飲食店版

飲食店の確定申告:青色申告で損しない

2026年7月19日更新 / 飲食店主向けガイド

ナビコッコ
申告の勝負は3月ではなく毎月の記帳。月1回のレシート整理を習慣にできたら、確定申告は怖くありません。

確定申告は「年に一度の苦行」と思われがちですが、実態は日々の記帳の集計結果を書き写すだけの作業です。つまり勝負は3月ではなく毎月の記帳にあり、そして記帳の仕組み化は節税・融資・補助金のすべての土台になります。

青色申告を選ぶ:数字で見るメリット

メリット内容インパクトの例
特別控除 最大65万円複式簿記+e-Tax(または電子帳簿保存)で65万円、紙提出だと55万円、簡易簿記は10万円所得税・住民税・国保を合わせ、年10万〜20万円規模の負担減になることも
赤字の3年繰越開業初年度の赤字を翌年以降の黒字と相殺開業年に赤字が出やすい飲食店と特に相性が良い
専従者給与手伝う家族への給与を経費にできる(事前届出制)夫婦経営の店の定番節税
少額減価償却の特例30万円未満の設備を一括経費化(年間合計の上限あり)冷蔵庫・調理機器の買い替えで有効

条件は「開業から2ヶ月以内(または3月15日まで)に青色申告承認申請書を出すこと」。開業届とセットで出すのが定石です。出し忘れるとその年は白色確定——開業時の書類1枚が数十万円の差になります

飲食店の記帳:つまずきポイントは3つだけ

  • 現金売上の記録 — 記帳の8割は口座・カード連携で自動化できますが、現金売上だけは手入力が必要です。レジ締めの日計をその場でソフトに入れる(または週1でまとめ入力)仕組みを作れば解決します。POSレジなら会計ソフト連携で自動化可能
  • レシート・領収書の保管 — 月別の封筒かスマホ撮影(電子帳簿保存のルールに沿って)で。「後でまとめて」が挫折の入口なので、財布に入れない・その日のうちに箱へ、の物理ルールが効きます
  • 事業とプライベートの分離 — 事業用の口座とクレジットカードを分けるだけで、記帳の手間と税務調査時の説明コストが激減します。開業時に必ずやってください

家事按分:自宅・車を使う店主のルール

自宅の一部を事務作業や仕込みに使う、車を仕入れと私用の両方に使う——この場合、事業で使う割合分だけ経費にできます。ポイントは根拠です:

  • 家賃・光熱費 — 使用面積や使用時間の割合で按分。「なんとなく5割」ではなく「全体60㎡のうち事務スペース12㎡=20%」のように説明できる基準を決めて、メモを残す
  • 車両費・ガソリン代 — 走行距離や使用日数の割合。仕入れに使った日を記録しておくと按分の根拠になります
  • 一度決めた基準は毎年一貫して使うこと。年ごとにころころ変わる按分は税務調査で突かれます

経費になる・ならない:飲食店の定番判断

支出判断備考
試作・メニュー研究の食材研究目的の記録(日付・目的メモ)を残す
他店の視察を兼ねた飲食視察目的・同行者・気づきの記録があれば研究費等の余地。単なる外食は不可
事業主本人の毎日の食事×生活費。従業員のまかないとは区別する
コックコート・店の制服私服として使えるものは不可
店で流す音楽のサブスク・新聞雑誌店舗利用の実態があること
商工会議所の会費・業界団体費諸会費

迷ったときの基準は一つ——「この支出は売上を作るために必要だったと、他人に説明できるか」。説明できるなら経費として記録し、根拠のメモを残す。この習慣が最強の税務調査対策です。

年間スケジュールに落とす

  • 毎月 — 記帳(現金売上の入力・レシート整理)。月次の売上・粗利を見る習慣とセットに
  • 12月 — 棚卸し(在庫の数量と金額の記録)。飲食店の申告で漏れやすい必須作業です
  • 2〜3月 — 申告書の作成・提出。青色申告会・税務署の無料相談が混む前の2月前半着手が快適です
  • 補助金をもらった年は収入計上と圧縮記帳の検討を——詳しくは補助金の税金ガイド

開業費:開業前の支出も経費にできる

開業準備で使ったお金——物件探しの交通費、市場調査の飲食、開業前の研修、チラシの先行制作——は「開業費」という繰延資産として計上でき、開業後に任意のタイミングで償却(経費化)できます。実務ポイント:

  • 領収書は開業を思い立った日から全部保管開業ガイドでも触れた通り)。数十万円分になることも珍しくありません
  • 「任意償却」が強い — 黒字になった年にまとめて経費化する、といった調整ができます。赤字の初年度に無理に使わず、取っておくのが定石です
  • 設備・内装など10万円以上の資産は開業費ではなく固定資産(減価償却)として扱います。ここの仕分けは会計ソフトの勘定科目ガイドか無料相談で確認を

棚卸し:飲食店の申告で一番漏れる作業

年末(12月31日)時点の在庫——食材・酒・包材——は、その年の経費から除いて資産に計上します。やり方は素朴で構いません:

  1. 大晦日の営業後(または1月1日)に、冷蔵庫・倉庫の在庫を数える
  2. 仕入れ値ベースで金額をつけ、一覧表にする(スマホ写真+メモでも可)
  3. 会計ソフトの棚卸し機能に入力

在庫の多い業態(酒の在庫が厚い店など)ほど影響が大きく、棚卸しゼロの申告は税務調査で真っ先に見られるポイントです。年に一度、30分の作業として年末の仕事に組み込んでください。

消費税の免税点:売上1,000万円の意味

基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります(インボイス登録をしていなくても)。つまり売上が伸びてきた店は、2年後の消費税納税が自動的に視野に入るということ。1,000万円を超えた年は、①2年後からの納税を資金計画に入れる、②簡易課税の選択を検討する、③インボイス登録の判断を再点検する——の3点セットで動いてください。

税務調査を過度に恐れない:見られるのはここ

  • 売上の計上漏れ — 現金売上の記録が最重要。レジの日計と帳簿の一致が基本です
  • 棚卸しの有無 — 前述の通り
  • 家事按分の根拠 — 基準の説明ができれば問題ありません
  • 架空経費・私的支出 — 「説明できるか」基準で日頃から記録していれば恐れる必要なし

要するに、このページに書いた基本を毎月やっている店にとって、税務調査は怖いものではありません。記帳の仕組み化は、節税であり、融資・補助金の武器であり、調査対策でもある——三方良しの投資です。

納税は所得税だけじゃない:1年の支払いカレンダー

申告を終えても、納税イベントは1年に分散して続きます。初年度に「こんなに来るのか」と慌てないための一覧:

時期支払い備考
3月所得税(+消費税があれば)確定申告と同時。振替納税にすれば引き落としは4月
6月〜住民税(年4回分割)前年所得に課税。「儲かった翌年に来る」ことを忘れずに
6月・8月頃〜国民健康保険(分割)これも前年所得ベース。所得が増えた翌年は跳ねます
8月・11月個人事業税(該当する場合)飲食店業は法定業種。事業所得290万円超の部分に課税
7月・11月予定納税(該当する場合)前年の所得税が一定額を超えると前払い制度が発動します

実務の対策はひとつ——月次で「利益の3割」を納税用口座に移す。これだけで納税イベントのすべてが「準備済みの支払い」に変わります。

e-Taxで65万円控除を取る最短ルート

  1. マイナンバーカード+スマホがあれば、税務署に行かずに始められます(カード読み取りでログイン)
  2. 会計ソフトから申告データを出力し、ソフトの連携機能またはe-Tax画面で送信——主要な会計ソフトは「そのままe-Tax」まで一気通貫です
  3. 初回だけ利用者識別番号の取得等の初期設定に30分ほど見ておく。2年目からは1時間かからず完了します

紙提出だと控除が55万円に下がるので、e-Tax化は「30分の初期設定で毎年10万円の控除差を取り続ける」投資です。やらない理由がありません。

よくある質問

Q. 青色申告と白色申告、どちらがいいですか?

A. ほぼすべての場合で青色申告が有利です。最大65万円の特別控除、赤字の3年繰越、家族への給与(専従者給与)の経費化など、白色にはないメリットが揃います。事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要な点だけ注意してください。

Q. 記帳は自分でできますか?

A. 会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても銀行口座・カード連携で大部分が自動化できます。現金商売の売上入力とレシート整理の習慣化が実質的なハードルで、月1回まとめてやる仕組みを作れば自走できます。

Q. まかないは経費になりますか?

A. 従業員へのまかないは条件を満たせば福利厚生費等で処理できますが、事業主本人の食事は原則経費になりません。自分の食事と試作・研究のための調理は区別して記録しましょう。

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