まかないは経費になる?従業員のルールと店主の自家消費の違い
ナビコッコ
まかないの税務、実は「従業員に出す」と「自分が食べる」で全く別の話です。前者はルールを守れば福利厚生、後者は経費どころか売上計上。ここを混ぜると帳簿がぐちゃぐちゃになります。
まかないの税務は、飲食店の帳簿で最も「なんとなく」処理されている領域です。しかも従業員に出すまかないと店主が自分で食べるまかないで、ルールが全く違う。この2つを分けて整理すれば、迷いは消えます。
従業員のまかない: 非課税にする2条件
従業員へのまかないは、条件を外すと「現物給与」=給与課税の対象になります。非課税で出すための条件は2つ、両方を満たすことです。
| 条件① | 従業員が食事価額の半分以上を負担している |
|---|---|
| 条件② | 店側の負担が1人あたり月3,500円(税抜)以下 |
| 食事価額とは | その食事の材料費等の実費。売価ではない。まかない1食の材料費250円なら、従業員から130円徴収し、店負担120円×月22回=2,640円で両条件クリア |
| 外すとどうなる | 店負担分(条件を満たさない場合は食事価額と徴収額の差額)が給与扱い。源泉徴収・社会保険の算定に影響し、年末調整のやり直し要因になる |
計算例: 250円まかないの設計
- 1食の材料費: 250円 / 従業員負担: 130円(半額以上✓)/ 店負担: 120円
- 月22シフトの従業員: 店負担 120×22=2,640円 ≦ 3,500円✓ → 非課税で成立
- もし「無料まかない」にすると: 250×22=5,500円/月が給与扱いに。時給換算ではわずかでも、帳簿と源泉の手間が跳ね上がるのが実務の痛点です
- 徴収は給与天引きが楽(給与明細に「食事代」控除を1行立てる)。現金徴収なら記録を残す
従業員まかないの仕訳例
- 材料は仕入に含まれているので、月末にまかない分を振り替える: (借方)福利厚生費 2,640 /(貸方)仕入(または家事消費等)2,640(店負担分)
- 従業員からの徴収分: (借方)現金(or 預り金経由)2,860 /(貸方)雑収入 2,860
- 厳密な振替が負担なら「1食あたり標準材料費×提供数」の月次概算で継続処理するのが現実解です
店主本人のまかない: 経費ではなく「自家消費」
個人事業主本人(と生計を一にする家族)が食べた分は、経費にならないだけでなく、売上(自家消費)として計上する必要があります。
- 計上額: 通常の販売価額の70% か 仕入価額の、いずれか高い方(所得税の実務基準)
- 例: 店主が毎日1食、材料費300円相当・売価900円のまかないを食べる場合 → 900×70%=630円 > 仕入300円なので、1食630円×月26日=月16,380円を自家消費売上に計上……が原則。ただし「まかない」は商品と同一ではない簡易な食事であることが多く、実務では材料実費ベースの合理的な計上で処理される例も多い領域です。金額感が大きい店は税理士に基準を決めてもらうのが安全
- 仕訳: (借方)事業主貸 /(貸方)自家消費(家事消費売上)
- 「自分の飯くらいで細かい」と思うかもしれませんが、現金商売の税務調査で自家消費の計上漏れは定番の指摘項目です。月次で機械的に計上する型を作っておくと、調査で強い
税務調査でのまかない論点: 記録があれば5分で終わる
- 現金商売の飲食店の調査では、自家消費の計上漏れとまかないの現物給与認定が定番の確認項目です
- 調査官が見るのは整合性: 従業員数×営業日数に対してまかない計上が極端に少なくないか/店主の食事が全く計上されていないのは不自然ではないか
- 防御は簡単で、「1食◯円×月◯食」の月次計上メモが残っていれば説明は5分で終わります。逆に記録ゼロだと推計課税(調査官側の概算)を受け入れる流れになりがちで、たいてい実際より高くつきます
- 過去分をやっていなかった場合も、今月から型を作れば「以後は適正」の姿勢が示せます。完璧な過去より、続いている現在の記録です
法人(会社)の場合の違い
- 法人成りすると社長も「役員=従業員側」になるため、上の半額負担+3,500円ルールを社長にも適用できるようになります。まかない税務は法人の方がシンプルというのは意外と知られていません(法人成りの検討材料のひとつ)
まかないと廃棄ロスの帳簿上の違い
- 廃棄した食材 — 仕入に含まれたまま売上原価になる(=自然に経費化)。別途の仕訳は不要ですが、廃棄記録(日付・品目・理由のメモや写真)を残すと原価率の説明力が上がります
- まかないに転用した食材 — 上で見た通り、従業員分は福利厚生費へ振替、店主分は自家消費で売上計上。「廃棄予定品をまかないで消費」も理屈は同じです(評価額は実態に応じて低くてよい)
- この区別が曖昧だと、原価率が実力より悪く見え、値付け・ロス対策の判断が狂います。棚卸しとセットで月次の型に入れてください
まかないは採用の武器: ルール内で映えさせる
- 「まかない付き」は飲食バイト求人で最も反応の良い条件のひとつ。130円徴収のまかないは非課税ルールを満たしつつ、求人票には堂々と「まかない有(1食130円)」と書けます
- 逆に「食事手当を現金で支給」は全額給与課税なので、同じ予算なら現物のまかないの方が従業員の手取り的にも得。制度設計ひとつで採用力と税務が両立します(人手不足対策ガイド)
- 写真映えするまかないはSNS採用の隠れた武器。「今日のまかない」投稿は店の雰囲気を伝える定番コンテンツです
実務の型: 月次5分で終わらせる
- ① 1食あたりの標準材料費を決める(年1回見直し)
- ② シフト表から月のまかない提供数を数える(従業員別)
- ③ 従業員分: 徴収額と店負担を計算して仕訳1本 / 店主分: 自家消費を仕訳1本
- ④ 給与明細の食事代控除と突き合わせ
- この4行をやっている店は、まかない税務で困ることはまずありません
よくある質問
Q. 従業員に無料でまかないを出すとどうなりますか?
A. 食事の価額全額が従業員への現物給与扱いとなり、給与として源泉徴収の対象になります。非課税にするには「従業員が食事価額の半分以上を負担」かつ「店側の負担が月3,500円(税抜)以下」の2条件を満たす必要があります。
Q. 店主(個人事業主)本人が食べるまかないは経費ですか?
A. 経費にならないどころか、使った食材は「自家消費」として売上に計上する必要があります。金額は通常の販売価格の70%か仕入価格のいずれか高い方で計上するのが所得税の実務です。本人の食事は事業の経費ではなく生活費、というのが税務の原則です。
Q. まかないの価額はどう決めればいいですか?
A. 「その食事を作るのに要した材料費等の実費」で評価します。売価ではありません。実務では1食あたりの標準材料費(例: 250円)を決めて、提供数×単価で毎月計算する方式が現実的です。
Q. まかないの代わりに食事手当を現金で払うのはどうですか?
A. 現金支給の食事手当は金額にかかわらず全額が給与課税の対象です。非課税の枠が使えるのは現物の食事だけなので、同じ予算なら現物まかない+一部徴収の設計の方が、従業員の手取りでも店の事務でも有利になります。