補助金・助成金の税金:もらった後の話
「200万円採択された!」の喜びの後に来るのが税金の話です。知らずに申告漏れをすると追徴の対象になり、知っていれば圧縮記帳で資金繰りを守れます。受給者だけに必要になるこうした知識を、このページにまとめます。
大原則:法人税・所得税はかかる、消費税はかからない
| 税目 | 扱い | 実務ポイント |
|---|---|---|
| 法人税・所得税 | 課税(収入として計上) | 勘定科目は雑収入が一般的。計上時期は下記 |
| 消費税 | 不課税(対価性がないため) | 売上には含めない。課税売上高の判定にも入りません |
いつの年の収入になるのか
原則は「支給が確定した日」の属する年度の収入です。入金日ではありません。年末をまたぐケースで迷いやすいので、次に整理します。
- 12月に交付額の確定通知が届き、入金が翌年1月 → 原則、確定通知の年の収入
- 経費を補填する性質の助成金(雇用系など)は、対象経費が発生した年度に対応させる処理が認められる場合があります
- 年またぎの案件は自己判断せず、確定通知書を持って税理士か税務署に確認するのが安全です
圧縮記帳:計算例で理解する
設備投資型の補助金で最重要の制度です。例:300万円の厨房設備を導入し、補助金100万円を受給(耐用年数8年・定額法)の場合は、次のとおりです。飲食店の厨房設備は、減価償却資産の耐用年数表(機械及び装置)で「飲食店業用設備」に当たり、法定耐用年数は8年です。冷蔵庫を単体で買い替える場合など、器具及び備品に区分されて年数が変わることもあるので、区分は税理士に確認しましょう。
| 圧縮記帳しない | 圧縮記帳する | |
|---|---|---|
| 受給年の課税対象 | 補助金100万円がまるごと収入に(減価償却は300万÷8年=37.5万のみ)→ 差引62.5万円の利益が上乗せ | 収入100万円と圧縮損100万円が相殺 → 受給年の上乗せ課税なし |
| 設備の帳簿価額 | 300万円 | 200万円(300万−100万) |
| 毎年の減価償却費 | 37.5万円×8年 | 25万円×8年(少なくなる) |
| トータルの税負担 | 同じ(課税のタイミングが違うだけ) | |
つまり圧縮記帳は「節税」ではなく「受給年にドンと課税されるのを防ぎ、資金繰りを守るもの」です。補助金はただでさえ後払いで立替が必要なのに(立替ガイド)、その上に受給年の税負担が重なるのを避けられます。個人事業主には「国庫補助金等の総収入金額不算入」という同じ趣旨の制度があります。
圧縮記帳の注意点
- 対象は設備投資型の国庫補助金等。販路開拓の広告費など経費への補助、雇用系助成金は対象外です
- 申告書への明細添付が要件。適用には決算・申告での正しい処理が必要です。受給が決まった時点で税理士に「圧縮記帳を使いたい」と伝えておくとスムーズです
- 少額減価償却の特例との重複計算に注意。青色申告の中小企業者等が使える少額減価償却資産の特例は、2026年4月1日以後に取得した資産なら1個40万円未満(2026年3月31日までの取得分は30万円未満)、年間合計300万円までを一度に経費にできる制度で、2029年3月31日までの取得分が対象です。組み合わせたときにどちらが有利かは、専門家と判断しましょう
ケース別の整理
- 持続化補助金でチラシ・広告費50万円 → 経費型なので圧縮記帳は不可。受給額を雑収入に計上(広告費という経費が同時にあるため、実質の課税への影響は小さい)。なお一般型の第20回では、チラシ・看板・広告は「広報費」に当たり、補助申請額は上限30万円(税込)です。50万円の2/3は約33万円なので、この例の補助は30万円で頭打ちになります。広報費だけでは申請できず、ほかの経費と組み合わせる必要がある点も公募要領で確認しましょう
- 省エネ補助金で冷蔵庫を更新 → 設備型。圧縮記帳を検討する典型的なケース
- キャリアアップ助成金 → 雑収入に計上。人件費と対応するので、実質負担は相殺される方向
- 自治体の家賃補助 → 収入計上。支払家賃が経費なので同上
受給が決まったらやることリスト
- □ 確定通知書・交付決定通知書を経理ファイルに保管(計上時期の証拠)
- □ 会計ソフトに雑収入として登録し、摘要に制度名を書く(後から見てわかるように)
- □ 設備型なら、申告前に圧縮記帳の適用を税理士・無料相談で確認
- □ 消費税の計算から除外されているか確認(会計ソフトの税区分を「不課税」に)
- □ 翌年の納税資金を資金繰り表に織り込む(圧縮記帳が使えない経費型の場合は特に)
申告書での実際の扱い(個人事業主の場合)
- 記帳。入金時ではなく確定時に「雑収入」で計上しましょう。会計ソフトなら摘要欄に「◯◯補助金」と制度名を必ず入れましょう(複数受給時の管理と、税務調査時の説明のため)
- 決算書での見え方。雑収入は売上とは別の行に集計されます。本業の売上と混ぜないことで、融資審査でも「本業の実力」が正しく伝わります
- 総収入金額不算入(個人版の圧縮記帳)を使う場合。確定申告書への明細記載が要件です。国税庁の様式に沿った記載が必要なので、初回は税務署の無料相談で書き方を確認するのが確実です
複数の制度を受給したら:管理表を1枚作る
持続化・省エネ・雇用系を同じ年に受給するようなケースでは、Excelでもノートでも、この5列の表を作りましょう。列は①制度名、②確定通知日、③金額、④性質(設備型か経費型か)、⑤圧縮記帳の対象かです。申告時にこの表を会計ソフトの雑収入一覧と突き合わせるだけで、計上漏れ・二重計上・圧縮記帳の適用漏れがすべて防げます。
よくある失敗集
- 入金ベースで翌年に計上してしまった。確定通知が12月なら原則その年の収入です。期ズレは調査でよく指摘される点です
- 消費税の課税売上に混ぜてしまった。不課税処理を忘れると消費税を過大納付します。会計ソフトの税区分を確認しましょう
- 圧縮記帳を知らずに申告してしまった。受給年に税負担が集中します。当初申告での適用が原則のため、「申告前に知っているか」がすべてです
- 納税資金を使い切ってしまった。経費型の補助金は受給額の2〜3割を納税用に取り置く感覚でいると安全です
仕訳で見る:帳簿にはこう書く(例)
会計ソフト任せでも、仕組みを知っていると入力ミスに気づけます。例:厨房設備300万円・補助金100万円(圧縮記帳・直接減額方式)の一連の仕訳は、次のとおりです。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 設備を購入した | 機械装置 300万円 | 普通預金 300万円 |
| 交付額が確定した(入金前) | 未収入金 100万円 | 雑収入 100万円 |
| 補助金が入金された | 普通預金 100万円 | 未収入金 100万円 |
| 圧縮記帳を適用 | 圧縮損 100万円 | 機械装置 100万円 |
ポイントは、2行目で入金前でも確定時に収益計上すること(期ズレ防止)と、4行目の圧縮損で相殺される構造です。決算をまたぐ場合はこの「未収計上」が正しくできているかが最大のチェックポイントになります。
法人の場合の補足
法人が圧縮記帳を使うには、損金経理(決算書で圧縮損を計上)と申告書への明細書添付が要件です。積立金方式という別のやり方もあり、どちらを使うかは顧問税理士の方針に従えば問題ありません。個人よりも手続きの形式要件が厳格なので、「決算前に伝える」のがより重要になります。
タイミング別・相談すべきこと
| タイミング | やること・聞くこと |
|---|---|
| 申請を検討中 | 「採択されたら税金はどうなるか」をざっくり試算(このページで十分) |
| 採択・交付決定時 | 設備型なら税理士へ「圧縮記帳を使いたい」と一報。ここが最重要タイミング |
| 確定通知が届いた | 計上年度の確認。年またぎなら特に |
| 申告期 | 雑収入の計上・税区分・圧縮記帳の明細を最終チェック |
赤字の年に受給したら:慌てなくていい理由
「今年は赤字なのに補助金で利益が出たことになったら」と心配する必要はありません。補助金の雑収入は事業の損益に合算されるので、本業の赤字が大きければ相殺され、それでも赤字なら青色申告の純損失の繰越控除(3年)で翌年以降の黒字と相殺できます。むしろ赤字年の受給では、圧縮記帳を使わない方が有利なことがあります(相殺で税負担ゼロのまま、翌年以降の減価償却を満額残せるため)。こうした逆転が起きるのが、このテーマの面白いところです。判断が必要な年は、申告前に数字を持って税務署か税理士に相談しましょう。
税理士に頼むならいくらか、どう頼むか
補助金がらみの税務(圧縮記帳・消費税返還・複数受給の整理)だけをスポットで頼む場合、費用の目安は単発相談1〜3万円、申告書作成込みで5〜15万円(売上規模や事務所によって変わります)です。頼むときは採択通知・交付要綱・入金記録の3点を持参すると、初回で方針まで決まります。顧問契約(月2〜4万円)は必須ではありませんが、設備型の補助金を数年おきに使うつもりなら、圧縮記帳と償却資産の管理をまとめて任せられる顧問の方が結果的に安くつく場合もあります。無料で済ませたいなら、税務署の事前相談か青色申告会(年会費1〜2万円)が相談先になります。
受給は翌年の住民税・国保にも跳ねる
見落とされがちな二次効果です。補助金で所得が増えると、翌年の住民税・国民健康保険料も連動して上がります(どちらも前年所得ベースのため)。特に経費型の補助金で利益が増えた年は、所得税を払ったあと、翌年6月ごろからの住民税・国保の請求でもう一度負担が来ます。確定申告ガイドの「利益の3割を納税用口座へ」ルールは、時間差でやってくるこの負担への備えでもあります。圧縮記帳が使える設備型なら、この二次効果もまとめて平準化できます。圧縮記帳の価値は、実は所得税だけの話ではないのです。
税金は「もらった後の後始末」ではなく、「もらう前から設計するもの」です。採択の喜びと一緒に、このページのチェックリストを開きましょう。
参考・出典
設備投資に使える制度は、どの地域に多いか
2026年10月19日時点で該当する267件を地域別に数えました。うち全国対象が35件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。
| 都道府県 | 該当する制度 | その地域の一覧 |
|---|---|---|
| 東京都 | 22件 | 東京都の飲食店向け制度 |
| 北海道 | 15件 | 北海道の飲食店向け制度 |
| 福岡県 | 15件 | 福岡県の飲食店向け制度 |
| 熊本県 | 10件 | 熊本県の飲食店向け制度 |
| 新潟県 | 8件 | 新潟県の飲食店向け制度 |
| 福島県 | 8件 | 福島県の飲食店向け制度 |
| 大阪府 | 8件 | 大阪府の飲食店向け制度 |
| 徳島県 | 7件 | 徳島県の飲食店向け制度 |
| 埼玉県 | 7件 | 埼玉県の飲食店向け制度 |
| 長野県 | 7件 | 長野県の飲食店向け制度 |
上限額が公表されている191件で見ると、中央値は150万円、最大は10億円です。下から4分の1は50万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。
直近の締切は令和8年度京都市小売店等における使い捨てプラスチック発生抑制…の2026年10月22日(あと3日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。
よくある質問
Q. 補助金に税金はかかりますか?
A. かかります。法人税・所得税の計算上は収入(雑収入等)として課税対象です。ただし消費税は対象外(不課税)です。税目によって扱いが分かれるため、ここで混乱しやすくなります。
Q. 圧縮記帳とは何ですか?
A. 設備投資の補助金について、受給年に一気に課税されるのを避け、設備の減価償却期間に合わせて課税を分散する会計処理です。税金が消えるわけではなく、課税のタイミングをならすだけですが、受給年の資金繰りには大きな助けになります。
Q. 雇用系の助成金も課税されますか?
A. はい、収入として課税対象です。人件費という経費が同時に出ているため実質負担は相殺されますが、申告で計上を漏らすと指摘の対象になるので、忘れずに計上しましょう。
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公開 2026年7月19日 / 最終更新 2026年10月4日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源
更新履歴(2件)
- 持続化補助金(一般型第20回)では広報費の補助申請額が上限30万円で、単独では申請できない点を追記、参考・出典を追加
- 厨房設備の耐用年数を6年から8年(飲食店業用設備)に修正し計算例を更新、少額減価償却資産の特例(40万円未満)を追記、参考・出典を追加
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