飲食店版

居酒屋で使える補助金・助成金:人を雇う業態は「雇用系」が本命になる

2026年10月19日更新 / 業態別の補助金・開業資金ガイド

ナビコッコ
居酒屋は飲食業の中で一番「人」の業態です。だから使える制度も人がらみが厚い。設備の補助金を単発で追うより、雇用系助成金を毎年の年中行事にする方が、累計では大きな金額になりますよ。

居酒屋は飲食業態の中で最も「人」に依存する業態です。ホール・キッチンで常に複数人が動き、シフト管理と採用が経営の中心になります。だからこそ補助金・助成金の戦略も他業態と違い、設備系の単発補助より、雇用系助成金を継続的に取る方が累計で大きくなるのが居酒屋の特徴です。

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まず相場観:居酒屋開業費用の内訳(15坪・25席)

物件取得費200万〜350万円。夜営業の立地は保証金が高め(家賃10ヶ月分も普通)
内装工事450万〜700万円。ダクト・給排気が居酒屋の隠れ費用。重飲食可の居抜きなら半減
厨房機器200万〜300万円。高火力コンロ・大型冷蔵庫・製氷機・食洗機。機器別の補助金参照
運転資金200万円〜。仕入れ(酒は現金問屋か掛けか)と人件費の先行が大きい
合計1,000万〜1,500万円。居抜きなら700万円台から

使える制度の型:居酒屋は「雇用系」が本命

正社員化型キャリアアップ助成金。バイトから社員への転換で1人あたり数十万円規模。店長候補を社会保険つきで正社員化する場面は居酒屋の定番イベントなので、知らずに転換すると毎回取り損ねる
賃上げ×設備型業務改善助成金。最低賃金引き上げとセットで券売機・食洗機・セルフオーダーを導入。人が多い業態ほど賃上げの対象者がいて使いやすい
販路開拓型持続化補助金。ランチ参入・テイクアウト強化・インバウンド対応(多言語メニュー)の投資に
省エネ・設備型冷蔵庫・空調の更新は省エネ系で。営業時間が長い業態は電気代削減の効果も大きい

計算例:スタッフ8人の店の「雇用系の年中行事」

  • 体制:社員2人+アルバイト6人の25席居酒屋
  • 年1回の業務改善助成金:最低賃金引き上げ(時給+60円)とセットで食洗機100万円→仮に3/4助成で75万円
  • バイトの正社員転換:年1人をキャリアアップ助成金で転換→数十万円規模(コースにより変動)
  • 2年間の累計イメージ:設備2件+転換2人で150万〜250万円規模の支援を受けながら、店は省力化され、スタッフの待遇は上がる
  • ポイント:雇用系助成金は採択制でなく要件充足型(条件を満たせば原則もらえる)。計画届の提出が「実行の前」という順序ルールだけは絶対で、ここを外すと全額受け取れなくなります。社労士の報酬は事務所ごとに決まり、公的な料金表はありません。受給額の10〜20%を成功報酬とする例があるので、目安として契約前に書面で確かめましょう。社労士・弁護士以外の業者が報酬を得て申請を代行すると社会保険労務士法違反になる場合があり、業者の指南で虚偽の申請をすれば事業主が不正受給を問われます

夜営業の法務:深夜酒類提供と風営法の分かれ目

  • 深夜0時以降に酒類中心の営業 → 警察署への「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」。図面つきの届出で、用途地域によっては不可(住居系地域など)。物件契約前に必ず確認
  • 「接待」をするなら風営法許可。お客の隣に座る・カラオケでデュエットする等は接待に該当し、深夜届出では営業できません。ここが業態設計の分かれ目です。ここの誤解は営業停止に直結するので、迷ったら行政書士か警察署の生活安全課へ
  • 20歳未満への酒類提供の管理。年齢確認の仕組み(POSでの確認ボタン・掲示)を開業時に整えましょう。従業員教育の記録も自衛になります

居酒屋の損益の急所と、制度でどう守るか

  • FLコスト(食材+人件費)は売上の55〜60%までに抑えるのが目安。人件費側の上昇(最低賃金)は今後も続くため、省力化投資→業務改善助成金のサイクルを毎年回すのが根本的な対策です
  • ドリンク比率が生命線。原価率の低いドリンク(3割前後)が、全体の粗利を支えています。製氷機・ドリンクサーバーへの投資は、粗利を生む設備への投資です
  • 宴会需要の波。12月と4月に集中する売上の平準化(ランチ・テイクアウト・平日コース)は持続化補助金の定番テーマで、「新しい客層を取りに行く計画」として書きやすい内容です

よくある誤解

  • 「助成金は面倒だからやらない」。雇用系は一度型を作れば毎年同じ手順です。就業規則・出勤簿・賃金台帳の3点が整っていれば、実務の大半は終わっています。逆にこの3点が無い店は、助成金以前に労務リスクを抱えています(社会保険ガイド)
  • 「深夜届を出せば何でもできる」。接待行為はできません。ダーツ・カラオケ設備の扱いも地域の運用差があるため、業態を変えるときはその都度確認しましょう
  • 「改装は全額自腹しかない」。トイレ改修・分煙・バリアフリーは自治体補助が付きやすい定番改修です。受動喫煙対策の補助は喫煙室設置の定番ルートなので、たばこを吸う客層の店は確認しておきましょう
  • 「宴会のドタキャンは泣き寝入りしかない」。キャンセルポリシーの明示+コース予約の事前決済(予約システムやモバイルオーダー&ペイ)で、仕組みとして減らせます。この仕組みづくりも「予約管理のIT投資」として持続化補助金・IT導入系に乗せられる定番テーマです。12月の無断キャンセル1件(10名×5,000円=5万円)を防げば、月額システム代は回収できます
  • 「値上げしたら客が飛ぶ」。原価が上がっている時期の価格改定は、やり方次第です。全品一律でなく看板メニューは死守して周辺から上げる方法から、告知文の書き方まで含めて値上げ告知の例文ガイドに実例をまとめています
  • 「求人費は削れない固定費」。無料の採用ページ(Airワーク等)+既存スタッフの紹介インセンティブ(1人採用で紹介者に1万円等)を組み合わせると、有料媒体費を減らせます。人手不足対策の投資順序は人手不足ガイドに整理しています

開業から2年間の制度カレンダー

開業前特定創業支援(自治体講座で登録免許税半減等。持続化補助金<創業型>の申請条件にもなる)・創業融資・自治体の創業補助。開業ガイド参照
開業〜半年持続化補助金の<創業型>(チラシ・看板・予約システム)。市区町村の特定創業支援等事業で支援を受けた日と開業日が、どちらも締切から過去1年以内なら対象です。第4回は上限200万円(インボイス特例で+50万円)・補助率2/3で、一般型(通常枠は上限50万円)との同時申請はできません。開業直後は「新しい客層の開拓」が書きやすい黄金期
半年〜1年エースのバイトが育つ時期。キャリアアップ計画書を労働局に提出(転換の前が鉄則)
毎年夏業務改善助成金の検討。10月の最低賃金改定で「どうせ上げる」分を設備投資とセットに
随時自治体の突発補助(受動喫煙・インバウンド・物価高騰系)。下の募集中リストと新着ページで捕捉
3年目〜2号店・業態転換の大型投資は、2026年からものづくり補助金と新事業進出補助金を一体で運用する新事業進出・ものづくり補助金の土俵。セントラルキッチン化や看板メニューの冷凍EC展開が居酒屋の定番パターンです。ただし既存事業のやり方を改善するだけ、設備を入れるだけの計画は対象外なので、新しい製品・サービスや新事業への進出として計画を組みましょう。付加価値額の年平均4.0%以上の伸び、1人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上の引き上げ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすることが要件で、建物費を補助の対象にできるのは新事業進出枠などに限られます

居酒屋の制度活用は、一度きりの勝負ではなく毎年の年中行事です。このカレンダーを店の年間計画に重ねるだけで、「知らずに取り損ねる」ことが仕組みとしてなくなります。

ランチ参入は補助金の定番テーマ: 数字で見る

夜だけの25席居酒屋がランチに参入する場合を数字にします。ランチ25食×客単価900円×25日で月56万円の売上上乗せ。原価35%(約19.7万円)とランチ専任パート1人(5時間×時給1,150円×25日=約14万円)を引くと、残りは月約22万円です。昼の光熱費や消耗品はここから払いますが、家賃増はゼロのままです。厨房はすでにあり、家賃は夜の売上で払い終えています。同じ固定費のまま昼も売る二毛作が、ランチ参入の本質です。

そしてこの参入投資(ランチ用メニュー開発・のぼり・券売機のメニュー追加・SNS告知)は、持続化補助金の「新しい客層の開拓」として最も書きやすいテーマの一つです。挑戦するなら自腹でなく制度に乗せましょう。

申請前チェックリスト

  • ☐ 就業規則・出勤簿・賃金台帳は整備済みか(雇用系助成金の前提)
  • ☐ 正社員化・賃上げの予定を助成金のスケジュールに合わせているか(実行前の計画届が鉄則)
  • ☐ 物件の用途地域で深夜営業が可能か確認したか
  • ☐ 自治体の設備・受動喫煙・インバウンド補助を確認したか → 下の募集中リスト
  • ☐ 券売機・食洗機など省力化投資の優先順位を決めたか(券売機・食洗機)

参考・出典

いま募集中の関連制度

2026年10月19日時点で、居酒屋を名指しした募集中の制度はデータベースにありません。上で解説した定番制度と自治体の創業支援が基本線です。新しい公募は毎朝の自動巡回で新着ページに掲載されます。

開業に使える制度は、どの地域に多いか

2026年10月19日時点で該当する71件を地域別に数えました。うち全国対象が7件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている45件で見ると、中央値は100万円、最大は5億円です。下から4分の1は30万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切は【募集期間延長】「さかいでからはじめる創業支援補助金」の募集…の2026年10月30日(あと11日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

あわせて確認したい定番制度

よくある質問

Q. 居酒屋の開業資金はいくらですか?

A. 15坪・25席クラスで1,000万〜1,500万円が相場です。カフェより厨房の設備が大がかりで(火力・冷蔵容量・ダクト)、営業時間が長いぶん運転資金も厚めに要ります。居抜き活用で300万〜500万円圧縮するのが定石になっています。

Q. 深夜0時以降もお酒を出すには何が必要ですか?

A. 深夜0時以降に主として酒類を提供する営業には「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」(警察署)が必要です。用途地域によっては営業できない場所があるため、物件契約前の確認が必須です。なお接待(お客の隣に座って接客等)をするなら風営法の許可が要り、まったく別の扱いになります。

Q. 居酒屋で使いやすい助成金はどれですか?

A. 非正規スタッフの正社員化で受給するキャリアアップ助成金、最低賃金引き上げとセットの設備投資に使う業務改善助成金が二本柱です。どちらも「人を雇っている」ことが前提なので、まさに居酒屋向きの制度です。

Q. インバウンド対応にも補助金は使えますか?

A. 使えます。多言語メニューの制作・翻訳、キャッシュレス決済(海外カード・タッチ決済)、免税対応などは、観光地の自治体でインバウンド対応補助の定番メニューです。持続化補助金の「新しい客層の開拓」としても書きやすいテーマで、夜の飲食はインバウンド消費の中心なので、相性は抜群です。

Q. 開業資金の調達はどう組むのが定石ですか?

A. 自己資金3割+日本政策金融公庫の創業融資が基本形です。1,200万円の開業なら自己資金360万円+融資840万円のイメージです。補助金は後払いのため、保証金・内装など開業費には間に合いません。開業は融資で組み、開業後の設備・販促投資に補助金を当てるのが正しい順番です。

他の業態の補助金ガイド

公開 2026年7月20日 / 最終更新 2026年10月7日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源

更新履歴(2件)
  • 社労士報酬の「相場10〜20%」を、公的な料金表がないため成功報酬の一例に変更、社労士以外の業者による申請代行の注意点を追記
  • 持続化補助金の「創業枠」を創業型(上限200万円、特定創業支援等事業が条件)に修正、ランチ営業の試算を原価・人件費を引いた残り月約22万円に修正、参考・出典を追加
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