飲食店版

事業継続力強化計画: 数ページの紙で加点と備えを両取り

2026年9月3日更新 / 飲食店主向けガイド

ナビコッコ
「BCPを作りましょう」と言うと嫌な顔をされますが、「無料で作れる紙1枚で、補助金の加点と防災税制と低利融資が付いてきます」と言うと皆さん書き始めます。動機は不純で構いません。書き上がった計画は、動機に関係なく災害の日にあなたの店を守ります。

補助金の加点一覧に必ず顔を出す「事業継続力強化計画」。名前は厳めしいですが、正体は数ページのひな形に沿って書く、無料の簡易BCP認定です。しかも認定の効果は加点だけでなく、防災税制・低利融資・そして本物の備えまで付いてくる。費用ゼロでこれだけ返ってくる紙は、制度の世界でもそう多くありません。

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制度の骨格

正体中小企業の簡易BCPを国が認定する制度(中小企業強靱化法にもとづく)
分量数ページの様式。ひな形・記載例が公開済み
費用・期間無料。電子申請→認定まで1〜2ヶ月目安
実利補助金の加点/防災設備の税制優遇/公庫の低利融資/認定ロゴ
有効期間認定には期限があり、更新・再申請の管理が必要

書く中身: 4ブロックを店の言葉で

  1. ハザードの確認 — 市町村のハザードマップ(5分で見られます)で自店の浸水・土砂・地震リスクを見る。「うちは何が来る店か」を1段落で書きます
  2. 初動対応 — 発災直後の安否確認(誰がどの順で連絡・目標3時間以内)・被害把握・営業可否の判断と発信。夜間・店主不在でも回る手順にするのが実用のコツです
  3. 事前対策 — 人(連絡網)・モノ(冷蔵在庫・設備の固定)・カネ(保険・店舗保険の記事・手元資金)・情報(予約台帳・会計データのバックアップ)の4面で、今ある備えと今後の計画を書きます
  4. 実効性の確保 — 年1回の見直し・訓練(15分の読み合わせで十分)。書いた日付と見直し日を決めれば完成です

宿泊業・介護向けには宿の防災BCP介護のBCP義務化の記事で業種の特殊事情を書きました。飲食店は義務ではない分、「取れば得」の位置にあるのがこの認定です。

計算例: 費用ゼロのリターン

  • 加点として — 当落線上の採択率を押し上げる1枚。補助上限100万円の制度で当選確率が数ポイント動けば、期待値で数万円分の価値です(加点カタログの期待値計算)
  • 税制として — 認定計画に基づく防災設備投資(自家発電・止水板・耐震固定等)に特別償却の優遇。100万円の非常用電源なら、課税の前倒し軽減で数万〜十数万円規模の効果になり得ます(税率・年度で変動、税理士に確認を)
  • 備えとして — 台風の夜に「誰に連絡し、冷蔵庫をどうし、明日の予約にどう連絡するか」が決まっている。この価値は金額にしにくいですが、1回の災害で数十万円の損失(食材廃棄・機会損失)を減らせれば十分に実額です
  • 作成コストは、ひな形利用で5〜10時間・0円。認定事業者は全国で数万社規模に積み上がっており、審査は「落とすため」ではなく「整っているか」を見る性質です。この投資対効果に並ぶ書類仕事は、gBizID取得くらいでしょう

書き方のコツ: 認定される計画の型

  • 固有名詞と数字で書く — 「従業員の安否を確認する」より「LINEグループで店長→スタッフ5人へ、発災後3時間以内」。事業計画書の記事と同じで、具体性が審査の言語です
  • 今ある備えを棚卸しする — 保険・バックアップ・持ち出し袋。すでにやっていることを書くだけで、事前対策の欄はかなり埋まります
  • 欲張らない — 完璧な防災計画ではなく「初動が決まっている」ことが認定の芯です。書けない大計画より、回る小計画
  • 電子申請の操作はjGrantsの記事の要領と同様、下見が九割です

飲食店の記入例: 埋め方の実演

ハザード「当店は◯◯川の浸水想定区域(0.5〜3m)。地震は震度6弱想定」——ハザードマップの写しを添えるだけ
初動「店長がLINEグループで全5名の安否確認(3時間以内)→被害写真の撮影→SNSで営業可否を発信」
事前対策「冷蔵在庫は保険の対象に含める/レジデータはクラウド会計に日次同期/土のう3袋を裏口に常備」
実効性「毎年9月1日の営業前に15分の読み合わせ。連絡網は年1回更新」

この粒度で4ブロック——それで認定の土俵に乗ります。書けない欄が出たら、それは「まだ決めていないこと」の発見です。計画づくりの半分は、書く前の意思決定だと分かります。

従業員と共有して初めて完成

認定はゴールではなく、計画の中身をスタッフが知っていることが実効性の本体です。共有は大げさでなくて構いません——朝礼で5分、「災害の時はこのLINEグループで安否確認、集合はここ」と伝え、バックヤードに1枚貼る。アルバイトの入替時にも初日のオリエンテーションに1行足す。「書いた人しか知らない計画」は、災害の夜には存在しないのと同じです。

グループ・連携型という選択肢

  • 複数の事業者が連携して申請する連携型の枠もあります。商店街の仲間・取引先と共同で作れば、災害時の相互支援(食材の融通・営業場所の貸し借り)まで計画に書けます
  • 連携型は加点の扱いが単独型と異なる場合があるため、狙う補助金の加点表で確認を。地域のつながりが強い店は、防災の実効性でも連携型に分があります

よくある誤解

  • 「BCPなんて大企業のもの」 — この制度はまさに「大企業のBCPは無理」という中小の声から生まれた簡易版です。数ページ・無料・ひな形つき。大企業用の重装備を想像して敬遠するのは損です
  • 「加点のためのやっつけ書類でいい」 — 動機は加点で構いません。でもどうせ書くなら、連絡網の電話番号だけは本物を入れましょう。災害の夜に効くのはその1行です
  • 「一度取れば終わり」 — 認定には有効期間があり、体制が変われば中身も古びます。年1回の見直し日をカレンダーに入れる——それだけで「生きた計画」を維持できます

認定後の運用: 紙を生かす3つの習慣

  • 年1回・15分の読み合わせ — 9月1日(防災の日)の営業前など、日付を固定して習慣化。訓練記録のメモ1行が、計画を「生きた紙」にします
  • 連絡網の更新 — スタッフの入れ替わりで電話番号が古びるのが形骸化の最多パターン。採用・退職のたびに1分で更新を
  • 防災投資と紐づける — 非常用電源・止水板・冷蔵在庫の保険——計画に書いた事前対策を実行するとき、税制優遇(特別償却)の対象になるかを確認。計画が投資の割引券になる瞬間です

着手チェックリスト

  • ☐ ハザードマップで自店のリスクを確認したか
  • ☐ ひな形・記載例をダウンロードしたか
  • ☐ 連絡網(実名・実番号)を整理したか
  • ☐ 既存の備え(保険・バックアップ)を棚卸ししたか
  • ☐ 狙う補助金の締切から逆算して2ヶ月前に申請したか
  • ☐ 認定の有効期限と年1回の見直し日をカレンダーに入れたか
  • ☐ 防災投資の予定があれば税制優遇の適用を税理士に確認したか
  • ☐ 連携型(取引先・商店街との共同申請)の選択肢を検討したか
  • ☐ スタッフへの共有(朝礼5分+掲示1枚)を済ませたか

他の計画との関係も整理しておきます。介護のBCP(義務)や宿の避難確保計画(義務)を既に作った事業者なら、内容の多くを流用してこの認定を取れます——義務の紙を任意の認定に「二次利用」する一筆書きです。逆に飲食店がこの認定から始めて、後で本格的なBCPに育てる道もあります。入口はどちらからでも、書いたものは繋がる——防災の書類はそういう性質のものです。

結論。事業継続力強化計画は、「無料で作る1枚が、加点と税制と備えの3方向に効く」という、制度設計の妙が詰まった認定です。動機は採択率で構わない。書き上がった計画は、動機を問わず、災害の夜にあなたの店の初動を守ります。今週の定休日、ひな形を開くところから始めましょう。

設備投資に使える制度は、どの地域に多いか

2026年9月3日時点で該当する329件を地域別に数えました。うち全国対象が47件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている242件で見ると、中央値は190万円、最大は10億円です。下から4分の1は50万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切はデジタル技術活用促進助成事業(DX導入)【第2回募集受付】の2026年9月4日(あと1日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

よくある質問

Q. 事業継続力強化計画とはなんですか?

A. 中小企業が防災・減災の初動と事前対策を簡潔にまとめ、国(経済産業大臣)の認定を受ける制度です。本格的なBCPより大幅に簡素な数ページの様式で、「災害時に何をするか」を書いて申請します。認定されると補助金の加点・税制優遇・金融支援などの実利が付きます。

Q. 何を書くのですか?

A. 骨子は4つ。①自社のハザード確認(ハザードマップで浸水・地震リスクを見る)②発災直後の初動(安否確認・被害把握・情報発信)③事前対策(設備・保険・データ・資金の備え)④実効性確保の取り組み(訓練・見直し)。ひな形と記載例が公開されており、ゼロから書く必要はありません。

Q. 認定までどのくらいかかりますか?

A. 電子申請で提出し、認定まで1〜2ヶ月程度が目安です(審査状況で変動)。補助金の加点に使うなら「申請時点で認定済み」が条件のことが多いため、狙う公募の締切から逆算して2ヶ月前には出しておくのが安全です。

Q. どんな実利がありますか?

A. 代表的なのは①ものづくり補助金など一部補助金の加点②防災・減災設備への税制優遇(特別償却)③日本政策金融公庫の低利融資④認定ロゴの使用。加点目的で取った認定が、そのまま防災投資の税優遇にもつながる——複数の制度への「鍵」になる認定です。

Q. 飲食店でも意味がありますか?

A. あります。飲食店は停電・断水・浸水の影響を直接受ける業態で、冷蔵庫の在庫・予約客への連絡・従業員の安否確認など、初動を決めておく価値は高いです。数ページの計画でも「災害の夜に迷わない」効果は本物で、加点はそのおまけと考えても十分に元が取れます。

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