飲食店版

飲食店の減価償却:耐用年数の早見表と「少額ルール」の使い分け

2026年10月3日更新 / 飲食店主向けガイド

ナビコッコ
「50万円のオーブンを買ったのに、今年の経費は6万円ちょっと?」。減価償却では、誰もが一度はここで面食らうものです。でも少額特例を知っていれば、たいていの買い物は買った年に落とせます。

減価償却は「高いものは買った年に全額経費にできず、使う年数に分けて経費化する」ルールです。飲食店は厨房機器・内装と高額資産だらけなので、ここの理解が納税額と資金繰りの読みに直結します。難しい理論は飛ばして、実務で使う部分だけを整理します。

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まず結論: 金額で3つに分かれる

10万円未満買った年に全額経費。消耗品費でOK。迷う必要なし
10万〜40万円未満青色申告なら少額減価償却資産の特例で買った年に全額経費(年間合計300万円まで。2026年3月31日までの取得分は30万円未満が基準)。白色は3年均等の一括償却資産(20万円未満)か通常償却
40万円以上通常の減価償却。耐用年数に分けて経費化。ここで下の早見表が要る

この3段構えを知っているだけで、飲食店の買い物の9割は迷わなくなります。青色申告にしておく価値の大きな部分が、実はこの少額特例です。令和8年度の税制改正で、2026年4月1日以後に取得した資産から上限が30万円未満から40万円未満に上がり、適用期限は2029年3月31日まで延びました。

飲食店の耐用年数 早見表

厨房機器(冷蔵庫・オーブン・食洗機等)8年(飲食店業用設備)が基本区分
ガスレンジ・調理器具類器具備品として5〜8年(品目により異なる)
エアコン(業務用・建物と一体でないもの)6年(器具備品)/ダクト接続の建物附属設備型は15年
内装造作(賃借物件)合理的見積もりで10〜15年程度が実務相場
電気・給排水・空調などの附属設備15年が中心
テーブル・椅子(金属製以外)5年(金属製は15年)
POSレジ・パソコン4〜5年
看板(金属製の袖看板等)3〜18年(構造・種類で大きく変わる)
軽自動車(キッチンカー等のベース)4年(新車)

※区分の当てはめは資産の実態で変わります。高額資産は税理士か税務署に確認しましょう。

計算例: 160万円のスチコンを買ったら

  • 耐用年数8年・定額法(個人事業主の原則): 160万円 ÷ 8年 = 年20万円ずつ経費化
  • 年の途中で買ったら月割り。10月購入なら初年度は20万円×3/12=5万円だけ
  • つまり、買った年の税金はあまり減りません。資金繰りを読み違えやすいのがここです。支払いは今年160万円、経費は今年5万円。この時間差を埋める知識が圧縮記帳や少額特例です

シミュレーション: 開業時の内装800万円はこう経費化される

前提内装造作600万円(15年償却)+厨房機器180万円(8年)+備品20万円(即時償却・青色)
開業年(7月開業)償却費: 600÷15×6/12+180÷8×6/12+20 = 約51万円。現金は800万円出たのに経費はこれだけ
2年目以降毎年 600÷15+180÷8 = 約62.5万円が「現金の出ない経費」として続く
教訓開業年は利益が出て見えやすい(経費化が遅い)→ 納税資金の準備を。2年目以降は償却費が返済原資の読みに使える

実務の判断フロー

  • 40万円未満に収まるか。青色なら即時償却へ。見積もりが41万円なら、値引き交渉や構成見直しで40万円未満に収める価値が実際にあります
  • セット判定に注意。「1単位」は機能する単位。椅子1脚3万円×10脚は各3万円でOKですが、システム一式・工事一式は合算で判定されがちです。見積書を機能単位で分けてもらうのが実務の知恵です
  • 中古を検討。中古は耐用年数が短く、早く経費化できます(簡便法で最短2年)。中古厨房機器の買い方とあわせて検討しましょう
  • 修繕か資本的支出か。壊れた箇所を直すのは修繕費(即経費)、価値を高める改造は資産計上。エアコンの部品交換は修繕、グレードアップ交換は資産、が大まかな感覚です。迷う修理は20万円未満なら修繕費でよいという形式基準もあり、実務の多くはここで決着します
  • 補助金で買った資産。取得価額から補助金分を圧縮できる圧縮記帳を検討しましょう(補助金と税金)。少額特例の判定も圧縮後の金額で行えるため、95万円の機器に70万円の補助なら圧縮後25万円で即時償却、という合わせ技が使えます

開業前の支出との区別

  • 開業前に払った家賃・研修・チラシなどは開業費(繰延資産)として、好きな年に好きなだけ償却できる特殊な区分です
  • ただし10万円以上の設備・内装は開業費に入らず、通常の減価償却資産になります。「開業前に買ったから全部開業費」というのは、よくある誤解です

減価償却と資金繰り: 「現金の出ない経費」の意味

  • 償却費は支払いが済んだ後に計上され続ける経費です。つまり2年目以降の償却費は「現金は出ていないのに利益を減らしてくれる」ものです。ここから減価償却費÷12=毎月の返済に回せる隠れ原資という見方ができます
  • 例: 償却費が年60万円・税引後利益が年100万円の店なら、現金ベースの返済余力は約160万円。融資の面談で「償却前利益」が問われるのはこのためです
  • 逆に開業年は「現金は大量に出たのに経費は少ししか立たない」ため、利益が出て見えるのに現金がない状態になりがちです。納税資金の確保を忘れないようにしましょう

忘れた頃に来る「償却資産税」

  • 厨房機器・内装造作などの事業用資産は、固定資産税の一種である償却資産税(税率1.4%)の申告対象です。毎年1月に市区町村へ申告し、課税標準の合計150万円未満なら免税
  • 小さな店は免税枠に収まることが多いものの、申告自体は必要です。会計ソフトの固定資産台帳から申告書類をほぼ自動で作れるので、1月のタスクとしてカレンダーに入れておきましょう

使わなくなった・壊れた資産の処理(除却・売却)

  • 廃棄したとき。帳簿に残っている金額(未償却残高)を「固定資産除却損」として一括経費化できます。壊れたオーブンを帳簿に載せたまま償却し続けるのは損です。廃棄の証拠(処分業者の伝票・写真)を残して、経費に落としましょう
  • 売却したとき。売却額と帳簿価額の差が譲渡損益になります(個人事業主は事業所得でなく譲渡所得の区分)。中古厨房機器の買取は業者間で価格差が大きいので、2社から見積もりを取るのが基本です
  • 補助金で買った設備。処分制限期間内の売却・廃棄は事務局の承認が先です。勝手に売ると返還問題になります(補助金の仕訳ガイド参照)

中古で買った資産の耐用年数:簡便法で早く償却できる

飲食店は中古機器の活用が多い業態なので、これは知っていると得な計算です。中古資産は「法定耐用年数−経過年数+経過年数×20%」(端数切り捨て・最短2年)で償却期間を縮められます。

  • 例:法定耐用年数8年の厨房機器を、製造から6年経過の中古で40万円で購入 → (8−6)+6×0.2=3.2年 → 3年で償却
  • 法定年数を全部経過した中古(8年落ち以上)なら 8×0.2=1.6 → 最短の2年。新品の8年に比べ、経費化のスピードが4倍です
  • 中古の出回りが多いデッキオーブン・冷蔵庫・製氷機は、この計算をよく使う品目です。「中古は補助金対象外」という弱点を、償却の速さがある程度取り返す形になっています

修繕費か、資本的支出か:迷ったらこの基準

  • 修繕費(その年の経費)。壊れた機能の回復・維持。エアコンの部品交換、冷蔵庫の修理、床の張り替え(同等品)
  • 資本的支出(資産計上→減価償却)。価値や耐久性を高める支出。エアコンの上位機種への交換、客席の増設、間取り変更を伴う改装
  • 実務の目安。1件20万円未満か、おおむね3年以内の周期で行う修理なら修繕費でOKです。修繕費か資本的支出か判断がつかない金額は、60万円未満、または修理する資産の前年12月31日時点(法人は前期末)の取得価額のおおむね10%以下なら、修繕費として処理できます。金額が大きい修繕は、請求書の名目だけで判断せず税理士に確認しましょう

帳簿づけを楽にする

  • 会計ソフトの固定資産台帳に登録すれば、毎年の償却費は自動計算・自動仕訳されます。手計算が要るのは、購入時の区分判断だけです
  • 補助金で買った資産は圧縮記帳を検討しましょう。取得価額が変わるので登録前に判断するのが正しい順序です

参考・出典

実は、この悩みには公的なお金が使えます。厨房機器・内装などの設備投資には、そもそも補助金が使える場合があります。いま募集中は172件(毎朝自動更新)。あなたの店の該当分を10秒で診断 →

開業に使える制度は、どの地域に多いか

2026年10月19日時点で該当する235件を地域別に数えました。うち全国対象が31件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている165件で見ると、中央値は200万円、最大は10億円です。下から4分の1は60万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切は中小企業等グループ補助金(東日本大震災)についての2026年10月23日(あと4日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

よくある質問

Q. 10万円未満のものは全部その年の経費にできますか?

A. はい。取得価額10万円未満(青色申告なら40万円未満の少額特例も利用可・年間合計300万円まで。2026年3月31日までに取得したものは30万円未満が基準)は、購入した年にまとめて経費にできます。「1単位」の判定は通常1セットで機能するもの単位で、例えばテーブルと椅子のセット販売なら合計額で判定される点に注意しましょう。

Q. 中古の厨房機器を買った場合の耐用年数は?

A. 中古は法定耐用年数より短い「見積耐用年数」が使えます。簡便法では、法定年数を全部経過した中古なら「法定×20%」(最低2年)。例えば法定8年の厨房機器で8年落ちなら2年で償却でき、早く経費化できるのが中古の税務上のメリットです。

Q. 内装工事は何年で償却しますか?

A. 賃借物件の内装(造作)は、建物の耐用年数などを基に合理的に見積もった年数で償却し、実務では10〜15年程度で設定する例が多くみられます。電気・給排水・空調などの附属設備部分は15年など別区分です。金額が大きいので、工事見積もりの段階で内訳を分けてもらうと税務処理が正確になります。

Q. リースで導入した厨房機器も減価償却しますか?

A. 一般的な賃貸借処理のリース(レンタル含む)なら、毎月のリース料をそのまま経費にするだけで減価償却は不要です。所有権移転ファイナンスリースなど資産計上が必要な契約もありますが、個人の飲食店の実務では「リース料=経費」で処理できる契約が大半です。

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公開 2026年7月21日 / 最終更新 2026年10月3日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源

更新履歴(1件)
  • 青色申告の少額減価償却資産の特例を2026年4月以後の取得分は40万円未満に更新、修繕費の判定基準を国税庁の基準に合わせて修正、参考・出典を追加
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