飲食店版

デジタル化・AI導入補助金:飲食店での使い方

2026年10月19日更新 / 定番制度の飲食店向け解説

ナビコッコ
補助金で入れたツールをすぐ解約すると、返還の話になりかねません。判断基準は「補助金がなくても、3年使うつもりがあるか」。これで迷いが消えるなら入れる、消えないなら見送る。それだけです。

電話予約が鳴るたびに調理が止まる。金曜のピークは注文取りに人が張り付き、レジ締めは毎晩30分。この「人力で回している部分」をITに置き換えるときの定番制度です。2026年度から旧IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」に名前が変わり、公募要領で補助対象のソフトウェアにAIを含むと明記されました。

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飲食店で定番のツールと費用相場

ツール費用の相場観何が変わるか
POSレジ・セルフレジ初期0〜30万円+月0〜1.5万円レジ締め30分→数分。売上データが経営判断の土台になる
モバイルオーダー月1〜3万円注文取りの人員を1人分削減。詳細ページあり
券売機・セルフオーダー端末本体100〜200万円会計の完全無人化。券売機ページ参照
予約・顧客管理月1〜3万円電話対応の削減、無断キャンセル対策(事前決済)
会計・給与ソフト年2〜4万円確定申告・インボイス対応。深夜の手入力からの解放

2026年度の枠と補助額

2026年度は「デジタル化・AI導入補助金2026(中小企業デジタル化・AI導入支援事業)」として公募されています。飲食店がPOSレジ・モバイルオーダー・予約管理を入れるときに関係する主な枠は、次の3つです。

枠補助額補助率主な対象
通常枠業務プロセス1つ以上で5万円以上150万円未満、4つ以上で150万円以上450万円以下1/2以内(地域別最低賃金未満で雇っていた従業員が全体の30%以上などの条件を満たすと2/3以内)ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入設定・研修・保守などの役務。ハードウェアは対象外
インボイス枠(インボイス対応類型)ソフトウェアは50万円以下、50万円超〜350万円以下。PC・タブレット等は10万円以下、レジ・券売機等は20万円以下ソフトウェアは50万円以下の部分が3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超の部分が2/3以内。ハードウェアは1/2以内会計・受発注・決済の機能を持つソフトウェアと、その利用に使うPC・POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機など(ハードウェアだけの申請は不可)
セキュリティ対策推進枠5万円〜150万円1/2以内(小規模事業者は2/3以内)IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に載っているサービスの利用料

このほかに、インボイス枠(電子取引類型)と複数者連携デジタル化・AI導入枠があります。通常枠で150万円以上を申請する場合は、賃上げ目標が申請の要件になります。本体100万円級の券売機を入れる場合でも、この補助金で出るのはインボイス枠のハードウェア分の20万円までです。公表済みの交付申請の締切は、どの枠も2026年10月30日(金)17時です。交付決定は12月10日の予定で、導入と事業実績報告は2027年5月31日17時までに終える日程です。次の回は事務局の事業スケジュールで随時公表されるので、申請前に最新の公募要領で確認しましょう。

お金の実感:人件費で考えると景色が変わる

モバイルオーダーを月2万円で入れるとします。年間24万円。「高い」と感じるかもしれません。

では人件費と比べます。ホール1人を時給1,100円で1日4時間×25日入れると月11万円、年132万円。モバイルオーダーで注文取りが不要になり、この枠を半分にできれば年66万円の削減です。ツール代24万円を引いても40万円以上残ります。ここに補助金が出て初期費用が下がるなら、検討しない理由の方が少ない。これが実際の計算です。

この制度ならではの仕組み:ベンダー経由

他の補助金と大きく違うのは、「登録済みITツール」を「登録済みIT導入支援事業者経由」で導入する点です。進め方は3ステップ。

  1. 導入したいツールを決める(例:スマレジ、Squareなど具体的な製品名まで)
  2. 販売元に「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を使いたい」と伝え、登録製品か確認する
  3. ベンダーと共同で申請する。書類作成の多くはベンダーがサポートしてくれます

同じツールでも、どのIT導入支援事業者から入れるかでサポートの質が変わります。選ぶときは、シンプルに「飲食店への導入実績は何件ありますか」と聞きましょう。業種特有の設定(メニュー構成・ハンディ運用・複数税率)を分かっている事業者かどうかで、導入後の手離れがまったく違います。

「補助金の申請書類」と聞いて身構えた人ほど、この制度は気が楽です。計画書を一人で書き上げる持続化補助金と違い、伴走者が最初からいる仕組みだからです。

ただし、ベンダー主導には裏がある

申請が楽な代わりに、営業もベンダー主導になります。「補助金が出るので上位プランにしましょう」。この提案を受けたときが判断の分かれ目です。補助金があっても自己負担は残ります。月額の上位プランとの差額は、補助が切れた後もずっと払い続けることになります。

判断基準はひとつ、「補助金がなくても導入したいツールか?」です。答えがイエスの機能だけ契約し、「せっかくだから」の機能は断りましょう。月額×24ヶ月の総額で見積もりを比較するのがコツです。

「無料プランで十分では?」という疑問も正直に扱います。POSも会計ソフトも無料枠から始められる製品があり、席数の少ない店なら無料版で回る場合もあります。補助金は有料プランの導入が前提の制度なので、無料版で試して、機能の限界を感じてから補助金で有料版へ。この順番は遠回りに見えて、一番失敗が少ない道です。

申請から導入までの時間軸

時期やること
今日gBizIDプライム申請(書類で申請すると審査に最大1か月かかることがある。これが無いと申請できない)
1〜2週間ツール選定、ベンダーに登録確認、見積もり
公募期間中ベンダーと共同申請
1〜2ヶ月後交付決定 → 契約・導入(決定前の契約はNG)
導入後実績報告。さらに数年間、生産性などの効果報告義務が続く

AI導入も対象になった:飲食店での現実的な使い道

制度名に「AI」が入ったことで、「うちには関係ない」と感じる店主も多いはずです。実際は逆で、飲食店こそAIの恩恵が分かりやすい業種です。

  • 需要予測・発注。過去の売上と天気から仕込み量を予測するPOS連携機能。廃棄率が数%下がるだけで、食材費の年数十万円が変わります
  • 多言語対応。メニューの自動翻訳や多言語モバイルオーダーです。インバウンド客の客単価低下(指差し注文問題)への対策になります
  • バックオフィス。請求書の自動読み取り、シフト希望の自動調整です。深夜にしていた事務作業を営業時間内に移します

押さえておきたいのは、「AIだから申請が通りやすい」わけではないことです。あくまで登録ツールの中から、自分の店の課題に合うものを選ぶだけです。流行語に引っ張られず、「どの業務の何分を減らすのか」から逆算しましょう。

よくあるつまずき3つ

  • 交付決定前に契約してしまう。「ベンダーが『先に進めましょう』と言ったから」は通用しません。補助対象になるのは交付決定後の契約・支払いだけ。ベンダーの営業スケジュールと制度のスケジュールは別物です
  • 類型・枠の選び間違い。2026年度は通常枠のほかに、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠があります。会計・受発注・決済の機能を持つツールならインボイス枠で補助率が3/4以内(小規模事業者は4/5以内)になるなど、どの枠で出すかは補助率に直結するので、ベンダー任せにせず自分でも公募要領の枠一覧を見ましょう
  • 月額課金の「3年目以降」を忘れる。通常枠でクラウド利用料が補助されるのは最大2年分です。月2万円のツールなら、3年目からは年24万円を全額自己負担で払い続けます。導入判断は補助が終わった後の定価で行いましょう

券売機かモバイルオーダーか迷ったら

省力化でよく比べられる二択です。判断軸は客層と単価。回転重視のラーメン・定食(客単価1,000円前後)なら、入口で会計が終わる券売機が向いています。滞在型の居酒屋・カフェ(追加注文が売上を作る業態)なら、席から頼めるモバイルオーダーのほうが追加注文を取りこぼしにくくなります。初期費用は券売機100万円級・モバイルオーダーは月額制と、資金の負担も大きく違うので、補助金の枠との相性も含めて選んでください。

導入して終わり、にしない3つのコツ

補助金で入れたツールが、3ヶ月後には「誰も使っていない」。これが一番もったいない失敗です。定着のコツとしてよく挙げられるのは、次の3つです。

  1. ピーク帯でいきなり使わない。モバイルオーダーもPOSも、まず平日昼の暇な時間帯に全スタッフに触ってもらいましょう。金曜夜デビューは事故のもとです
  2. 紙の逃げ道を1ヶ月で塞ぐ。「慣れた手書き伝票」が残っている限り、新ツールは使われません。併用期間には期限を切りましょう
  3. 数字を1つだけ決めて見る。レジ締め時間、注文から提供までの分数など、何でも構いません。導入前に測っておけば、効果が数字で見えて、スタッフの納得感が変わります

申請前チェックリスト

  • gBizIDプライムを取得済みか(申請の流れ参照)
  • 入れたい製品は決まっているか。その製品は制度に登録されているか
  • 月額×24ヶ月の総額で複数製品を比較したか
  • 「補助金がなくても入れたいか」に即答できるか
  • 導入後の効果報告義務(数年続く)を把握しているか
  • 補助率・上限・対象類型の最新情報を公募要領で確認したか(回ごとに変わります)
  • スタッフに新ツールを教える時間を確保したか(導入日を暇な曜日に設定するだけで定着率が変わります)

最後に、順番を整理しておきます。今日やるのはgBizIDの申請(無料・15分)。今週やるのは「どの業務の何分を減らしたいか」を紙に書くことです。ツール選びも見積もりも、その後で十分間に合います。省力化は「人が採れない時代」の飲食店で優先度の高い投資です。どの業務から自動化すべきかは人手不足ガイドに投資の順序をまとめてあります。

参考・出典

現在の公募状況

現在、この制度に関連する公募が3件募集中です(2026年10月19日時点・毎朝自動更新):

飲食店対象締切まで11日

デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」※6次締切分

中小企業・小規模事業者向けのIT導入補助金。自社課題に合ったITツール導入経費を支援し、労働生産性向上を実現できる。

地域: 全国 上限: 450万円 締切: 2026年10月30日
対象か要確認締切まで11日

デジタル化・AI導入補助金2026「セキュリティ対策推進枠」※6次締切分

中小企業向けサイバーセキュリティ対策ツール導入補助。登録サービスの利用料(最大2年分)を補助対象。飲食店も対象業種に含まれる可能性があるが、対象サービス限定と小規模事業者枠の明記不足で不確定。

地域: 全国 上限: 150万円 締切: 2026年10月30日
対象か要確認締切まで11日

デジタル化・AI導入補助金2026「複数者連携デジタル化・AI導入枠」※3次締切分

複数の飲食店が連携してITツール導入を行う場合、対象になる可能性がある。ただし単独店舗での申請可否が不明。詳細は公募要領で確認が必要。

地域: 全国 上限: 3億円 締切: 2026年10月30日

デジタル化に使える制度は、どの地域に多いか

2026年10月19日時点で該当する11件を地域別に数えました。うち全国対象が3件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

都道府県該当する制度その地域の一覧
東京都3件東京都の飲食店向け制度
福岡県2件福岡県の飲食店向け制度
高知県1件高知県の飲食店向け制度
秋田県1件秋田県の飲食店向け制度
徳島県1件徳島県の飲食店向け制度

上限額が公表されている10件で見ると、中央値は150万円、最大は3億円です。下から4分の1は25万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切は【4次募集のお知らせ】中小企業デジタル化導入支援事業費補助金の2026年10月23日(あと4日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

よくある質問

Q. どんなツールが対象ですか?

A. POSレジ、モバイルオーダー、予約管理、勤怠管理、会計ソフト、キャッシュレス決済のソフトなどが典型例です。2026年度の公募要領では、補助対象のソフトウェアに「AIを含む」と明記されています。

Q. 好きな製品を自由に選べますか?

A. いいえ。この制度は「事前に登録されたITツール」を「登録されたIT導入支援事業者(ベンダー)経由」で導入する仕組みです。導入したい製品が登録されているかを先に確認します。

Q. 申請は自分でやるのですか?

A. IT導入支援事業者(ベンダー)と共同で申請する仕組みのため、多くの場合ベンダーが申請を主導・サポートしてくれます。飲食店側の負担は比較的軽い制度です。

Q. タブレットやパソコン本体も買えますか?

A. ハードウェア単体では対象になりません。2026年度は、インボイス枠(インボイス対応類型)で会計・受発注・決済の機能を持つソフトウェアと一緒に入れる場合に限り、PC・タブレット等(補助率1/2以内・10万円以下)とPOSレジ・券売機等(1/2以内・20万円以下)が対象になります。通常枠ではハードウェアは補助の対象になりません。「iPadだけ補助金で買う」はできない、と覚えておくのが安全です。

Q. 個人事業主でも使えますか?

A. はい、対象です。ただしgBizIDプライムの取得や納税証明の準備など、事前書類は法人と同様に必要です。

Q. 複数店舗でまとめて導入できますか?

A. できます。多店舗の一括導入はツール単価の交渉材料にもなります。ただし申請は事業者単位なので、店舗ごとの導入計画と効果を整理してからベンダーに相談すると話が早く進みます。

他の定番制度

公開 2026年7月19日 / 最終更新 2026年10月4日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源

更新履歴(1件)
  • 2026年度の枠と補助額(通常枠5万〜450万円)と交付申請締切(10月30日)を追記、ハードウェアはインボイス枠のみ対象、クラウド利用料の補助は最大2年分と修正
  • 公開