飲食店版

相見積もりのルール:2社の紙が証明する「正しい買い物」

2026年9月3日更新 / 飲食店主向けガイド

ナビコッコ
相見積もりを「面倒な儀式」と呼ぶ店主さんは多いのですが、見方を変えてみましょう。国のお金で買い物をするから、高値づかみでないことを証明する——それだけの話です。しかも副産物として、あなたは自腹の買い物でも値切れるようになります。

補助金の書類で、店主さんの手が最初に止まるのが相見積もりです。「付き合いのある厨房業者に頼むと決めているのに、なぜ他社の見積もりが要るのか」。答えはシンプルで、あなたの買い物に税金が入るから、価格の妥当性を紙で証明する必要があるのです。儀式ではなくルール、そして慣れれば店の武器にもなる。頼み方から理由書まで、この記事で一式そろえましょう。

?

この記事に関係する制度、目的を選ぶだけで10秒診断

選ぶとその場で診断が実行されます。結果画面で地域を足すとさらに絞り込めます / 無料・登録不要

基本ルール: いくらから何社必要か

  • 多くの制度で「一定額以上の経費は2社以上の見積もり」という基準が置かれます。目安としてよく見るのは税抜50万円以上の線ですが、制度によって金額も社数も違うため、公募要領の経費の章で確認するのが出発点です
  • 中古品はさらに厳しく、3社以上の見積もりを求める制度があります。相場の怪しい中古市場だからこその追加証明です
  • 基準額未満の経費でも見積もり自体は必要です(1社でよいだけ)。「50万円未満なら書類不要」ではありません
  • この仕組みは、役所自身が物品を買うときの入札・複数見積もりのルールの民間版です。「税金で買い物をする人は必ず比較する」という一貫した原則だと分かれば、要求の意図も飲み込みやすいはずです。役所側の実際の落札金額は入札コンパス(官公庁入札の落札相場データベース)で公開されており、公的機関が同じ品目をいくらで買っているかを見ると「相場観のある見積もり」の感覚がつかめます
  • 選定は原則、最低価格。高いほうを選ぶなら業者選定理由書で「性能・納期・保守」を数字で説明します。逆に言えば、理由書を書ける選定なら安値縛りではありません

頼み方: 同一条件でなければ比較にならない

  1. 仕様書を1枚作る — 品名・型番(または同等品条件)・数量・設置工事の範囲・納期・支払い条件を箇条書きに。これを2社に同じものとして渡します。仕様がずれた見積もり同士は、審査側から見ると比較の体をなしません
  2. 書式の指定を伝える — ①税抜表記(補助対象経費は税抜計算が基本)②有効期限交付決定までの待ちを見込んで長めに。交付決定の記事参照)③宛名は申請名義と統一④「一式」ではなく内訳明細——の4点です
  3. 補助金に使うと正直に言う — 隠す理由がありません。むしろ「交付決定まで発注できない」事情を先に共有できるので、業者との行き違いが減ります。補助金慣れした業者なら書式も先回りしてくれます
  4. もらった見積もりは原本保存 — 申請だけでなく実績報告でも同じ見積もりが証拠書類になります。6点セットの1枚目です
  5. 依頼は2社同日に — 時期をずらすと、資材価格の変動で条件が揃わない原因になりがちです。同じ日に同じ仕様書で依頼し、回収期限も「◯日までに」と揃えるのが、比較の精度と業者への礼儀の両立です

計算例: 相見積もりの副産物

  • 厨房機器の見積もりで、A社148万円・B社131万円という結果が出たとします。差額17万円——相見積もりを取っただけで、月商300万円・利益率10%の店の17日分の利益に相当する差が可視化されました
  • 経験則として、設備・工事の相見積もりでは1〜2割の価格差が普通に出ます。150万円の投資なら15〜30万円。書類の手間は2〜3時間なので、時給換算で5万円を超える「事務作業」です
  • 補助率2/3なら、価格が下がった分だけ自己負担も下がります。131万円で発注すれば自己負担は約44万円。相見積もりは補助金の要件である前に、自己負担を削る道具です
  • この習慣は補助金が終わっても残ります。年1回、保険・カード決済手数料・酒販店の条件を相見積もりに掛ける店は、固定費がじわじわ軽くなっていきます

1社しか取れないとき: 業者選定理由書の書き方

  • 特殊設備で取扱いが1社、離島や山間部で施工業者が1社——現実にはよくあります。その場合は業者選定理由書(様式は制度指定または任意)を添えて1社見積もりで申請します
  • 通る理由書の型は「①この経費の特殊性②他社を探した過程(当たった業者名・回答)③この業者でなければならない理由」の3段です。「探したが、いなかった」を具体名で書くのが説得力の芯になります
  • 通りにくいのは「長年の付き合いだから」「対応が良いから」だけの理由書。気持ちは分かりますが、税金の買い物の理由としては弱い。納期・保守拠点の距離・既存設備との互換性など、測れる言葉に置き換えましょう
  • 迷ったら申請前に事務局へ「この状況で1社見積もりは認められますか」と確認。公募要領のQ&A集に同じ問いが載っていることも多いです

やってはいけない調達: 利益相反のライン

  • 自社・親族会社・役員関係会社からの調達 — 補助金で身内に発注してお金を回す構図は、多くの制度で明確に禁止されています。妻が代表の内装会社に発注、は典型的なアウトです
  • 見積もりの偽装 — 1社に「他社名義の見積もりも作っておいて」と頼む——実在する不正の定番で、発覚すれば交付取消・返還・不正受給の公表まであり得ます。比較する2社は実在の別業者でなければ意味がありません
  • 発注後の見積もり日付調整 — 先に発注してから見積もり日付を遡らせるのも同罪です。交付決定前の発注がNGである以上、日付の整合は検査で必ず見られます
  • このあたりのルールは「バレるかどうか」ではなく「店の名前で公表されるリスクを負うか」の問題です。飲食店にとって、名前は商品そのもの。近道は存在しないと考えましょう

届いた見積書のチェック観点

  • 2社の仕様が本当に同じか — 型番・数量・工事範囲・保証年数を一行ずつ突き合わせます。B社だけ搬入費が別枠、はよくあるズレで、比較表の体裁が崩れます
  • 「一式」が残っていないか — 「厨房設備一式 120万円」では審査側が妥当性を検証できません。内訳明細への書き直しを頼みましょう
  • 有効期限・発行日・宛名・押印(または社判) — 形式面の4点セット。日付が申請日より未来、宛名が空欄、は差し戻しの定番です
  • 税抜額が明記されているか — 税込のみの見積もりは、補助対象経費の計算で必ず引っかかります

よくある誤解

  • 「相見積もりは業者への裏切り」 — と感じていませんか。逆です。仕様を揃えて正々堂々比較するのは、業者にとっても選ばれる理由が明確になる健全な商習慣です。気まずさの正体は「黙って取る」ことにあるので、最初から補助金の要件だと伝えましょう
  • 「安いほうを選べば思考停止でいい」 — 最低価格が原則とはいえ、保守が遠方の業者の格安機を選んで、故障のたび営業を止めるのでは本末転倒です。総費用(本体+保守+停止リスク)で考え、高いほうを選ぶなら理由書で語る——それが制度の想定する「賢い買い物」です

見積もり依頼チェックリスト

  • ☐ 公募要領で相見積もりの閾値(金額・社数)を確認したか
  • ☐ 仕様書1枚(型番・数量・工事範囲・納期)を2社に同条件で渡したか
  • ☐ 税抜表記・有効期限・宛名統一・内訳明細を指定したか
  • ☐ 補助金申請に使うことを業者に伝えたか
  • ☐ 1社のみの場合、選定理由書の3段(特殊性・探索過程・理由)を書いたか
  • ☐ 調達先に自社・親族・役員関係がないか確認したか
  • ☐ 2社の見積もりの仕様・内訳を一行ずつ突き合わせたか
  • ☐ 原本を経費ファイルに保存したか(実績報告でも使います)

最後に時間の話を。見積もりの回収には1〜2週間かかるのが普通で、繁忙期の工事業者なら3週間待ちもあります。締切から逆算すると、見積もり依頼は申請作業の最初にやる仕事です。書類を書き始めてから頼むのでは、待ち時間がそのまま徹夜に変わります。

結論。相見積もりは審査のための儀式ではなく、税金で正しく買い物をした証明であり、同時にあなたの自己負担を1〜2割削る実務です。仕様書1枚、同条件で2社。この型を覚えた店は、補助金のない日常の仕入れでも強くなります。

設備投資に使える制度は、どの地域に多いか

2026年9月3日時点で該当する200件を地域別に数えました。うち全国対象が24件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている153件で見ると、中央値は500万円、最大は10億円です。下から4分の1は100万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切は令和8年度ゼロエミッション推進に向けた事業転換支援事業(製品…の2026年9月8日(あと5日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

よくある質問

Q. なぜ相見積もりが必要なのですか?

A. 補助金の原資は税金なので、「その価格が妥当だ」という証明が求められるからです。1社の言い値ではなく複数社の比較で経済性を示す——これが相見積もりの役割です。制度によって「税抜50万円以上の経費は2社以上」のような基準が示されるので、自分の制度の閾値を公募要領で確認しましょう。

Q. 安いほうを選ばないとだめですか?

A. 原則は最低価格の選定です。高いほうを選ぶ場合は、性能・納期・保守体制などの合理的な理由を書面(業者選定理由書)で説明できれば認められる制度が多めです。「いつもの業者だから」は理由になりません。数字と機能で語れる理由を用意しましょう。

Q. 1社からしか見積もりが取れないときは?

A. 特殊な設備で取扱業者が1社しかない、地域に施工業者が1社しかない——そのような場合は、業者選定理由書を添えて1社見積もりで申請できる制度が一般的です。「探したが他にいなかった」ことを、検索した業者名など具体的に書けると通りやすくなります。

Q. 見積もりはどう頼めばいいですか?

A. 同じ仕様書(品名・型番・数量・工事範囲・納期)を2社に渡し、税抜表記・有効期限つきの書面見積もりをもらいます。条件が揃っていない見積もり同士は比較になりません。補助金申請に使うことを正直に伝えると、業者も書式面で協力しやすくなります。

Q. 知り合いの業者や親族の会社に頼めますか?

A. 知り合いの業者自体は問題ありませんが、自社・親族会社・役員が関係する会社からの調達は利益相反として認められない制度が多くあります。100%子会社からの仕入れで補助金、は通りません。関係性に少しでも心当たりがあれば、申請前に事務局へ確認しましょう。

同じテーマのガイド

実際に使える制度を探す