小規模事業者とは:従業員の「数え方」で対象が決まる
補助金の世界には「小規模事業者の方が対象です」という案内が頻繁に出てきます。このとき、頭の中で店のシフト表を思い浮かべて「うちは6人いるからダメか」と閉じた方——その数え方、たぶん間違っています。定義上の従業員数は、シフト表の人数ではありません。数え方のルールを知るだけで、対象の棚が変わる。この記事はその1点に絞って解説します。
定義の本体: 業種で違う人数の線
| 商業・サービス業 | 常時使用する従業員5人以下。飲食店はここです |
|---|---|
| 宿泊業・娯楽業 | 20人以下の特例。旅館・ホテルはこちら |
| 製造業その他 | 20人以下。製造小売(パン製造販売など)は扱いが分かれるため要確認 |
線引きの目的は、支援を小さな商いに厚く届けることです。だから数えるのは頭数ではなく「常時使用する従業員」——ここに解釈のルールがあります。
数え方: 入れる人・入れない人
- 入れない(代表例) — ①個人事業主本人②会社役員(従業員兼務でない役員)③個人事業主と同居の親族従業員④産休・育休・介護休業中の人⑤日々雇用や2ヶ月以内の期間雇用など、労働基準法上の解雇予告が不要な範囲の人
- パートタイマー — 所定労働時間が通常の従業員よりおおむね短い(目安として4分の3以下)人は算入しない整理が、持続化補助金の公式手引きで示されています。週20時間のホールバイトは、頭数には見えても定義上は入らない可能性が高いわけです
- 入れる — フルタイムの正社員、正社員並みの時間で働く長期パート。ここは素直にカウントします
- 法人の場合の注意 — 代表取締役は役員として除外ですが、役員でも従業員としての労働実態がある兼務役員は扱いが分かれます。家族経営の法人(妻が取締役兼ホール担当など)は、まさにこの論点の上に立っているので手引きの確認を優先しましょう
- この整理は制度ごとに微妙な差があり得ます。境界線上の店は「誰を除外したか」のメモを作り、商工会議所か事務局に確認——これが唯一の安全策です
計算例: シフト表12人の店が「従業員2人」になる
- ある個人経営の居酒屋。店主+妻(同居親族)+正社員2人+週2〜3日のアルバイト8人、シフト表の登場人物は12人です
- 定義で数え直すと: 店主(除外)+妻(除外)+正社員2人(算入)+短時間バイト8人(除外の可能性大)=常時使用する従業員2人
- 結果、この店は小規模事業者として持続化補助金の土俵に立てます。補助上限50万円・補助率2/3——「6人以上いるから」で閉じていたら、この50万円は存在しないままでした
- この数え直しは1回やれば終わりではありません。人の出入りがある店なら、公募のたびに5分で更新する「従業員数メモ」を持ちましょう。日付入りのメモは、後日の確認や検査でもそのまま根拠資料になります
- 逆パターンもあります。フルタイム5人+長期フルタイム格のパート1人なら6人算入で対象外の可能性。感覚でセーフと思い込むのも危険で、やはり数えた根拠が要ります
境界線の実務: 増員・法人化・みなし大企業
- 6人目を雇うと即アウト? — 「常時使用」の判定なので、繁忙期の短期増員で直ちに外れるものではありません。ただしフルタイム6人体制が常態化すれば定義から出ます。増員計画と申請時期の順番は意識しましょう
- 申請後に超えたら? — 判定は原則申請時点ですが、制度により基準日の定めがあります。採用計画がある店は公募要領の対象者の章で基準日を確認しておくと安心です
- みなし大企業 — 大企業が一定以上出資する会社は、人数が少なくても対象外になる規定です。個人経営の飲食店にはほぼ無縁ですが、FC本部の資本が入る形態は要確認。詳しくは用語集で30秒だけ触れています
- 法人でも個人でもOK — 小規模事業者の定義に法人・個人の別はありません。開業したての個人事業主でも、開業届が出ていれば土俵に立てます
境界ケース早見表: この人は数える?
| 週2日・1日4時間のホールバイト | 算入しない可能性大(短時間パートの整理) |
|---|---|
| フルタイム勤務の長女(店主と同居) | 同居親族従業員として算入しない整理が一般的 |
| フルタイム勤務の長女(別居・給与制) | 算入する方向で考える(同居親族の除外に当たらない) |
| 育休中の正社員 | 休業中は算入しない整理 |
| 2ヶ月契約の夏季限定スタッフ | 算入しない(短期の期間雇用) |
| 役員と従業員を兼務して現場にも立つ取締役 | 制度の手引きで要確認(兼務役員は扱いが分かれる論点) |
表はあくまで一般的な整理です。境界の1人で当落が変わる局面では、必ず制度の手引き・事務局で確認しましょう。確認の電話は5分、間違えた申請のやり直しは1公募分(数ヶ月)です。
5人を超えている店へ: 棚が変わるだけ
- 小規模の線を超えても、中小企業向けの棚は丸ごと使えます。IT導入補助金、業務改善助成金、キャリアアップ助成金、ものづくり補助金——むしろ雇用系の助成金は従業員がいてこそ使える制度群です
- 従業員数で入口が変わる代表例を並べると: 5人以下=持続化補助金が本命/6〜20人=IT導入・雇用系が主戦場/21人〜=省力化・人材投資の比重が上がる、という地図になります
- 当サイトの10秒診断は従業員数を聞いてから制度を絞り込みます。自分の棚を最短で知りたい方はそちらへ
開業前・創業直後の扱い
- 開業準備中 — 従業員ゼロでも、開業届が出ていなければそもそも事業者でないため、多くの補助金の土俵に乗れません。先に開業届、が順番です
- 創業1年目 — 従業員のいない一人経営は、定義上まっさらな小規模事業者です。創業枠・創業加点を持つ制度もあり、実は制度的に恵まれた時期。開業ガイドで時期別の使い方を整理しています
- これから雇う計画がある — 申請時点の従業員数で判定されるのが原則なので、「採用後は5人を超える」計画でも申請時5人以下なら小規模者向け制度の対象になり得ます。逆に雇用系助成金は雇ってからが本番——時系列の設計で両取りできます
よくある誤解
- 「シフト表の人数=従業員数」 — と思っていませんか。定義上の従業員数は、本人・家族・役員・短時間パート・休業中の人を除いた数です。飲食店では体感の半分以下になることも珍しくありません
- 「小規模事業者は零細で恥ずかしい区分」 — 逆です。この区分は補助率・上限・専用枠で優遇される持てる側の資格で、5人以下の期間は制度上のボーナスタイムと考えるべきです。使えるうちに使いましょう
- 「一度対象外になったら戻れない」 — 従業員数は変動します。退職や体制変更で定義内に戻れば、また小規模者向け制度の対象です。毎年の申請シーズンに数え直す価値があります
数え直しチェックリスト
- ☐ 店主本人・同居親族・役員を除外して数えたか
- ☐ 短時間パート・アルバイトの労働時間を確認したか(おおむね4分の3以下は除外の整理)
- ☐ 産休・育休・介護休業中の人を除外したか
- ☐ 誰を算入・除外したかのメモを残したか
- ☐ 境界線上の場合、商工会議所か事務局に確認したか
- ☐ 自分の従業員数で使える制度の棚(小規模限定/中小企業向け)を把握したか
結論。小規模事業者かどうかは、シフト表ではなく定義で数えた1枚のメモで決まります。数え直しにかかる時間は15分。その15分で50万円の土俵が開くかもしれないなら、今夜の締め作業の後にやる価値は十分にあります。
小規模事業者とはに使える制度は、どの地域に多いか
2026年9月3日時点で該当する15件を地域別に数えました。うち全国対象が1件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。
| 都道府県 | 該当する制度 | その地域の一覧 |
|---|---|---|
| 東京都 | 3件 | 東京都の飲食店向け制度 |
| 埼玉県 | 2件 | 埼玉県の飲食店向け制度 |
| 福井県 | 2件 | 福井県の飲食店向け制度 |
| 福岡県 | 1件 | 福岡県の飲食店向け制度 |
| 岐阜県 | 1件 | 岐阜県の飲食店向け制度 |
| 茨城県 | 1件 | 茨城県の飲食店向け制度 |
| 滋賀県 | 1件 | 滋賀県の飲食店向け制度 |
| 鹿児島県 | 1件 | 鹿児島県の飲食店向け制度 |
| 沖縄県 | 1件 | 沖縄県の飲食店向け制度 |
| 福島県 | 1件 | 福島県の飲食店向け制度 |
上限額が公表されている12件で見ると、中央値は45万円、最大は600万円です。下から4分の1は12万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。
直近の締切は令和8年度 中小企業従業員等奨学金返還支援補助金の2026年11月30日(あと88日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。
よくある質問
Q. 小規模事業者の定義は何ですか?
A. 中小企業基本法にもとづく区分で、商業・サービス業は常時使用する従業員5人以下、製造業その他は20人以下(宿泊業・娯楽業は20人以下の特例)です。飲食店は商業・サービス業に当たるため、基本は5人以下。持続化補助金など「小規模事業者向け」制度の入口となる線引きです。
Q. パート・アルバイトは従業員数に入りますか?
A. 一律には入りません。鍵は「常時使用する」の解釈で、持続化補助金の公式手引きの整理では、所定労働時間が正社員よりおおむね短いパートタイマーや、日々雇用・2ヶ月以内の期間雇用などは算入しない扱いが示されています。バイト中心の飲食店は、正社員換算で数え直すと5人以下に収まることが多いのです。
Q. 店主本人や家族は数えますか?
A. 個人事業主本人は従業員に数えません。同居親族の従業員や、会社の役員(兼務役員を除く)も算入しない整理が一般的です。夫婦と子で回す家族経営の店なら、従業員ゼロとして扱われる可能性が高いということです。
Q. 5人を超えたら補助金は使えませんか?
A. 小規模事業者「限定」の制度が使えなくなるだけで、中小企業向けの制度(IT導入補助金・業務改善助成金・雇用系助成金など)は引き続き対象です。むしろ雇用系は従業員がいるほど使い道が増えます。自分がどの棚の前に立っているかを知るのが本題です。
Q. 申請のとき従業員数はどう証明しますか?
A. 申請書の自己申告が基本ですが、労働者名簿・雇用契約書・賃金台帳と整合している必要があります。実績報告や検査で確認されることもあるため、境界線上の場合は数えた根拠(誰を算入し誰を除外したか)をメモに残し、迷ったら事務局か商工会議所に確認しましょう。