飲食店版

補助金・助成金・融資の違い

2026年7月19日更新 / 飲食店主向けガイド

ナビコッコ
最初に覚えるのはひとつだけ——補助金は「後払い」。ここを知らずに動くと必ずつまずきます。表の資金の流れをじっくり見てください。

「補助金」「助成金」「融資」は似た場面で登場しますが、性質はまったく違います。飲食店の資金計画で混同すると危険なので、最初に整理しておきましょう。

3つの違いを1枚で

補助金助成金融資
返済不要不要必要(利息つき)
審査あり(採択制・落ちることがある)要件を満たせば原則支給信用審査あり
主な出し手経済産業省・自治体など厚生労働省(雇用関係)など日本政策金融公庫・銀行
入金タイミング事業実施後の後払いが原則取組実施後の後払いが原則契約後すぐ
使い道設備・改装・販路開拓など雇用・職場環境の改善など自由度が高い

一番大事な「後払いの原則」:お金の動きを時系列で見る

補助金・助成金は原則精算払い(後払い)です。言葉で聞くより、実際のお金の動きを見るのが早いでしょう。「補助率2/3・上限200万円」の補助金で、300万円の厨房設備を入れ替えるカフェの例です:

時期の例出来事あなたの手元資金の動き
4月申請±0円(書類作成の手間のみ)
6月採択の通知±0円(まだ1円も入らない)
7月交付決定 → 発注±0円(ここでやっと発注できる)
8月設備の納品・支払い−300万円(全額立替)
10月実績報告の提出−300万円のまま
翌1月確定検査 → 入金+200万円(ここで初めて入金)

ポイントは2つ。①申請から入金まで9ヶ月、②その間の5ヶ月は300万円を全額立て替えているということです。手元資金がゼロの状態を補助金で救うことはできません。資金が足りない場合は融資で調達し、補助金は「後から一部が戻る上乗せ」と位置づけるのが正解です(対策は立替資金とつなぎ融資で詳しく)。

もうひとつの鉄則:交付決定前の支出は対象外

上の表で「7月の交付決定→発注」の順番になっているのには理由があります。多くの補助金では、交付決定より前に発注・契約・支払いをした経費は補助対象外だからです。

ありがちな失敗はこうです。「6月に採択された! 工事業者の予定も空いてるし、すぐ内装工事を始めよう」——結果、7月の交付決定より前に契約した工事費は全額自己負担。採択の喜びで発注してしまう事故が、補助金の失敗で最も多いパターンです。なお、一部の制度には「事前着手の承認」という例外手続きがありますが、あくまで例外。公募要領で確認できない限り、交付決定を待つのが原則です。

補助金か助成金か、30秒で見分ける方法

  • 出し手を見る — 経済産業省・中小企業庁・自治体の商工系なら「採択制の補助金」が多く、厚生労働省・労働局なら「要件充足型の助成金」が多い
  • 「採択」の文字を探す — 募集ページに「採択結果の発表」とあれば競争ありの補助金
  • 締切の性質を見る — 「第◯回締切」と回数が刻まれていれば採択制、「随時受付」なら要件充足型のことが多い

融資との正しい組み合わせ方

3つは敵同士ではなく、組み合わせて使うものです。典型的な開業の例:

  • 開業資金1,000万円 = 自己資金300万円 + 創業融資700万円(←資金の本体)
  • 開業後、販路開拓の投資75万円に持続化補助金を申請 → 採択されれば50万円が後から戻る(←上乗せ)
  • 融資には自治体の利子補給・保証料補助を併用 → 借入コストを圧縮

税金の扱い:もらって終わりではない

受け取った補助金・助成金は原則として課税対象の収入(雑収入等)になります。「200万円もらった年は、その分利益が増えて税金も増える」ということです。設備投資に使った場合は圧縮記帳という、課税のタイミングを設備の減価償却に合わせて平準化する処理が使えます。金額が大きい場合は税理士か、無料なら商工会議所・よろず支援拠点に相談してください。

よくある誤解を一気に潰す

  • 「個人事業主は対象外でしょ?」 → 誤解。多くの制度は個人事業主も対象です。むしろ持続化補助金のように小規模事業者が主役の制度もあります
  • 「一度もらったらもう申請できない」 → 誤解。別の制度への申請は可能で、同じ制度でも回を改めて申請できるものが多数あります(同一経費への重複受給はNG)
  • 「売上が伸びている店は対象外」 → 誤解。成長投資を支援する制度は好調な店こそ歓迎されます
  • 「申請すれば大体もらえる」 → 採択制の補助金は落ちます。落ちても失うのは手間だけなので、再挑戦が基本です
  • 「経費なら何でも対象」 → 家賃・仕入れ・人件費など経常経費は対象外が原則。「新しい取り組みの費用」が対象です

制度はどこから出ているのか:3層構造で探す

「補助金を探す」と言っても、実は探す場所が3層に分かれています。この構造を知らないと、大手メディアに載る国の制度しか見つけられず、実は一番使いやすい足元の制度を見逃します。

特徴飲食店にとっての位置づけ
国の制度(経産省・厚労省など)金額が大きく通年・複数回公募。全国共通持続化・デジタル化・雇用系などの「定番」。競争率も高め
都道府県の制度地域の産業政策を反映。中規模の金額設備・販路・雇用の上乗せ。都は特に制度が厚い
市区町村の制度小粒(数万〜数百万円)だが競争率が低く、対象が緩い店舗改装・家賃・商店街系など「一番身近な穴場」

当サイトはこの3層をまとめて毎朝巡回しています。お住まいの地域ページを見れば、3層すべての募集中の制度が一度に確認できます。

どのくらい採択されるのか:確率の相場観

採択率は制度・公募回ごとに大きく変動しますが、肌感覚の目安を持っておくと計画が立てやすくなります。小規模事業者向けの販路開拓系はおおむね2件に1件前後が採択される回が多く、大型の設備投資系は3件に1件程度まで下がることもあります。要件充足型の助成金(雇用系)は、そもそも競争がなく書類が整っていれば支給されます。

つまり「補助金は宝くじ」ではありません。2回挑戦すればどこかで通る程度の確率で、しかも落ちても失うのは書類作成の手間だけ。この期待値の高さが、挑戦をおすすめする理由です。

ミニケースで理解する

ケース1:客足が伸びないカフェ(販路開拓型)

開業2年目、ランチ客は付いたが夜が弱い。→ 夜メニューの開発と看板・SNS広告・予約システム導入をまとめて計画にし、販路開拓系の補助金(持続化補助金型)に申請。投資75万円・補助50万円の計画で、「夜営業の月商を◯万円→◯万円へ」という数字を掲げる——典型的な勝ちパターンです。

ケース2:人手が足りない居酒屋(省力化型)

ホール2人体制が回らない。→ モバイルオーダー+配膳導線の見直しをデジタル化補助金や省力化系で。あわせて時給を上げるなら業務改善助成金で食洗機も。「人手不足」という同じ悩みでも、使う制度は複数ある——これが制度を知る価値です。

正直に言うと:補助金をおすすめしない状態もある

  • 日々の資金繰りが既に苦しい — 補助金は後払いのため、資金難の救済にはなりません。先に無料の経営相談や金融機関のリスケ相談を
  • 帳簿・申告が整っていない — 確定申告書は申請のほぼ必須書類。まず経理の立て直しが先です
  • 「もらえるから何かやる」の順番 — 投資計画が先、補助金は後。制度に合わせて不要な投資をするのは本末転倒です

併用のルール:どこまで重ねて使えるのか

「補助金と助成金、両方もらえるの?」——答えは「同じ経費に重ねるのはNG、別の経費なら併用OK」が大原則です。

  • NG例 — 同じ食洗機の購入費を、業務改善助成金と自治体の設備補助の両方に計上する(二重取りは不正受給です)
  • OK例 — 食洗機は業務改善助成金、看板とチラシは持続化補助金、正社員化はキャリアアップ助成金。経費と目的を分ければ、1つの店が年に3つの制度を使うことも普通にあります
  • 融資との併用 — 融資は「借りるお金」なので補助金との併用制限はそもそもありません。むしろ立替資金として組み合わせるのが定石です
  • 国と自治体の制度の関係は制度ごとに規定が違うため、併用可否は公募要領の「他の補助金との関係」の項を確認。書いていなければ事務局に電話で聞くのが確実です(普通に教えてくれます)

今日からの3ステップ

  1. 地域ページで、自分の地域と目的で使えそうな制度に当たりをつける(5分)
  2. 気になる制度の詳細ページで対象・締切・上限を確認し、公式の公募要領へ(15分)
  3. 迷ったら無料の相談窓口に持ち込む(商工会議所は補助金相談の定番です)

よくある質問

Q. 補助金は返済が必要ですか?

A. 補助金・助成金は原則返済不要です。融資は借入なので返済が必要です。ただし補助金は「後払い」のため、いったん自己資金で支払う必要があります。

Q. 補助金のお金はいつもらえますか?

A. 原則として、事業を実施して経費を支払った後の「精算払い(後払い)」です。申請から入金まで半年〜1年かかることも珍しくありません。

Q. 申請すれば必ずもらえますか?

A. 補助金は審査があり、採択されない場合があります。助成金(主に厚生労働省系)は要件を満たせば原則支給されます。

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