飲食店の開業届: いつ・どこに・どう出すか(営業許可との違いから)
開業届は書類自体は10分で書ける簡単なものです。しかし周辺の期限、特に青色申告承認申請の「開業から2ヶ月」を知らずに出し遅れると、初年度の税金で10万円単位の差がつきます。飲食店特有の「保健所との混同」も含めて、全体地図を示します。
まず全体地図: 飲食店開業の届出は3系統
| 保健所(都道府県等) | 飲食店営業許可。これがないと営業できない本丸。施設検査あり・手数料1.6〜2万円前後 |
|---|---|
| 税務署(国) | 開業届+青色申告承認申請。無料・罰則なし・でも金銭メリット大。このページの主役 |
| その他 | 従業員を雇うなら労働保険・(給与支払事務所の届出)、深夜酒類提供なら警察署。開業ガイドに時系列でまとめています |
開業届の基本情報
- 正式名: 個人事業の開業・廃業等届出書 / 提出先: 納税地(原則自宅住所)を管轄する税務署
- 期限: 国税庁の現在の案内では「開業した年分の所得税の確定申告期限まで」です。「開業から1ヶ月以内」と書いた解説も残っていますが、いまの期限は確定申告期限で、過ぎても罰則はありません
- 出し方: 窓口・郵送・e-Tax。マイナンバーカードがあればスマホ+freee開業などの無料ソフトで自宅から10分が最速ルートです
- 控えを必ず保管。屋号口座の開設・保育園の就労証明・給付金や融資の申請で「開業届の控え」の提出を求められる場面が何度もあります。e-Taxなら受信通知が控え代わりになります
セットで出す書類一覧:窓口1回で全部終わらせる
| 開業届 | 開業した年分の確定申告期限まで(過ぎても罰則なし)。全員が対象 |
|---|---|
| 青色申告承認申請書 | 開業から2ヶ月以内(厳守)。65万円控除の入口 |
| 青色事業専従者給与の届出 | 家族に給与を払うなら。開業年は開業から2ヶ月以内 |
| 給与支払事務所等の開設届 | スタッフを雇うなら1ヶ月以内。源泉徴収の入口 |
| 源泉所得税の納期の特例申請 | 従業員10人未満なら、毎月納付→年2回にまとめられる。事務負担が激減するので雇う店はセットで |
この5枚は様式こそ別ですが、書く内容の多くは同じです(住所・氏名・屋号・開業日)。1回の窓口訪問か、e-Taxの1回の手続きでまとめて出しましょう。freee開業などの無料ソフトは、質問に答えると必要な書類だけ自動で揃えてくれます。
書き方でつまずく3箇所だけ解説
- 職業欄。「飲食業」「飲食店経営」で構いません。細かく書く必要はありません。この欄は個人事業税の業種判定に使われ、飲食店業は第1種事業(税率5%)です。事業主控除が年290万円あるので、課税されるのは所得が290万円を超えた部分です
- 屋号。店名を書くのが基本ですが、空欄でも出せます。ただし屋号つき銀行口座を作るなら記入が必要で、ここに書いた名前が口座名義の基準になります。後から変えることもできる(確定申告書に新屋号を書けばよい)ので、屋号が決まらないことを提出が遅れる理由にしないでください
- 開業日。FAQの通り自分で決められます。青色申請の2ヶ月を数える起点になるので、開業日を書いたら、その場で青色の締切をカレンダーに入れましょう。開業日前の支出は開業費にできるので、物件契約からオープンまでの準備費用をまとめて開業費にする組み立てが定石です
本当の締切はこっち: 青色申告承認申請(開業から2ヶ月)
- 開業届とセットで青色申告承認申請書を出すと、複式簿記+e-Taxで最大65万円の所得控除(令和9年分からは最大75万円)・赤字の3年繰越・家族への給与(専従者給与)・取得価額40万円未満の設備を買った年に全額経費にする特例(少額減価償却資産の特例。年300万円まで。2026年3月までの取得分は30万円未満。減価償却ガイド)が使えます
- 青色申告特別控除の区分は令和9年分(2027年分)から変わります。令和8年分までは、複式簿記で記帳し、e-Taxで申告するか帳簿を電子帳簿保存すれば65万円、複式簿記でも書面で申告すれば55万円、どちらにも当たらなければ10万円です。令和9年分からは65万円控除にe-Taxでの申告が必須になり、書面申告の控除は上限10万円になります(55万円の区分はなくなります)。65万円の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存かデジタルシームレス保存をして届出書を確定申告期限までに出すと、最高75万円です。2026年中に開業した人は、初年度の令和8年分は今の区分で、翌年分から新しい区分で申告することになります
- 期限は開業日から2ヶ月以内(1/1〜1/15開業はその年の3/15まで)。これを逃すと初年度は白色確定で、開業赤字の繰越もできません。開業初年度は赤字になりやすい飲食店にとって、繰越が使えないことの実害は大きくなります
- 結論としては、開業届と青色申請を同じ日に2枚セットで出しましょう。分ける理由がありません
残りの欄の書き方: 所得の種類と簿記方式
| 所得の種類 | 事業所得 |
|---|---|
| 青色申請書側の簿記方式 | 「複式簿記」「備付帳簿: 総勘定元帳・仕訳帳」等にチェック(65万円控除の要件の1つ。ほかにe-Taxでの申告などが必要で、令和9年分からはe-Taxが必須)。会計ソフトを使えば自動的に満たせます |
出すと得すること(まとめ)
- 青色申告の税メリット。65万円控除だけで、所得税+住民税で年10万円前後の節税になります(所得による)。令和9年分からは、書面で申告すると控除は10万円までなので、e-Taxで出しましょう
- 屋号つき口座・キャッシュレス加盟審査。事業が実在することの証明として、控えが役立ちます
- 補助金・融資の前提書類。創業融資の申請で、事業開始の証明として求められることが多い書類です。持続化補助金の創業型では、個人事業主は開業届の写しの提出が必須です
- 就労証明。保育園申請などで、自営業の就労を証明する基礎資料になります
よくある誤解の整理
- 「開業届を出すと扶養から外れる」。税の扶養は所得金額で決まり、届の有無は関係ありません。社会保険の扶養は健保組合の基準次第で、「自営業者は不可」の組合もあるため、配偶者の健保の規定を確認しましょう
- 「失業保険をもらいながら準備してよい」。開業届を出す(=事業開始)と受給資格に影響します。再就職手当への切り替え等は、ハローワークに事前に確認しましょう
- 「法人でも開業届」。法人は別の手続きです(設立届出書ほか)。このページは個人事業主向けです
「開業費」を使い倒す: 開業日前の支出の集め方
- 開業日前に払った市場調査の交通費・食べ歩き(研究目的)・セミナー代・打ち合わせ費・チラシ・名刺・許可取得の講習費などは開業費(繰延資産)にできます
- 開業費は好きな年に好きな額だけ償却できる特殊な資産です。開業1〜2年目の赤字期は温存し、黒字化した年にまとめて経費にする、という税負担の平準化が合法的にできます
- だから開業準備中は領収書を全部取っておきましょう。「これ経費になるの?」と迷ったものも、捨てずに封筒へ入れておきましょう。判断は申告時で構いません
- 注意: 開業費に入らないものが2種類あります。1つは10万円以上の設備・内装で、固定資産として減価償却します(青色申告なら40万円未満は少額減価償却資産の特例で一括経費にできます。2026年3月までの取得分は30万円未満)。もう1つは食材や商品の仕入れで、金額に関係なく棚卸資産として売上原価で処理します(減価償却ガイド参照)
提出したら次にやること5点
| ① 屋号つき口座 | 控えを持ってネット銀行が早い。事業と生活のお金を分けると記帳がずっと楽になる |
|---|---|
| ② 事業用クレジットカード | 会計ソフト連携で経費が自動記帳に。個人カードとの混用が帳簿地獄の入口 |
| ③ 会計ソフト | 開業直後の取引が少ないうちに設定。青色65万円控除の複式簿記はソフト前提で考える |
| ④ インボイス登録の判断 | 取引先に事業者が多いか・課税事業者になるべきかの検討(インボイスガイド) |
| ⑤ 補助金の確認 | 持続化補助金の創業型(上限200万円・補助率2/3)は、開業届の開業日と、市区町村の特定創業支援等事業で支援を受けた日が、どちらも公募締切から過去1年以内であることが条件です(一般型との同時申請はできません)。自治体の創業支援も開業からの年数が浅いほど有利。業態別の開業ガイドと診断でチェック |
10分で終わらせる最短ルート
- ① freee開業などの無料作成ソフトで質問に答える(5分)→ ② 開業届+青色申請の2枚が自動生成 → ③ e-Taxで送信、または印刷して郵送(控えと返信用封筒を同封)
- 手書き派は国税庁サイトのPDFに直接入力しても構いません。どの方法でも費用は0円です。行政書士等への依頼が必要な書類ではありません
参考・出典
開業に使える制度は、どの地域に多いか
2026年10月19日時点で該当する267件を地域別に数えました。うち全国対象が36件で、これはどの地域の飲食店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。
| 都道府県 | 該当する制度 | その地域の一覧 |
|---|---|---|
| 東京都 | 27件 | 東京都の飲食店向け制度 |
| 福岡県 | 15件 | 福岡県の飲食店向け制度 |
| 北海道 | 14件 | 北海道の飲食店向け制度 |
| 熊本県 | 12件 | 熊本県の飲食店向け制度 |
| 福島県 | 8件 | 福島県の飲食店向け制度 |
| 徳島県 | 8件 | 徳島県の飲食店向け制度 |
| 埼玉県 | 8件 | 埼玉県の飲食店向け制度 |
| 新潟県 | 7件 | 新潟県の飲食店向け制度 |
| 長野県 | 7件 | 長野県の飲食店向け制度 |
| 佐賀県 | 6件 | 佐賀県の飲食店向け制度 |
上限額が公表されている196件で見ると、中央値は150万円、最大は10億円です。下から4分の1は50万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。
直近の締切は中小企業等グループ補助金(東日本大震災)についての2026年10月23日(あと4日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。
よくある質問
Q. 開業届を出さないと罰則がありますか?
A. 罰則はありません。出さなくても営業も確定申告もできます。ただし青色申告(65万円控除・赤字繰越)には開業届+青色申告承認申請が必須で、屋号つき銀行口座の開設や各種証明にも使うため、実務上は出さない理由がない書類です。
Q. 開業届と保健所の営業許可は何が違うのですか?
A. 全くの別物です。保健所の飲食店営業許可は「営業してよい」という許可で、これがないと営業できません。開業届は税務署への「事業を始めました」という通知で、営業の可否とは無関係です。飲食店は両方必要で、窓口も書類も別です。
Q. 開業日はいつにすればいいですか?
A. 厳密な決まりはなく、店舗のオープン日・準備を始めた日など合理的な日を自分で決められます。開業日より前の支出は「開業費」として計上できるため、開業日を遅めに設定して準備費用を開業費にまとめるのが実務では一般的です。青色申請の期限(開業日から2ヶ月)の起点になる点だけ注意しましょう。
Q. 会社員のまま週末だけ営業する場合も開業届は出せますか?
A. 出せます。副業でも反復継続する事業なら開業届・青色申告は利用できます(事業所得か雑所得かの規模判断はありますが、店舗を構える飲食業なら事業所得が基本)。なお勤務先の副業規定と、住民税の通知経路(普通徴収の選択)は事前に確認しておくと安心です。
Q. 配偶者に店を手伝ってもらう場合、何か届出は必要ですか?
A. 青色申告なら「青色事業専従者給与に関する届出書」を出すと、生計を一にする家族への給与を経費にできます。期限は原則その年の3月15日(開業年は開業から2ヶ月以内)で、開業届・青色申請と同時に出すのが定石です。
Q. 開業届の控えをなくしてしまいました。再発行できますか?
A. 税務署で「保有個人情報の開示請求」(手数料300円・数週間)により写しを取得できます。e-Tax提出なら受信通知+申告データの組み合わせが控えとして通用します。融資や各種申請で急に必要になる書類なので、受け取ったらすぐスマホで撮影し、クラウドに保存しておきましょう。
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公開 2026年7月21日 / 最終更新 2026年10月4日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源
更新履歴(2件)
- 持続化補助金の創業型(上限200万円)で開業日と支援を受けた日が締切から1年以内という要件と、開業届の写しが必須である点を追記、参考・出典を追加
- 開業届の提出期限を「開業から1ヶ月以内」から「開業した年の確定申告期限まで」に修正、少額減価償却資産の特例を40万円未満に更新、参考・出典を追加
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