・市場が変わる転換(居酒屋→焼肉、定食→ベーカリーカフェ等)。単なる改装との違いは「新市場」の説明が立つかどうかです
  • フランチャイズ・のれん分け本部化 — 教育システム・マニュアル・本部機能への投資。承継の記事で書いた「型化された店」は、この道にも繋がります

計算例: 冷凍餃子の製造販売

  • 餃子が名物の中華食堂が、加工場+急速冷凍機+包装ラインに総投資1,500万円、補助率1/2で自己負担750万円とします
  • 冷凍餃子30個入り1,200円・粗利率50%・月3,000パック(EC+店頭+地元スーパー卸)で年商4,320万円・粗利2,160万円の事業計画が立ちます
  • もちろん3,000パックは簡単ではありません。でも席数12の店の売上天井が年2,000万円だとすれば、製造販売は天井そのものを書き換える投資です
  • この規模は事業計画書を「第二の創業計画」として書き、金融機関の融資(自己負担分)・認定支援機関の関与まで一体で組む世界です。書類の重さは持続化補助金の数倍と覚悟してください

許可の地図: 作る前に保健所へ

  • 店内提供の営業許可と製造販売の許可は、別の制度と考えましょう。そうざい製造業・菓子製造業・冷凍食品製造業など、商品によって必要な許可が変わり、専用の区画・設備基準があります
  • EC販売には食品表示(原材料・アレルゲン・栄養成分)と賞味期限設定の根拠(検査)が必要です。1商品あたり数万円の検査費も計画に入れましょう
  • 「今の厨房で作って売ればいい」は最初に消える選択肢です。営業許可の厨房と製造許可の施設は基準が違う——だからこそ加工場整備が補助対象になるのです。設計前の保健所相談が全ての起点です

申請前の自己診断

  1. 投資規模は1,000万円級か — 数百万円なら持続化補助金、機器単体なら省力化投資補助金が釣り合います
  2. 「新事業」の一行説明が立つか — 「既存の店の改善」ではなく「新しい市場に新しい商品を」の線が引けるか
  3. 財務体力はあるか — 補助は後払い。自己負担+立替の資金調達(つなぎの記事)を金融機関と組めるか
  4. 人はいるか — 製造責任者・EC担当の当て。店主が店に立ちながら全部やる計画は、審査でも現実でも破綻します

段取り: 6ヶ月の長期戦

  1. 6ヶ月前 — 事業構想・投資規模の確定。金融機関への打診と認定支援機関の選定
  2. 4ヶ月前 — 保健所への許可相談(製造業許可の施設基準)・加工場物件の当たり
  3. 3ヶ月前事業計画書の作成開始。市場・数値・体制の3点を「第二の創業計画」の水準で。gBizIDは初日に
  4. 2ヶ月前相見積もり・設備仕様の確定・賞味期限検査の段取り
  5. 公募〜採択 — 締切1週間前提出→採択→交付申請→交付決定→着工。工期と実施期間の整合が最大の管理点です

よくある誤解

  • 「大型補助金は大企業向け」 — 中小企業向けの制度です。従業員8人の食堂が1,500万円の加工場を作る——まさにその規模のための設計です
  • 「店が繁盛してから考える話」 — 逆の面もあります。席数の天井に当たっている繁盛店こそ、成長の受け皿が店の外にしかありません。行列は新事業の市場調査が済んでいる証拠でもあります
  • 「採択されれば安心」 — 補助金は後払いで、建物投資は先払いです。採択はゴールではなく金融機関との本格相談の始まり。交付決定から入金までの長い道を、融資とセットで走ります

計算例②: 業態転換の判断軸

  • 売上の落ちた居酒屋(月商250万円・営業利益ほぼゼロ)が焼肉業態へ転換するケース。改装・ロースター・ダクトで総投資1,200万円、補助率1/2で自己負担600万円とします
  • 転換後の計画が月商350万円・営業利益率8%なら年336万円——自己負担の回収は約2年。現状維持(利益ゼロ)と比べれば、投資の意味は明確です
  • ただし転換は「今の常連を一度手放す」決断でもあります。客層データ・商圏の競合・スタッフの再教育まで含めて、転換先業態の記事事業計画書の記事で解像度を上げてから踏み切りましょう
  • 不採択でも計画書は融資審査・次回公募・規模を落とした持続化申請に使い回せます。採択率の記事の「計画書は資産」は、大型制度ほど効く原則です

検討チェックリスト

  • ☐ 投資規模から制度選択(本制度か持続化・省力化か)をしたか
  • ☐ 「何が新事業か」を一行で説明できるか
  • ☐ 製造・販売の許可を保健所に確認したか
  • ☐ 自己負担分の資金調達を金融機関と相談したか
  • ☐ 新事業の責任者の当てはあるか
  • 認定支援機関の関与要件を確認したか
  • ☐ 賞味期限検査・食品表示の費用を計画に入れたか(製造販売の場合)
  • ☐ 不採択時の代替ルート(融資・持続化)を描いたか
  • ☐ 売り先の当て(意向書・仮契約)を先に付けたか
  • ☐ 実施期間と工期・納期の整合を確認したか

製造販売に進んだ店の先輩たちが口を揃える注意がひとつあります——「作るのは何とかなる。売り先を先に決めろ」。設備より先に、地元スーパー・EC・ふるさと納税のどこで何パック売るかの当てを付ける。販路の仮契約や意向書は、審査でも最強の実現可能性の証拠になります。

結論。新事業進出補助金は、飲食店が「席数の物理法則」の外に売上を作るための橋です。名物メニューという資産を、店の外で換金する設計図——それを描く覚悟のある店にとって、この制度は飲食で使える最大の資金源になります。

現在の公募状況

現在、この制度に関連する公募が1件募集中です(2026年9月3日時点・毎朝自動更新):

対象か要確認

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

中小企業の新事業進出・海外展開・高付加価値事業進出を支援。飲食店も対象の可能性があるが、条件詳細が不明瞭。

地域: 全国 上限: 9,000万円 締切: 2026年10月30日

よくある質問

Q. 新事業進出補助金とはどんな制度ですか?

A. 事業再構築補助金の後継として位置づけられる、新市場・新事業への進出を支援する大型補助金です。建物費・機械装置などを支援し、上限額は従業員規模により数千万円級、補助率1/2が基本の設計です。要件・金額は公募回で変わるため最新の公募要領で確認しましょう。

Q. 飲食店はどんな使い方ができますか?

A. 冷凍食品・レトルトの製造販売(製造設備・加工場)、EC・通販事業の立ち上げ、セントラルキッチン整備、居酒屋から焼肉への大規模業態転換、フランチャイズ本部化などが「新事業」の型になります。既存店舗の単純な改装・増床は対象になりにくい点に注意が必要です。

Q. 小さい店でも対象になりますか?

A. 中小企業向けの制度なので規模の下限はありませんが、数百万円〜数千万円級の投資計画と、付加価値額の成長・賃上げ関連の要件が前提です。投資規模が数百万円までなら持続化補助金、機器単体なら省力化投資補助金のほうが釣り合います。投資規模から制度を選ぶ順番で考えましょう。

Q. 製造販売を始める場合、許可はどうなりますか?

A. 店内飲食の営業許可と、製造販売(そうざい製造業・菓子製造業・冷凍食品製造業等)の許可は別物です。ECで全国に売るなら食品表示・賞味期限設定の科学的根拠も必要になります。設備投資の前に保健所への相談が必須です。

Q. 審査は厳しいですか?

A. 大型ゆえに相応です。新事業の市場分析・数値計画・実行体制が審査の中心で、金融機関や認定支援機関の関与を求められる場合もあります。「店の延長の思いつき」ではなく「第二の事業の創業計画」として書く覚悟が要る制度です。

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