飲食店の減価償却:耐用年数の早見表と「少額ルール」の使い分け
ナビコッコ
「30万円のオーブンを買ったのに、今年の経費は6万円だけ?」——減価償却で誰もが一度は面食らうやつです。でも少額特例を知っていれば、たいていの買い物は買った年に落とせます。
減価償却は「高いものは買った年に全額経費にできず、使う年数に分けて経費化する」ルールです。飲食店は厨房機器・内装と高額資産だらけなので、ここの理解が納税額と資金繰りの読みに直結します。難しい理論は飛ばして、実務で使う部分だけを整理します。
まず結論: 金額で3つに分かれる
| 10万円未満 | 買った年に全額経費。消耗品費でOK。迷う必要なし |
|---|---|
| 10万〜30万円未満 | 青色申告なら少額減価償却資産の特例で買った年に全額経費(年間合計300万円まで)。白色は3年均等の一括償却資産(20万円未満)か通常償却 |
| 30万円以上 | 通常の減価償却。耐用年数に分けて経費化。ここで下の早見表が要る |
この3段構えを知っているだけで、飲食店の買い物の9割は迷わなくなります。青色申告にしておく価値の大きな部分が、実はこの30万円特例です。
飲食店の耐用年数 早見表
| 厨房機器(冷蔵庫・オーブン・食洗機等) | 8年(飲食店業用設備)が基本区分 |
|---|---|
| ガスレンジ・調理器具類 | 器具備品として5〜8年(品目により異なる) |
| エアコン(業務用・建物と一体でないもの) | 6年(器具備品)/ダクト接続の建物附属設備型は15年 |
| 内装造作(賃借物件) | 合理的見積もりで10〜15年程度が実務相場 |
| 電気・給排水・空調などの附属設備 | 15年が中心 |
| テーブル・椅子(金属製以外) | 5年(金属製は15年) |
| POSレジ・パソコン | 4〜5年 |
| 看板(金属製の袖看板等) | 3〜18年(構造・種類で大きく変わる) |
| 軽自動車(キッチンカー等のベース) | 4年(新車) |
※区分の当てはめは資産の実態で変わります。高額資産は税理士か税務署に確認を。
計算例: 160万円のスチコンを買ったら
- 耐用年数8年・定額法(個人事業主の原則): 160万円 ÷ 8年 = 年20万円ずつ経費化
- 年の途中で買ったら月割り。10月購入なら初年度は20万円×3/12=5万円だけ
- つまり「買った年の税金はあまり減らない」——ここが資金繰りの読み違いポイントです。支払いは今年160万円、経費は今年5万円。この時間差を埋める知識が圧縮記帳や少額特例です
シミュレーション: 開業時の内装800万円はこう経費化される
| 前提 | 内装造作600万円(15年償却)+厨房機器180万円(8年)+備品20万円(即時償却・青色) |
|---|---|
| 開業年(7月開業) | 償却費: 600÷15×6/12+180÷8×6/12+20 = 約51万円。現金は800万円出たのに経費はこれだけ |
| 2年目以降 | 毎年 600÷15+180÷8 = 約62.5万円が「現金の出ない経費」として続く |
| 教訓 | 開業年は利益が出て見えやすい(経費化が遅い)→ 納税資金の準備を。2年目以降は償却費が返済原資の読みに使える |
実務の判断フロー
- 30万円未満に収まるか? — 青色なら即時償却へ。見積もりが31万円なら、値引き交渉や構成見直しで30万円未満に収める価値が実際にあります
- セット判定に注意 — 「1単位」は機能する単位。椅子1脚3万円×10脚は各3万円でOKですが、システム一式・工事一式は合算判定されがち。見積書を機能単位で分けてもらうのが実務の知恵
- 中古を検討 — 中古は耐用年数が短く早く経費化できる(簡便法で最短2年)。中古厨房機器の買い方とセットで検討を
- 修繕か資本的支出か — 壊れた箇所を直すのは修繕費(即経費)、価値を高める改造は資産計上。エアコンの部品交換は修繕、グレードアップ交換は資産、が大まかな感覚です。迷う修理は20万円未満なら修繕費でよいという形式基準もあり、実務の多くはここで決着します
- 補助金で買った資産 — 取得価額から補助金分を圧縮できる圧縮記帳の検討を(補助金と税金)。少額特例の判定も圧縮後の金額で行えるため、95万円の機器に70万円の補助なら圧縮後25万円で即時償却、という合わせ技が成立します
開業前の支出との区別
- 開業前に払った家賃・研修・チラシなどは開業費(繰延資産)として、好きな年に好きなだけ償却できる特殊枠です
- ただし10万円以上の設備・内装は開業費に入らず、通常の減価償却資産になります。「開業前に買ったから全部開業費」は定番の誤解
減価償却と資金繰り: 「現金の出ない経費」の意味
- 償却費は支払いが済んだ後に計上され続ける経費です。つまり2年目以降は「現金は出ていないのに利益を減らしてくれる」——ここから減価償却費÷12=毎月の返済に回せる隠れ原資という見方が生まれます
- 例: 償却費が年60万円・税引後利益が年100万円の店なら、現金ベースの返済余力は約160万円。融資の面談で「償却前利益」が問われるのはこのためです
- 逆に開業年は「現金は大量に出たのに経費は少ししか立たない」ため、利益が出て見えるのに現金がない状態になりがち。納税資金の確保を忘れずに
忘れた頃に来る「償却資産税」
- 厨房機器・内装造作などの事業用資産は、固定資産税の一種である償却資産税(税率1.4%)の申告対象です。毎年1月に市区町村へ申告し、課税標準の合計150万円未満なら免税
- 小さな店は免税枠に収まることが多いものの、申告自体は必要です。会計ソフトの固定資産台帳から申告書類をほぼ自動で作れるので、1月のタスクとしてカレンダーに入れておきましょう
帳簿づけを楽にする
- 会計ソフトの固定資産台帳に登録すれば、毎年の償却費は自動計算・自動仕訳されます。手計算が要るのは購入時の区分判断だけ
- 補助金で買った資産は圧縮記帳の検討を。取得価額が変わるので登録前に判断するのが正しい順序です
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よくある質問
Q. 10万円未満のものは全部その年の経費にできますか?
A. はい。取得価額10万円未満(青色申告なら30万円未満の少額特例も利用可・年間合計300万円まで)は、購入した年にまとめて経費にできます。「1単位」の判定は通常1セットで機能するもの単位で、例えばテーブルと椅子のセット販売なら合計額で判定される点に注意してください。
Q. 中古の厨房機器を買った場合の耐用年数は?
A. 中古は法定耐用年数より短い「見積耐用年数」が使えます。簡便法では、法定年数を全部経過した中古なら「法定×20%」(最低2年)。例えば法定8年の厨房機器で8年落ちなら2年で償却でき、早く経費化できるのが中古の税務上のメリットです。
Q. 内装工事は何年で償却しますか?
A. 賃借物件の内装(造作)は、建物の耐用年数などを基に合理的に見積もった年数で償却し、実務では10〜15年程度で設定する例が多くみられます。電気・給排水・空調などの附属設備部分は15年など別区分です。金額が大きいので、工事見積もりの段階で内訳を分けてもらうと税務処理が正確になります。
Q. リースで導入した厨房機器も減価償却しますか?
A. 一般的な賃貸借処理のリース(レンタル含む)なら、毎月のリース料をそのまま経費にするだけで減価償却は不要です。所有権移転ファイナンスリースなど資産計上が必要な契約もありますが、個人の飲食店の実務では「リース料=経費」で処理できる契約が大半です。