飲食店版

ものづくり補助金:飲食店で使えるケース

2026年9月3日更新 / 定番制度の飲食店向け解説

ナビコッコ
「上限が大きい方がお得」で選ぶ制度ではありません。計画書に3週間かけられないなら、持続化補助金か自治体の設備補助から。ここは「事業を変える投資」を決めた人の制度です。

ラーメン店の仕込みが限界に達した。スープを炊ける量が客数の上限を決めてしまっている。あるいは、看板商品の餃子を冷凍してECで売りたい。——「いまの店の延長」ではなく「事業の構造を変える投資」を考え始めたとき、候補に挙がるのがこの制度です。

「ものづくり補助金」という通称から製造業専用と誤解されがちですが、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。飲食店を含むサービス業の革新的な生産性向上も、はっきり対象です。

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飲食店で向いているケース・向かないケース

向いている向いていない
セントラルキッチン化(複数店舗の仕込み集約)古いオーブンを新しいオーブンに買い替えたい
急速冷凍機+包装ラインで冷凍食品のEC・卸に進出壊れた冷蔵庫の入れ替え(→冷蔵庫ページの別制度へ)
自動調理ロボット等での抜本的な省力化内装のリニューアル(→持続化補助金や自治体制度へ)
製麺・焙煎など製造小売への業態拡張とにかく何か設備を安く買いたい

分かれ目は「革新性」です。審査で問われるのは「その投資で、あなたの事業は何が変わるのか」。同業他社もやっていない取り組みか、生産プロセスが根本から変わるか。単なる設備の若返りは、どれだけ高額でも通りません。

お金の実感:1,000万円の投資はこう動く

急速冷凍機+真空包装ライン+HACCP対応の改修で総額1,000万円、補助率1/2を例にすると、補助500万円・自己負担500万円です。

ここで見落とされがちなのが資金繰りです。補助金は後払いなので、一度1,000万円全額を支払う必要があります。交付決定から入金まで1年近くかかることも珍しくありません。自己資金で足りなければ、公庫や制度融資つなぎ融資を先に組みます(立替資金ガイドに頼み方をまとめてあります)。「500万円もらえる」ではなく「1,000万円立て替えて、後から500万円戻る」。この語順で資金計画を立てましょう。

採択されたら終わり、ではない

この制度は採択後の義務が重いことでも知られます。

  • 付加価値額の成長目標 — 年率数%の向上を3〜5年の事業計画で掲げ、達成状況を毎年報告します(付加価値額≒営業利益+人件費+減価償却費)
  • 賃上げ目標 — 給与支給総額等の引き上げを約束します。大幅未達なら一部返還の仕組みもあります
  • 事業化状況報告 — 補助事業が終わった後も数年間、報告義務が続きます

脅しではありません。目標を掲げてその通り成長するなら、これらは負担ではなく通過点です。ただ「返さなくていいお金」という言葉の印象よりずっと、経営への約束事が多い制度だとは知っておきましょう。

申請の現実:計画書が全て

事業計画書の要求水準は、飲食店が出会う補助金の中で最高クラスです。市場分析、競合、数値計画、投資の技術的優位性。A4で10ページ級の計画書を仕上げるのに、専門家と組んでも3週間〜1ヶ月かかります。

支援を頼む場合の相場は着手金10〜20万円+成功報酬が補助額の10〜15%程度。500万円の補助なら成功報酬50〜75万円です。安くはありません。それでも採択率が体感で変わるため、大型案件では「自力より外注」が多数派です。頼む相手は認定経営革新等支援機関(税理士・診断士等)から。「採択保証」「実績100%」を謳う業者は避けましょう。補助金に保証はあり得ません。

飲食店の採択パターンを分解する

「サービス業も対象」と言われても、実際どんな計画が通るのか。飲食店の採択例に共通する型は、突き詰めると2つです。

型1:時間と場所の制約を外す。店内飲食は「席数×回転×営業時間」が売上の天井です。急速冷凍・真空包装・製造ラインへの投資は、この天井を外して「閉店後も、商圏の外でも売れる」構造を作る話になります。看板メニューの冷凍EC化、卸への展開、製造小売への転換——審査員に「生産性の向上」を説明しやすい王道です。

型2:職人技の標準化。仕込みが店主の腕に依存している限り、2号店は出せません。自動調理機器やセントラルキッチンで「味を落とさず属人性を外す」投資は、多店舗展開の必然として革新性を語れます。「タレの仕込みに毎朝3時間。この3時間が店主の限界=事業の限界」という現状分析から入ると、投資の意味が一本の線になります。

計画書に入れる5つの要素

  1. 現状の制約 — 何が売上・利益の天井になっているかを数字で(席数、仕込み時間、廃棄率)
  2. 投資の中身と技術的な優位性 — なぜその設備か。既存のやり方・競合と何が違うか
  3. 市場とターゲット — 新商品・新販路は誰に売るのか。市場規模の根拠
  4. 数値計画 — 3〜5年の売上・利益・付加価値額・賃上げ。実現の道筋つきで
  5. 実施体制とスケジュール — 誰が・いつまでに・どう回すか。1人経営なら外部の支援体制も

この5点が揃って、ようやくスタートラインです。逆に言えば、5点を自分の言葉で埋められない段階では、まだこの制度の出番ではありません。

スケジュール感も押さえておきます。公募は年に数回、締切から採択発表まで数ヶ月かかります。「来年夏に厨房を増設したい」なら、逆算して今年中に計画書へ着手する時間軸です。設備の納期(大型機器は数ヶ月待ちもある)も足すと、思っているより1年は早く動く必要があります。

申請前チェックリスト

  • 投資規模は数百万円以上か(それ未満なら持続化補助金の方が現実的)
  • 「この投資で事業がどう変わるか」を3分で語れるか
  • 3〜5年の数値計画(売上・利益・人件費)を数字で出せるか
  • 賃上げ目標を掲げる人件費の余力があるか
  • 全額立替の資金調達めどはあるか(融資の事前相談を先に)
  • gBizIDプライム取得済みか。公募スケジュールを確認したか
  • 採択後の年次報告(付加価値額・賃上げの実績)を続ける事務体制はあるか(1人経営なら税理士との分担を先に決める)

つなぎ融資は「採択前」に相談を始める

大型案件で意外と知られていない実務が、融資相談のタイミングです。採択されてから銀行に駆け込むのではなく、申請準備と並行して公庫や取引銀行に「採択されたらつなぎ融資をお願いしたい」と伝えておくのが正解です。事業計画書は融資審査の資料にもそのまま使えるので、二度手間になりません。採択通知は融資審査で強力な材料になり、「補助金の入金口座への振込指定」を条件に前向きに検討してくれる金融機関が多い——という流れを知っているだけで、資金繰りの不安はかなり軽くなります。

本気の一手を打つ人には、これ以上ない相棒になります。迷っている段階なら、まず下の公募状況と基礎ガイドで全体像から。

現在の公募状況

現在、この制度に関連する公募が6件募集中です(2026年9月3日時点・毎朝自動更新):

飲食店対象

【経済産業省】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(19次締切)

飲食店の生産性向上を支援。設備投資やIT導入で最大4,000万円、補助率1/2~2/3。小規模事業者も対象。

地域: 全国 上限: 4,000万円 締切: 2026年9月28日
対象か要確認

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

中小企業の新事業進出・海外展開・高付加価値事業進出を支援。飲食店も対象の可能性があるが、条件詳細が不明瞭。

地域: 全国 上限: 9,000万円 締切: 2026年10月30日
飲食店対象

【経済産業省】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(20次締切)

飲食店を含むサービス業の設備投資・IT導入・新事業展開を支援。最大3,500万円、補助率1/2~2/3。小規模事業者対象。

地域: 全国 上限: 3,500万円 締切: 2026年12月28日
飲食店対象

【経済産業省】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(21次締切)

飲食店を含むサービス業が対象。設備・IT導入で生産性向上を支援。補助率1/2~2/3、上限4,000万円。

地域: 全国 上限: 4,000万円 締切: 2027年3月23日
飲食店対象

【経済産業省】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(22次締切)

飲食店を含む中小企業が、働き方改革やインボイス対応等のため設備投資・IT導入を行う場合、補助率1/2~2/3で支援します。

地域: 全国 上限: 公募要領を確認 締切: 2027年6月30日
飲食店対象

【経済産業省】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(23次締切)

飲食店を含むサービス業が対象。設備投資やIT導入で生産性向上を図る場合、補助率1/2~2/3で支援を受けられる制度。

地域: 全国 上限: 公募要領を確認 締切: 2028年3月31日

よくある質問

Q. 飲食店でも対象になりますか?

A. はい。正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」で、サービス業の革新的な取り組みも対象です。セントラルキッチン化や冷凍自販機・EC進出などで飲食店の採択例があります。

Q. 持続化補助金とどちらを選ぶべきですか?

A. 投資規模で選びます。数十万〜百数十万円の販路開拓なら持続化補助金、数百万円以上の設備投資で生産性や事業構造を大きく変える計画ならものづくり補助金が候補です。

Q. 採択率はどのくらいですか?

A. 公募回により変動しますが、おおむね応募の3〜5割程度で推移してきました。計画書の要求水準が高く、無準備で通る制度ではありません。

Q. 賃上げの要件があると聞きました

A. はい。給与支給総額や事業場内最低賃金の引き上げ目標を掲げることが申請要件になっており、大幅な未達の場合は補助金の一部返還を求められる仕組みも設けられています。人件費計画とセットで考える必要があります。

Q. 申請は自分でできますか?

A. 可能ですが、事業計画書の分量・要求水準が高いため、認定経営革新等支援機関や中小企業診断士の支援を受ける申請者が多いのが実態です。支援報酬の相場は着手金10〜20万円+成功報酬が補助額の10〜15%程度です。

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