飲食店版

小規模事業者持続化補助金:飲食店での使い方

2026年9月3日更新 / 定番制度の飲食店向け解説

ナビコッコ
窓口の商工会議所は「会員じゃないと相手にされない」と思われがちですが、非会員の相談も普通に受けてくれます。無料です。計画書の書き方のクセを教えてもらえるので、最初の1回は電話より窓口に行くのが近道です。

開業3年目、月商200万円。味には自信があるのに新規のお客さんが増えない。チラシを打ちたいが、デザインと印刷とポスティングで20万円——この出費を前に足が止まっている。そんな店のための制度が、これです。

数ある補助金の中で、個人経営の飲食店が最初に検討すべき定番。理由はシンプルで、「小規模事業者」(飲食店を含む商業・サービス業では常時使用する従業員5人以下)を主役に設計された、数少ない国の制度だからです。

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お金の実感:自己負担はいくらになるか

補助率上限額公募回ごとに変わるため、ここでは過去の回で多かった「補助率2/3」を例に計算します。

60万円の販路開拓(例:看板の掛け替え30万円+チラシ3万部20万円+ネット予約導入10万円)に取り組む場合、2/3の40万円が補助され、自己負担は20万円。ランチ営業に換算すると、客単価900円×25食×9日分の売上で回収できる投資規模まで下がります。この「本来ためらう投資が、ためらわない金額になる」のがこの制度の価値です。

ただし補助金は後払い。60万円は一度全額立て替えます。入金は実績報告の後、着手からだと半年〜10ヶ月先になるのが普通です。立替資金の準備は基礎ガイドで確認しましょう。

飲食店での典型的な使い方と費用相場

取り組み費用の相場観狙い
チラシ・ポスティング3万部で15〜25万円商圏1km内の認知。開店・改装の告知と相性◎
看板・ファサード改修30〜80万円前を通る人の入店率を変える。夜営業なら電飾も
ホームページ・ネット予約20〜60万円「店名検索→電話しかない」の取りこぼし対策
テイクアウト・EC対応包材・什器・売場改修で10〜40万円ランチ弁当・物販という第二の売上列
販路開拓に伴う店内改装50〜150万円客席レイアウト変更・個室化など「新しい客層」文脈で

共通するキーワードは「販路開拓」=新しいお客様を獲得する取り組み。逆に、家賃・仕入れ・人件費のような日常の運転資金には使えません。ここを混ぜた計画書は審査で落ちます。

「うちみたいな小さい店は無理」——一番多い誤解

逆です。この制度は大企業も中堅企業も応募できません。従業員5人以下の店だけの土俵です。夫婦2人の店、1人営業のバー、どれも堂々の本命です。

相談先の補足を一つ。窓口は地域によって「商工会議所」か「商工会」のどちらかに決まっています(おおむね市の中心部は商工会議所、町村部は商工会)。「(あなたの市区町村名) 商工会議所」で検索して出てきた方が、あなたの店の窓口です。

もう一つの誤解が「計画書なんて書けない」。実物は様式数枚で、問われるのは「誰に・何を・どう売るか」を自分の言葉で書けるかだけです。「常連の年配客が中心で、近隣の新築マンション世帯を取り込めていない。だからファミリー向けメニューを開発し、ポスティングで告知する」——この程度の解像度で十分に戦えます。むしろ美辞麗句を並べた借り物の文章の方が通りません。

申請から入金までの時間軸

時期やること
締切1ヶ月前商工会議所・商工会に相談予約、計画書の下書き
締切2週間前窓口確認を受け、様式(事業支援計画書)を発行してもらう
締切電子申請(gBizIDプライムが必要。取得に時間がかかるので先に)
2〜3ヶ月後採択発表 → 交付決定
その後半年前後取り組み実施(発注・支払いは交付決定後)→ 実績報告
報告の1〜2ヶ月後入金

最大の事故ポイントは表の5行目です。交付決定前に発注・契約したものは1円も対象になりません。「採択された!」の勢いで看板屋に電話するのが、毎回どこかで起きる失敗です。詳しくは申請の流れへ。

採択される計画書・落ちる計画書

審査員が読むのは1件あたり数分と言われます。その数分で伝わる計画書には共通点があります。

  • 現状を数字で語っている — 「客数が減った」ではなく「ランチ回転が1.8回→1.3回に落ちた。原因は近隣オフィスの移転で、平日昼の会社員客が3割減ったこと」。数字と因果があるだけで説得力は別物になります
  • ターゲットが具体的 — 「幅広い客層」は禁句です。「駅徒歩5分圏に3棟建った新築マンションの30代ファミリー」まで絞ってこそ、施策(ファミリー向けメニュー+ポスティング)が必然に見えます
  • 取り組みと売上の因果が繋がっている — チラシ3万部→反応率0.3%で90組来店→客単価3,500円×平均2.2名で年70万円の売上増、のように「なぜこの投資で売上が伸びるのか」の算段を式で示します

落ちる計画書は逆です。誰にでも当てはまる美辞麗句、経費の羅列、販路開拓ではなく単なる設備更新。とくに「厨房機器を新しくして効率化」だけの計画は販路開拓の文脈が無いため厳しい戦いになります。設備が主目的なら業務改善助成金や自治体の設備補助の方が素直です。

特別枠と加点の存在も知っておく

公募回によって、創業枠・賃上げ枠・事業承継枠などの特別枠や、加点項目(賃上げ表明・地域資源の活用など)が設定されます。開業3年以内なら創業枠が使える回が多く、通常枠より上限が高い傾向があります。どの枠で出すかで戦い方が変わるので、公募要領の枠一覧は最初に読んでください。ここは回ごとに変わる部分なので、本ページ下部の公募状況から最新の要領へ当たるのが確実です。

申請前チェックリスト

  • 従業員は5人以下か(パート・アルバイトのカウント方法は公募要領の定義で確認。「常時使用」の解釈に注意)
  • gBizIDプライムを取得済みか(未取得なら今日申請。数日〜2週間かかります)
  • 商工会議所の相談予約を入れたか(締切直前は窓口が混みます)
  • 取り組みの見積もりを取ったか(計画書の経費欄は見積もりベースで書く)
  • 全額立て替えられる資金があるか(無ければ立替資金ガイドのつなぎ融資も視野に)
  • 実績報告用の証憑(領収書・振込記録・成果物の写真)を残す段取りを決めたか
  • 公募要領の最新版を読んだか(年度・回で枠も上限も変わります。古いブログ記事を鵜呑みにしないのが鉄則)

実績報告でつまずかない

採択はゴールではありません。実績報告が通って初めて入金されます。ここで慌てないための証憑ルールは3つ。

  • お金の流れを紙で残す — 見積書→発注書→納品書→請求書→振込記録の一式。現金払いは避け、銀行振込で通帳に痕跡を残すのが安全です
  • 成果物を写真で残す — 納品された看板、配布前のチラシの現物、設置後の店頭。「作った証拠」は後から撮れないものが多いので、その場で撮る習慣を
  • 按分に注意 — 私用と兼ねるもの(例:自宅兼店舗の改修)は対象外や按分になります。迷う経費は使う前に事務局へ照会を。事後の「知らなかった」は通りません

結論。小さい飲食店の「最初の一歩」はこの制度が定番です。今日できることは2つ——gBizIDプライムの申請と、商工会議所への相談予約の電話。どちらも無料で、合わせて30分もかかりません。下の公募状況で募集中の回を確認して、そこから始めましょう。

現在の公募状況

現在、この制度に関連する公募が3件募集中です(2026年9月3日時点・毎朝自動更新):

飲食店対象

小規模事業者持続化補助金(共同・協業型)(第3回)

小規模飲食店が複数社で共同・協業して販路開拓・商品開発に取り組む場合に補助。地域経済対応を支援。

地域: 全国 上限: 公募要領を確認 締切: 2026年9月30日
飲食店対象

商工会地区 小規模事業者持続化補助金 一般型 災害支援枠(令和6年能登半島地震等)(10次公募)

能登地震で被害を受けた石川県内の小規模飲食店が、事業再開・復旧に必要な設備導入や改装に活用できる補助金。

地域: 石川県 上限: 200万円 締切: 2026年10月16日
飲食店対象

小規模事業者持続化補助金<一般型 災害支援枠(令和6年能登半島地震等)>10次公募【商工会議所地区】

令和6年能登半島地震等で被害を受けた石川県能登3市3町の飲食店向け。事業再建経費を2/3補助(上限200万円)。個人・法人対象。

地域: 石川県 上限: 200万円 締切: 2026年10月16日

よくある質問

Q. 個人事業主の飲食店でも対象になりますか?

A. はい。むしろ小規模事業者(飲食店などの商業・サービス業では常時使用する従業員5人以下)が対象の制度なので、個人経営の飲食店は中心的な対象者です。

Q. 何に使えますか?

A. 販路開拓(新しいお客様を獲得する取り組み)が軸です。チラシ・看板・ホームページ・ネット予約システム・新メニュー開発に伴う設備などが典型例です。家賃や仕入れ、人件費のような経常経費には使えません。

Q. 申請には何が必要ですか?

A. 経営計画書・補助事業計画書の作成が中心で、地域の商工会議所・商工会の確認(様式の発行)を受けるのが特徴です。窓口の予約から様式発行まで日数がかかるため、締切の1ヶ月前には最初の相談を済ませるのが定石です。

Q. 採択率はどのくらいですか?

A. 公募回によって変動しますが、おおむね応募の半分前後で推移してきました。計画書の質で差がつく制度なので、「出せば通る」でも「ほぼ落ちる」でもありません。

Q. 不採択になったらどうすればいいですか?

A. 公募は年に複数回あるので、次回に再挑戦できます。不採択でも計画書は資産として残り、書き直して通った例は珍しくありません。あわせて自治体の独自補助(当サイトの地域ページに掲載)も検討しましょう。

Q. 過去に採択されたことがあっても、また使えますか?

A. 一定の条件下で複数回の活用が可能ですが、直近の採択からの間隔や回数による減点・制限が設けられることがあります。2回目以降の申請は、公募要領の該当条項を必ず確認しましょう。

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