飲食店版

飲食店の開業届: いつ・どこに・どう出すか(営業許可との違いから)

2026年7月24日更新 / 飲食店主向けガイド

ナビコッコ
開業届で一番多い誤解は「出さないと営業できない」。できます。本当の締切は開業届じゃなく、青色申告承認申請の「2ヶ月」。ここを逃すと初年度の65万円控除が消えます。

開業届は書類自体は10分で書ける簡単なものです。しかし周辺の期限——特に青色申告承認申請の「開業から2ヶ月」——を知らずに出し遅れると、初年度の税金で数十万円レベルの差がつきます。飲食店特有の「保健所との混同」も含めて、全体地図を示します。

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まず全体地図: 飲食店開業の届出は3系統

保健所(都道府県等)飲食店営業許可。これがないと営業できない本丸。施設検査あり・手数料1.6〜2万円前後
税務署(国)開業届+青色申告承認申請。無料・罰則なし・でも金銭メリット大。このページの主役
その他従業員を雇うなら労働保険・(給与支払事務所の届出)、深夜酒類提供なら警察署。開業ガイドに時系列でまとめています

開業届の基本情報

  • 正式名: 個人事業の開業・廃業等届出書 / 提出先: 納税地(原則自宅住所)を管轄する税務署
  • 期限: 開業日から1ヶ月以内(過ぎても罰則なし・受け付けてもらえます)
  • 出し方: 窓口・郵送・e-Tax。マイナンバーカードがあればスマホ+freee開業などの無料ソフトで自宅から10分が最速ルートです
  • 控えを必ず保管 — 屋号口座の開設・保育園の就労証明・給付金や融資の申請で「開業届の控え」の提出を求められる場面が何度も来ます。e-Taxなら受信通知が控え代わりになります

本当の締切はこっち: 青色申告承認申請(開業から2ヶ月)

  • 開業届とセットで青色申告承認申請書を出すと、複式簿記+e-Taxで最大65万円の所得控除赤字の3年繰越家族への給与(専従者給与)・30万円未満の設備の即時償却(減価償却ガイド)が使えます
  • 期限は開業日から2ヶ月以内(1/1〜1/15開業はその年の3/15まで)。これを逃すと初年度は白色確定で、開業赤字の繰越もできません。開業初年度は赤字になりやすい飲食店にとって、繰越が使えないのは実害が大きい
  • 結論: 開業届と青色申請は同じ日に2枚セットで出す。分ける理由がありません

書き方の要点(迷う欄だけ)

職業「飲食店経営」「飲食業」。個人事業税の業種判定に使われる欄で、飲食店は第1種事業(税率5%・所得290万円超から)
屋号店名を書く(空欄でも可・後から変更可)。屋号つき銀行口座を作るならここに書いた名前が基準に
開業日自分で決めてよい。開業日前の支出は「開業費」(好きな年に償却できる繰延資産)にできるため、物件契約〜オープンの準備費用を開業費にまとめる設計が定石
所得の種類事業所得
青色申請書側の簿記方式「複式簿記」「備付帳簿: 総勘定元帳・仕訳帳」等にチェック(65万円控除の要件)。会計ソフトを使えば自動的に満たせます

出すと得すること(まとめ)

  • 青色申告の税メリット — 65万円控除だけで、所得税+住民税で年10万円前後の節税(所得による)
  • 屋号つき口座・キャッシュレス加盟審査 — 事業実在の証明として控えが機能
  • 補助金・融資の前提書類 — 創業融資や小規模事業者向け補助金の申請で、事業開始の証明として求められることが多い
  • 就労証明 — 保育園申請などで自営業の就労を証明する基礎資料に

よくある誤解の整理

  • 「開業届を出すと扶養から外れる」 — 税の扶養は所得金額で決まり、届の有無は無関係。社会保険の扶養は健保組合の基準次第で「自営業者は不可」の組合もあるため、配偶者の健保の規定確認が正解です
  • 「失業保険をもらいながら準備してよい」 — 開業届を出す(=事業開始)と受給資格に影響します。再就職手当への切り替え等はハローワークに事前確認を
  • 「法人でも開業届」 — 法人は別の手続き(設立届出書ほか)。このページは個人事業主向けです

「開業費」を使い倒す: 開業日前の支出の集め方

  • 開業日前に払った市場調査の交通費・食べ歩き(研究目的)・セミナー代・打ち合わせ費・チラシ・名刺・許可取得の講習費などは開業費(繰延資産)にできます
  • 開業費は好きな年に好きな額だけ償却できる特殊な資産。開業1〜2年目の赤字期は温存し、黒字化した年にまとめて経費化する——という税負担の平準化が合法的にできます
  • だから開業準備中は領収書を全部取っておく。「これ経費になるの?」と迷ったら捨てずに封筒へ。判断は申告時にすればいい
  • 注意: 10万円以上の設備・内装・仕入れは開業費に入りません(それぞれ固定資産・棚卸資産として処理。減価償却ガイド参照)

提出したら次にやること5点

① 屋号つき口座控えを持ってネット銀行が早い。事業と生活のお金の分離が記帳を10倍楽にする
② 事業用クレジットカード会計ソフト連携で経費が自動記帳に。個人カードとの混用が帳簿地獄の入口
③ 会計ソフト開業直後の取引が少ないうちに設定。青色65万円控除の複式簿記はソフト前提で考える
④ インボイス登録の判断取引先に事業者が多いか・課税事業者になるべきかの検討(インボイスガイド
⑤ 補助金の確認創業枠のある制度・自治体の創業支援は開業からの年数が浅いほど有利業態別の開業ガイドと診断でチェック

10分で終わらせる最短ルート

  • ① freee開業などの無料作成ソフトで質問に答える(5分)→ ② 開業届+青色申請の2枚が自動生成 → ③ e-Tax送信 or 印刷して郵送(控えと返信用封筒を同封)
  • 手書き派は国税庁サイトのPDFに直接入力でも可。いずれにせよ費用は0円。行政書士等への依頼が必要な書類ではありません
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よくある質問

Q. 開業届を出さないと罰則がありますか?

A. 罰則はありません。出さなくても営業も確定申告もできます。ただし青色申告(65万円控除・赤字繰越)には開業届+青色申告承認申請が必須で、屋号つき銀行口座の開設や各種証明にも使うため、実務上は出さない理由がない書類です。

Q. 開業届と保健所の営業許可は何が違うのですか?

A. 全くの別物です。保健所の飲食店営業許可は「営業してよい」という許可で、これがないと営業できません。開業届は税務署への「事業を始めました」という通知で、営業の可否とは無関係です。飲食店は両方必要で、窓口も書類も別です。

Q. 開業日はいつにすればいいですか?

A. 厳密な決まりはなく、店舗のオープン日・準備を始めた日など合理的な日を自分で決められます。開業日より前の支出は「開業費」として計上できるため、開業日を遅めに設定して準備費用を開業費にまとめるのが実務では一般的です。青色申請の期限(開業日から2ヶ月)の起点になる点だけ注意してください。

Q. 会社員のまま週末だけ営業する場合も開業届は出せますか?

A. 出せます。副業でも反復継続する事業なら開業届・青色申告は利用できます(事業所得か雑所得かの規模判断はありますが、店舗を構える飲食業なら事業所得が基本)。なお勤務先の副業規定と、住民税の通知経路(普通徴収の選択)は事前に確認しておくと安心です。

Q. 配偶者に店を手伝ってもらう場合、何か届出は必要ですか?

A. 青色申告なら「青色事業専従者給与に関する届出書」を出すと、生計を一にする家族への給与を経費にできます。期限は原則その年の3月15日(開業年は開業から2ヶ月以内)で、開業届・青色申請と同時に出すのが定石の段取りです。

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