飲食店版

厨房機器の購入に使える補助金:機器別の相場と制度の選び方

2026年10月4日更新 / 設備投資と補助金の飲食店向けガイド

ナビコッコ
厨房機器の補助金は「どの機器か」より「どんな理屈で買うか」で決まります。同じスチコンでも、人手不足対策なら省力化系、新メニュー開発なら販路系。買い物リストの前に、ストーリーを1行で言えるようにしましょう。

厨房機器は飲食店の設備投資の中心です。そして補助金では、同じ機器でも「何のために買うか」で使える制度が変わるという独特のルールがあります。このページでは機器別の相場観と、制度側に通じる「3つの理屈」を整理します。

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まず相場観:主要な厨房機器の価格帯

スチームコンベクションオーブン80万〜300万円。調理の自動化・多品目同時調理の主役。省力化投資の花形
業務用食洗機60万〜150万円(アンダーカウンター〜ドアタイプ)。洗い場の人時削減の定番
フライヤー15万〜60万円。省エネ型・オイルろ過機能付きは油代の削減効果も
製氷機25万〜80万円。夏場の営業を左右する。更新サイクル7〜10年
急速冷凍機100万〜400万円。仕込みの平準化・テイクアウトEC展開の武器。単価が高い分、大型制度向き
ガスレンジ・コンロ20万〜80万円。省エネ型(涼厨等)は厨房の暑さ対策も兼ねる

制度側に通じる「3つの理屈」

① 省力化・賃上げ「この機器で人時を減らし、浮いた原資で賃上げする」。食洗機・スチコン・券売機が典型。従業員のいる店の本命ルート(業務改善助成金など賃上げセット型)
② 省エネ「古い機器を高効率機器に更新して光熱費を減らす」。冷蔵庫・フライヤー・給湯器・涼厨コンロなど。自治体の省エネ・物価高対策補助が主戦場
③ 販路開拓・新事業「この機器で新しい商品・売り方を作る」。急速冷凍機でEC進出、スチコンで新メニュー、真空包装機でテイクアウト強化。持続化補助金、規模が大きければ新事業進出・ものづくり補助金(2026年からものづくり補助金と新事業進出補助金を一体で運用。既存事業のプロセス改善だけ・設備を入れるだけの計画は対象外で、付加価値額 年平均4.0%以上・1人当たり給与支給総額 年平均3.5%以上・事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上という要件がある)

逆に、通らないのは「古くなったから同じものに買い替える」だけの単純更新(省エネ効果も新事業性もないケース)です。この場合は無理に補助金を狙わず、リースや制度融資で資金調達する方が早くて確実です。

開業前と営業中で、使える制度は別物

厨房機器の補助金でつまずく典型が「開業時に一式そろえるのに使いたい」というケースです。残念ながら、多くの補助金は事業実績のある事業者向けで、開業前の一式購入には使えません。時期別に整理すると、次のとおりです。

  • 開業前。自治体の創業支援補助(空き店舗活用・創業促進)が中心。金額は控えめだが厨房設備が対象になる例が多い。開業ガイド参照
  • 開業〜1年目。持続化補助金の<創業型>を狙う。第4回は上限200万円(インボイス特例で+50万円)・補助率2/3。市区町村の特定創業支援等事業による支援を受けた日と開業日が、どちらも2025年12月15日〜2026年12月15日に入っていることが条件で、一般型との同時申請はできない
  • 2〜3年目。持続化補助金の一般型が中心。第20回の通常枠は上限50万円・補助率2/3で、インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円の上乗せがある。実績が浅くても計画で勝負できる
  • 営業3年目以降。決算実績があるので選択肢が最も多くなる。賃上げ型・省エネ型・省力化型をフル活用できる時期

計算例①:スチコンで仕込みを自動化する

  • 導入費用:中型スチコン、工事込み180万円
  • 仮に省力化系で補助率1/2なら:補助90万円、自己負担90万円
  • 効果:焼き・蒸し・煮込みの「見張り時間」がゼロになり、調理人時が1日2時間減=時給1,400円換算で年約87万円。夜間の低温調理で仕込みを回せば、昼の人時もさらに減る
  • 副次効果:加熱の再現性が上がり、廃棄ロス・味のブレが減る。多店舗化を考えるなら「レシピの標準化」にも役立つ

計算例②:食洗機で洗い場の人時を削減する

  • 導入費用:ドアタイプ食洗機、工事込み100万円
  • 仮に賃上げセット型で補助率3/4なら:補助75万円、自己負担25万円+賃上げ分の人件費増
  • 効果:手洗い2時間/日→食洗機30分/日で1.5時間/日の削減。時給1,200円×月26営業日=月約4.7万円、年約56万円の人件費相当
  • 回収:自己負担25万円は半年足らずで回収。賃上げの人件費増(時給60円×2人×月160時間=年約23万円)を差し引いても計算が立つ

食洗機が「補助金の定番」と言われるのは、この計算がほぼどの店でも成立するからです。

リースと購入、補助金の関係を整理する

厨房機器の調達には購入・リース・中古の3ルートがあり、補助金との相性が全く違います。100万円のスチコンを例に整理します。

新品購入+補助金仮に補助1/2で実質50万円+立替資金100万円が一時必要。所有権あり、減価償却で経費化。補助金が使えるならほぼ最強
リース(7年)月約1.5万円×84回=総額約126万円。初期資金ゼロで導入でき全額経費だが、総支払いは割高で中途解約不可。補助金は制度ごとの条件付き(下で整理)
中古購入新品の3〜5割の価格。補助金は対象外か厳しい条件付きだが、そもそも安い。保証が短い・省エネ性能が古い点は割り切り

リースだから補助金が一切使えない、というわけではありません。対象になる範囲が制度ごとに違います。

  • 持続化補助金。機器のリース料は「借料」として対象。ただし補助事業期間中に払う分だけで、契約期間がはみ出す分は按分して外れる。7年リースなら大半は自己負担のままです
  • 新事業進出・ものづくり補助金。ファイナンス・リースなら、リース会社と共同で申請することで機械装置の購入費を対象にできる。補助金の分だけリース料が減額される仕組みです(第1回の公募要領)。旧ものづくり補助金は第23次(2026年5月8日締切)が最終回でした
  • 省力化投資補助金(カタログ注文型)。ファイナンス・リースに限り、リース会社と共同で申請できる。補助金はリース会社に払われ、その分リース料が減額される仕組み
  • 業務改善助成金。助成を受ける年度に支払うリース料が対象。複数年分をその年度に前払いした場合は3年分まで

判断の軸は単純で、公募のタイミングが合い、立替資金があるなら「新品+補助金」。資金に余裕がなく今すぐ必要なら「リースか中古」。補助金の公募を待つために営業に支障を出すのは本末転倒です。

見積もりの取り方で申請のしやすさが変わる

  • 本体・設置工事・処分費を分けた見積もりをもらう。制度によって対象経費の線引きが違うため、分かれていると申請書がそのまま書ける
  • 相見積もり2〜3社。価格の妥当性の証明として要求されることが多い。厨房機器は同型番でも業者によって価格に差が出る
  • 「補助金を使う予定」と最初に伝える。対応慣れした業者は要件に合う型番選定・書類の書き方まで助けてくれる。ここで嫌がる業者は避けるのが無難

共通の注意点

  • 交付決定前の発注は全部アウト。見積もりまではOK、契約・発注は決定後(申請の流れ)
  • 中古・リースは条件付き。中古は持続化補助金なら単価50万円未満で、2者以上の中古品販売事業者から見積もりを取ることが条件。リースは「補助事業期間中の分だけ」「リース会社との共同申請」など制度ごとに条件が違う。迷ったら新品購入が手堅い
  • 補助金は後払い。全額立替の資金計画を先に(立替とつなぎ融資)
  • 処分費・工事費の扱いは制度ごとに異なる。見積もりは本体・工事・処分を分けて取ると申請時に楽

忘れがちな2つの後始末:税金と管理義務

  • 補助金には税金がかかる。受け取った補助金は雑収入として課税対象。設備補助なら「圧縮記帳」で課税タイミングをならせます。仕訳例つきの解説は補助金と税金のガイドへ
  • 買った後の処分制限。補助金で取得した設備は一定期間、無断で売却・廃棄・転用できません。閉店・移転を考えているなら、その設備に補助金を使うかは慎重に

また、厨房の暑さ対策を兼ねるなら省エネ型コンロ(涼厨タイプ)や高効率給湯器も省エネ系補助金の対象になりうる隠れた定番です。夏の厨房温度が2〜3度変わると、スタッフの定着にもつながります。設備投資は人手不足対策でもあるという視点で、優先順位をつけましょう。

見積もり前の現地確認5点(あるある事故の回避)

  1. 搬入経路。入口・通路・階段の幅と曲がり角。「買ったのに入らない」は実際に起きます。2階・地下店舗は吊り上げ搬入(数万円〜)の要否も
  2. 電源。単相100V/単相200V/三相200V(動力)のどれが来ているか。動力が無い物件への引き込みは数十万円の工事です
  3. ガスの種類と容量。都市ガスかプロパンか。高火力機器はガスメーターの容量アップが必要な場合あり
  4. 給排水の位置。食洗機・製氷機は給水と排水の両方が必要。床排水の有無で工事費が変わる
  5. 設置後の作業動線。扉の開く向き・熱源同士の距離。図面に機器を書き込んでから発注するのが鉄則です

壊れる前に替える優先順位

予算が限られるとき、どの機器から更新すべきか。判断軸は「壊れた日の営業への打撃×故障の前触れの有無」です。①冷蔵庫・冷凍庫(在庫全損・夏場は即日営業不能。前触れが分かりにくい)→②製氷機(夏に壊れる法則・ドリンク営業が止まる)→③食洗機・加熱機器(人力で当日は代替可能)の順が基本です。10年超の冷機を「まだ動くから」と使い続けるのが、飲食店の設備事故で一番高くつくパターンです。冷蔵庫が真夏に止まれば在庫の全損だけで数十万円、休業まで含めれば本体価格を超える損害になります。更新計画を立てれば補助金の交付決定を待つ余裕もでき、「壊れてから最速で買う」より、総額は多くの場合安く済みます。

機器別の詳しい解説

単価が大きく検討者が多い機器は、個別ページで詳しく解説しています。券売機 / 業務用エアコン / 業務用冷蔵庫 / POSレジ

参考・出典

いま募集中の関連制度

データベースの募集中制度から、厨房機器に関連しうる制度が1件見つかりました(2026年10月19日時点・毎朝自動更新。対象経費に含まれるかは必ず公募要領で確認しましょう):

飲食店対象

クリーンな飲食店づくり応援補助金(店内衛生環境整備補助金)

東京都港区内の飲食店が、店内衛生環境整備のための改装費等を補助対象とできる制度。清潔な店舗づくりによる集客・売上確保を支援。

地域: 東京都 上限: 50万円 締切: 2027年1月18日

開業に使える制度は、どの地域に多いか

2026年10月19日時点で該当する71件を地域別に数えました。うち全国対象が7件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている45件で見ると、中央値は100万円、最大は5億円です。下から4分の1は30万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切は【募集期間延長】「さかいでからはじめる創業支援補助金」の募集…の2026年10月30日(あと11日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

あわせて確認したい定番制度

よくある質問

Q. 中古の厨房機器でも補助金は使えますか?

A. 大半の制度で中古品は対象外、または「複数の中古品販売事業者からの見積もり」など厳しい条件付きです。開業時の資金節約として中古を選ぶこと自体は合理的ですが、その場合は補助金の対象にはならないと割り切るのが現実的です。

Q. 開業時の厨房機器一式にも補助金は使えますか?

A. 開業前は使える制度が限られます(多くの補助金は事業実績のある事業者向け)。自治体の創業支援補助が最有力で、開業から1年以内なら、持続化補助金の<創業型>(市区町村の特定創業支援等事業による支援を受けていることが条件)を狙うのが定石です。時期別の考え方は開業ガイドを参照しましょう。

Q. 食洗機は本当に補助金の定番なのですか?

A. はい。洗い場は飲食店で最も人手がかかる工程の一つで、「食洗機導入で洗い場の人時を削減し、その分を賃上げ原資にする」というストーリーが賃上げセット型の制度と噛み合うため、採択事例が多い定番です。

他の設備の補助金

公開 2026年7月20日 / 最終更新 2026年10月4日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源

更新履歴(1件)
  • 持続化補助金の「創業枠」を創業型(上限200万円・開業1年以内)と一般型の特例に修正、「中古・リースは原則対象外」を制度ごとの条件付き対象に修正、参考・出典を追加
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