飲食店版

補助金・助成金の税金:もらった後の話

2026年7月19日更新 / 飲食店主向けガイド

ナビコッコ
採択されたら、喜びと同時に税理士さんへ「圧縮記帳を使いたい」と一報。申告後では遅いのです。

「200万円採択された!」の喜びの後に来るのが税金の話です。知らずに申告漏れをすると追徴の対象になり、知っていれば圧縮記帳で資金繰りを守れる——受給者だけが必要になる知識を、このページにまとめます。

大原則:法人税・所得税はかかる、消費税はかからない

税目扱い実務ポイント
法人税・所得税課税(収入として計上)勘定科目は雑収入が一般的。計上時期は下記
消費税不課税(対価性がないため)売上には含めない。課税売上高の判定にも入りません

いつの年の収入になるのか

原則は「支給が確定した日」の属する年度の収入です。入金日ではありません。年末をまたぐケースで迷いやすいので整理すると:

  • 12月に交付額の確定通知が届き、入金が翌年1月 → 原則、確定通知の年の収入
  • 経費を補填する性質の助成金(雇用系など)は、対象経費が発生した年度に対応させる処理が認められる場合があります
  • 年またぎの案件は自己判断せず、確定通知書を持って税理士か税務署に確認するのが安全です

圧縮記帳:計算例で理解する

設備投資型の補助金で最重要の制度です。例:300万円の厨房設備を導入し、補助金100万円を受給(耐用年数6年・定額法)の場合:

圧縮記帳しない圧縮記帳する
受給年の課税対象補助金100万円がまるごと収入に(減価償却は300万÷6年=50万のみ)→ 差引50万円の利益が上乗せ収入100万円と圧縮損100万円が相殺 → 受給年の上乗せ課税なし
設備の帳簿価額300万円200万円(300万−100万)
毎年の減価償却費50万円×6年約33万円×6年(少なくなる)
トータルの税負担同じ(課税のタイミングが違うだけ)

つまり圧縮記帳は「節税」ではなく「受給年にドンと課税されるのを防ぐ資金繰り防衛」です。補助金はただでさえ後払いで立替が発生しているのに(立替ガイド)、その上に受給年の税負担が重なるのを避けられます。個人事業主には「国庫補助金等の総収入金額不算入」という同じ趣旨の制度があります。

圧縮記帳の注意点

  • 対象は設備投資型の国庫補助金等 — 販路開拓の広告費など経費への補助、雇用系助成金は対象外です
  • 申告書への明細添付が要件 — 適用には決算・申告での正しい処理が必要。受給が決まった時点で税理士に「圧縮記帳を使いたい」と伝えておくとスムーズです
  • 少額減価償却の特例との重複計算に注意 — 組み合わせの有利判定は専門家と

ケース別の整理

  • 持続化補助金でチラシ・広告費50万円 → 経費型なので圧縮記帳は不可。受給額を雑収入に計上(広告費という経費が同時にあるため、実質の課税インパクトは小さい)
  • 省エネ補助金で冷蔵庫を更新 → 設備型。圧縮記帳の検討対象ど真ん中
  • キャリアアップ助成金 → 雑収入に計上。人件費と対応するので実質負担は相殺方向
  • 自治体の家賃補助 → 収入計上。支払家賃が経費なので同上

受給が決まったらやることリスト

  • □ 確定通知書・交付決定通知書を経理ファイルに保管(計上時期の証拠)
  • □ 会計ソフトに雑収入として登録し、摘要に制度名を書く(後から見てわかるように)
  • □ 設備型なら、申告前に圧縮記帳の適用を税理士・無料相談で確認
  • □ 消費税の計算から除外されているか確認(会計ソフトの税区分を「不課税」に)
  • □ 翌年の納税資金を資金繰り表に織り込む(圧縮記帳が使えない経費型の場合は特に)

申告書での実際の扱い(個人事業主の場合)

  • 記帳 — 入金時ではなく確定時に「雑収入」で計上。会計ソフトなら摘要欄に「◯◯補助金」と制度名を必ず入れる(複数受給時の管理と、税務調査時の説明のため)
  • 決算書での見え方 — 雑収入は売上とは別の行に集計されます。本業の売上と混ぜないことで、融資審査でも「本業の実力」が正しく伝わります
  • 総収入金額不算入(個人版の圧縮記帳)を使う場合 — 確定申告書への明細記載が要件です。国税庁の様式に沿った記載が必要なので、初回は税務署の無料相談で書き方を確認するのが確実です

複数の制度を受給したら:管理表を1枚作る

持続化・省エネ・雇用系を同じ年に受給するようなケースでは、Excelでもノートでも、この5列の表を作ってください:①制度名、②確定通知日、③金額、④性質(設備型か経費型か)、⑤圧縮記帳の対象か。申告時にこの表を会計ソフトの雑収入一覧と突き合わせるだけで、計上漏れ・二重計上・圧縮記帳の適用漏れがすべて防げます。

よくある失敗集

  • 入金ベースで翌年に計上してしまった — 確定通知が12月なら原則その年の収入。期ズレは調査での定番指摘です
  • 消費税の課税売上に混ぜてしまった — 不課税処理を忘れると消費税を過大納付します。会計ソフトの税区分を確認
  • 圧縮記帳を知らずに申告してしまった — 受給年に税負担が集中。当初申告での適用が原則のため、「申告前に知っているか」がすべてのポイントです
  • 納税資金を使い切ってしまった — 経費型の補助金は受給額の2〜3割を納税用に取り置く感覚でいると安全です

仕訳で見る:帳簿にはこう書く(例)

会計ソフト任せでも、仕組みを知っていると入力ミスに気づけます。例:厨房設備300万円・補助金100万円(圧縮記帳・直接減額方式)の一連の仕訳:

タイミング借方貸方
設備を購入した機械装置 300万円普通預金 300万円
交付額が確定した(入金前)未収入金 100万円雑収入 100万円
補助金が入金された普通預金 100万円未収入金 100万円
圧縮記帳を適用圧縮損 100万円機械装置 100万円

ポイントは2行目——入金前でも確定時に収益計上すること(期ズレ防止)と、4行目の圧縮損で相殺される構造です。決算をまたぐ場合はこの「未収計上」が正しくできているかが最大のチェックポイントになります。

法人の場合の補足

法人が圧縮記帳を使うには、損金経理(決算書で圧縮損を計上)と申告書への明細書添付が要件です。積立金方式という別のやり方もあり、どちらを使うかは顧問税理士の方針に従えばOK。個人よりも手続きの形式要件が厳格なので、「決算前に伝える」のがより重要になります。

タイミング別・相談すべきこと

タイミングやること・聞くこと
申請を検討中「採択されたら税金はどうなるか」をざっくり試算(このページで十分)
採択・交付決定時設備型なら税理士へ「圧縮記帳を使いたい」と一報。ここが最重要タイミング
確定通知が届いた計上年度の確認。年またぎなら特に
申告期雑収入の計上・税区分・圧縮記帳の明細を最終チェック

受給は翌年の住民税・国保にも跳ねる

見落とされがちな二次効果です。補助金で所得が増えると、翌年の住民税・国民健康保険料も連動して上がります(どちらも前年所得ベースのため)。特に経費型の補助金で利益が押し上がった年は、「所得税は払ったのに、翌年6月からの請求で二度驚く」パターンが典型。確定申告ガイドの「利益の3割を納税用口座へ」ルールは、この時間差攻撃への防御でもあります。圧縮記帳が使える設備型なら、この二次効果もまとめて平準化できる——圧縮記帳の価値は、実は所得税だけの話ではないのです。

税金は「もらった後の後始末」ではなく「もらう前から設計するもの」。採択の喜びと一緒に、このページのチェックリストを開いてください。

よくある質問

Q. 補助金に税金はかかりますか?

A. かかります。法人税・所得税の計算上は収入(雑収入等)として課税対象です。ただし消費税は対象外(不課税)という二面性があり、ここが混乱しやすいポイントです。

Q. 圧縮記帳とは何ですか?

A. 設備投資の補助金について、受給年に一気に課税されるのを避け、設備の減価償却期間に合わせて課税を分散する会計処理です。税金が消えるわけではなく「タイミングの平準化」ですが、受給年の資金繰りを大きく助けます。

Q. 雇用系の助成金も課税されますか?

A. はい、収入として課税対象です。人件費という経費が同時に出ているため実質負担は相殺されますが、申告への計上漏れは指摘対象になるので忘れずに。

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