厨房機器の購入に使える補助金:機器別の相場と制度の選び方
厨房機器は飲食店の設備投資の本丸です。そして補助金の世界では、同じ機器でも「何のために買うか」で使える制度が変わるという独特のルールがあります。このページでは機器別の相場観と、制度側に通じる「3つの理屈」を整理します。
まず相場観:主要な厨房機器の価格帯
| スチームコンベクションオーブン | 80万〜300万円。調理の自動化・多品目同時調理の主役。省力化投資の花形 |
|---|---|
| 業務用食洗機 | 60万〜150万円(アンダーカウンター〜ドアタイプ)。洗い場の人時削減の定番 |
| フライヤー | 15万〜60万円。省エネ型・オイルろ過機能付きは油代の削減効果も |
| 製氷機 | 25万〜80万円。夏場の営業を左右する。更新サイクル7〜10年 |
| 急速冷凍機 | 100万〜400万円。仕込みの平準化・テイクアウトEC展開の武器。単価が高い分、大型制度向き |
| ガスレンジ・コンロ | 20万〜80万円。省エネ型(涼厨等)は厨房の暑さ対策も兼ねる |
制度側に通じる「3つの理屈」
| ① 省力化・賃上げ | 「この機器で人時を減らし、浮いた原資で賃上げする」。食洗機・スチコン・券売機が典型。従業員のいる店の本命ルート(業務改善助成金など賃上げセット型) |
|---|---|
| ② 省エネ | 「古い機器を高効率機器に更新して光熱費を減らす」。冷蔵庫・フライヤー・給湯器・涼厨コンロなど。自治体の省エネ・物価高対策補助が主戦場 |
| ③ 販路開拓・新事業 | 「この機器で新しい商品・売り方を作る」。急速冷凍機でEC進出、スチコンで新メニュー、真空包装機でテイクアウト強化。持続化補助金、規模が大きければものづくり補助金 |
逆に通らないのが「古くなったから同じものに買い替える」だけの単純更新(省エネ効果も新事業性もないケース)。この場合は無理に補助金を狙わず、リースや制度融資で資金調達する方が早くて確実です。
開業前と営業中で、使える制度は別物
厨房機器の補助金でつまずく典型が「開業時に一式そろえるのに使いたい」というケースです。残念ながら、多くの補助金は事業実績のある事業者向けで、開業前の一式購入には使えません。時期別に整理すると:
- 開業前 — 自治体の創業支援補助(空き店舗活用・創業促進)が主戦場。金額は控えめだが厨房設備が対象になる例が多い。開業ガイド参照
- 開業〜3年目 — 持続化補助金の創業枠など、創業者を優遇する枠を狙う。実績が浅くても計画で勝負できる
- 営業3年目以降 — 決算実績があるので選択肢が最大に。賃上げ型・省エネ型・省力化型をフル活用できる時期
計算例①:スチコンで仕込みを自動化する
- 導入費用:中型スチコン、工事込み180万円
- 仮に省力化系で補助率1/2なら:補助90万円、自己負担90万円
- 効果:焼き・蒸し・煮込みの「見張り時間」がゼロになり、調理人時が1日2時間減=時給1,400円換算で年約87万円。夜間の低温調理で仕込みを回せば、昼の人時をさらに圧縮
- 副次効果:加熱の再現性が上がり、廃棄ロス・味のブレが減る。多店舗化を考えるなら「レシピの標準化」の土台にもなる
計算例②:食洗機で洗い場の人時を削減する
- 導入費用:ドアタイプ食洗機、工事込み100万円
- 仮に賃上げセット型で補助率3/4なら:補助75万円、自己負担25万円+賃上げ分の人件費増
- 効果:手洗い2時間/日→食洗機30分/日で1.5時間/日の削減。時給1,200円×月26営業日=月約4.7万円、年約56万円の人件費相当
- 回収:自己負担25万円は半年足らずで回収。賃上げの人件費増(時給60円×2人×月160時間=年約23万円)を差し引いても計算が立つ
食洗機が「補助金の定番」と言われるのは、この計算がほぼどの店でも成立するからです。
リースと購入、補助金の関係を整理する
厨房機器の調達には購入・リース・中古の3ルートがあり、補助金との相性が全く違います。100万円のスチコンを例に整理します。
| 新品購入+補助金 | 仮に補助1/2で実質50万円+立替資金100万円が一時必要。所有権あり、減価償却で経費化。補助金が使えるならほぼ最強 |
|---|---|
| リース(7年) | 月約1.5万円×84回=総額約126万円。初期資金ゼロで導入でき全額経費だが、総支払いは割高で中途解約不可。補助金は原則使えない |
| 中古購入 | 新品の3〜5割の価格。補助金は原則使えないが、そもそも安い。保証が短い・省エネ性能が古い点は割り切り |
判断の軸はシンプルで、公募のタイミングが合い、立替資金があるなら「新品+補助金」。資金がタイトで今すぐ必要なら「リースか中古」。補助金の公募を待つために営業に支障を出すのは本末転倒です。
見積もりの取り方で申請のしやすさが変わる
- 本体・設置工事・処分費を分けた見積もりをもらう — 制度によって対象経費の線引きが違うため、分かれていると申請書がそのまま書ける
- 相見積もり2〜3社 — 価格の妥当性の証明として要求されることが多い。厨房機器は同型番でも2割の差が普通に出る
- 「補助金を使う予定」と最初に伝える — 対応慣れした業者は要件に合う型番選定・書類の書き方まで助けてくれる。ここで嫌がる業者は避けるのが無難
共通の注意点
- 交付決定前の発注は全部アウト。見積もりまではOK、契約・発注は決定後(申請の流れ)
- 中古・リースは原則対象外の制度が多数派。所有権を取得する新品購入が基本
- 補助金は後払い。全額立替の資金計画を先に(立替とつなぎ融資)
- 処分費・工事費の扱いは制度ごとに異なる。見積もりは本体・工事・処分を分けて取ると申請時に楽
忘れがちな2つの後始末:税金と管理義務
- 補助金には税金がかかる — 受け取った補助金は雑収入として課税対象。設備補助なら「圧縮記帳」で課税タイミングをならせます。仕訳例つきの解説は補助金と税金のガイドへ
- 買った後の処分制限 — 補助金で取得した設備は一定期間、無断で売却・廃棄・転用できません。閉店・移転の予定が視野にあるなら、その設備に補助金を使うかは慎重に
また、厨房の暑さ対策を兼ねるなら省エネ型コンロ(涼厨タイプ)や高効率給湯器も省エネ系補助金の対象になりうる隠れた定番です。夏の厨房温度が2〜3度変わるとスタッフの定着にも効く——設備投資は人手不足対策でもある、という視点で優先順位をつけてください。
機器別の詳しい解説
単価が大きく検討者が多い機器は、個別ページで深掘りしています:券売機 / 業務用エアコン / 業務用冷蔵庫 / POSレジ
いま募集中の関連制度
2026年7月20日時点で、厨房機器を名指しした募集中の制度はデータベースにありません。上で解説した定番制度のルートが基本線です。新しい公募は毎朝の自動巡回で新着ページに掲載されます。
あわせて確認したい定番制度
よくある質問
Q. 中古の厨房機器でも補助金は使えますか?
A. 大半の制度で中古品は対象外、または「複数の中古品販売事業者からの見積もり」など厳しい条件付きです。開業時の資金節約として中古を選ぶこと自体は合理的ですが、その場合は補助金には乗らないと割り切るのが現実的です。
Q. 開業時の厨房機器一式にも補助金は使えますか?
A. 開業前は使える制度が限られます(多くの補助金は事業実績のある事業者向け)。自治体の創業支援補助が最有力で、開業後に持続化補助金の創業枠等を狙うのが定石です。時期別の考え方は開業ガイドを参照してください。
Q. 食洗機は本当に補助金の定番なのですか?
A. はい。洗い場は飲食店で最も人手がかかる工程の一つで、「食洗機導入で洗い場の人時を削減し、その分を賃上げ原資にする」というストーリーが賃上げセット型の制度と噛み合うため、採択事例が多い定番です。