介護・福祉事業所版

インカム・タブレット・Wi-Fiに使える補助金と、「探して歩く時間」の計算

2026年10月5日更新 / 設備投資と補助金の介護・福祉事業所向けガイド

ナビコッコ
介護施設のWi-Fi整備は「ソフトのおまけ」扱いされがちですが、逆です。電波が届かない施設では、どんな高機能ソフトも紙に負けます。基盤が先、アプリが後。工事の順番だけは間違えないようにしましょう。

「〇〇さん、どこ?」は、介護施設で1日に何十回も交わされる言葉です。応援を呼ぶため、確認を取るため、職員がフロアを探して歩く。この移動に使う人時は記録に残りませんが、確実に現場の体力を奪っています。インカム・タブレット・Wi-FiというICTの基盤3点セットは、この「探して歩く」をなくす投資です。

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まず相場観: ICT基盤の価格帯

業務用インカム1台2万〜5万円。10人分で20万〜50万円。ハンズフリーで介助しながら話せる機種が主流
タブレット・スマホ端末1台3万〜8万円。記録入力+見守り通知の受け皿。フロア2〜3台から
施設内Wi-Fi工事込み30万〜100万円。鉄筋・防火扉で電波が減衰するため、現地の電波調査が必須
ナースコール連携数十万円〜。既設のコールをスマホ・インカムに飛ばす改修。更新時期なら合わせて検討

計算例: 「探して歩く時間」を数字にする

  • 応援要請・確認・呼び出しでの移動: 1回2分×1人1日15回=1人30分/日
  • 職員10人なら1日5時間、月約150時間。時給1,300円換算で月約20万円分の人時です
  • インカム10台50万円+Wi-Fi整備50万円=100万円の投資は、補助率1/2なら自己負担50万円になり、3ヶ月分の「探して歩く時間」で回収する計算になります
  • 数字にならない効果も大きいです。入浴介助中に応援を呼べる安心感や、夜勤の孤立感の解消です。「辞めない職場」への投資でもあります

使える制度の型

ICT・テクノロジー導入支援本命。都道府県の基金事業で、Wi-Fi工事・インカム・タブレットを対象に含む例が多い。介護ソフト・見守り機器とのセット申請で金額を作る
デジタル化・AI導入補助金ソフト主体の申請にハード費用が付随する類型。単体のWi-Fi工事だけでは組みにくい
自治体の職場環境改善系介護人材確保の文脈で通信環境整備を支援する独自制度が出ることがあります。下の募集中リストで確認を

整備の順番: 基盤が先、アプリが後

  1. 電波調査。どの居室・浴室・廊下で電波が切れるかを実測します。業者の現地サーベイは無料〜数万円
  2. Wi-Fi基盤。業務用とゲスト用をネットワーク分離できる業務用機器を使います。個人情報を扱う業界なので家庭用の流用は避けましょう
  3. インカム。効果がいちばん早く出る機器です。運用ルール(チャンネル分け・夜勤の使い方)を決めて開始します。Wi-Fiを使わないタイプなら、予算に合わせて先に入れてもかまいません(下の「予算が足りないとき」を参照)
  4. タブレット・ソフト。基盤が整ってから入れます。介護ソフトの記事に選定の要点をまとめています

この順番を逆にすると「タブレットは買ったが居室で圏外」という定番の失敗が起きます。基盤工事は地味で稟議が通りにくいからこそ、補助事業の対象になっているうちに済ませるのが得策です。

夜勤とインカム: 孤立を消す使い方

インカムの価値が最も出るのは夜勤帯です。ワンオペや少人数の夜勤では、「何かあったら1人で対応」という心理的負担は、離職につながることがあります。フロア間・建物間でつながるインカムがあれば、判断に迷う場面で即相談でき、緊急時は応援を呼びながら処置に入れます。「夜勤でも1人にならない」という安心は、求人票に書ける採用力でもあります。オンコールの管理者との連絡手段を兼ねれば、夜間の電話連絡網より速く確実です。

よくある誤解

  • 「インカムは大きい施設のもの」。2階建て以上、または浴室と居室が離れている構造なら、小規模でも効果が出ます。判断基準は規模でなく「声が届かない場所があるか」です
  • 「Wi-Fiはポケットルーターで十分」。ポケットルーターでは、同時接続数と電波範囲が業務用途に足りません。記録データ・見守り通知という「落ちてはいけない通信」を載せる基盤は、業務用機器で組みましょう
  • 「個人情報があるからクラウドや無線は怖い」。適切に分離・暗号化された無線LANは、鍵のかからない書庫の紙記録より安全です。怖いのは無線ではなく、設計せずに使うことです

予算が足りないとき: Wi-Fiを使わないインカムは先に入れられる

上の順番は、3点セットをまとめて整備するときの基本です。予算が足りず1つずつ入れる場合は、例外が1つあります。特定小電力の無線機のように、端末どうしが電波で直接つながるインカムはWi-Fiを使いません。電波調査やWi-Fi工事より先に入れても、使えなくなることはありません。この場合の順番は、①Wi-Fiを使わないインカム(数十万円・効果がすぐ出る)②電波調査とWi-Fi基盤(タブレット運用の前提)③タブレット・ソフト連携です。スマホのアプリで話すタイプや、見守りセンサーの通知を受けるタイプはWi-Fiの上で動くので、基本の順番どおりWi-Fiの後にしましょう。どちらの場合も、タブレットとソフトを基盤より先に買わないことは変わりません。Wi-Fiを使わないインカムは工事がほぼ不要で、県の導入支援の対象にもなりやすく、現場で「便利になった」と体感できると、それが次のICT投資への合意につながります。小さく始めて、効果を実感してから次を積み上げましょう。

BCPの通信手段としても働く

介護サービス事業者は、令和6年4月から業務継続計画(BCP)の策定と、研修・訓練の実施が義務になっています。災害・停電時の職員間連絡は計画の重要項目で、電池・充電で動くインカムは停電時の館内連絡手段としてそのままBCPの装備になります。1回の購入で「ICT投資」と「BCP対応」の両方を満たせる点は、稟議と計画書のどちらでも使える一石二鳥の論点です。

導入でよくある失敗: 契約前に確認すべき3点

「補助金で安く入れられた」で終わらせると、数年後に困ることがあります。実際に起きやすい失敗は次の3つです。

  1. データを持ち出せない契約。クラウド型のソフト・システムは、解約時に利用者情報をCSVなど汎用の形式で書き出せるかを契約前に確認しないと、乗り換えたくても過去のデータが人質になります
  2. 保守・通信費が補助対象外。都道府県のICT導入支援は初期費用が中心で、月々の通信費・保守費・ライセンス更新費は補助の対象外になることが多いです。インカム10台・Wi-Fi込みの構成なら、年間数万〜十数万円の固定費が初年度以降も続く前提で予算を組みましょう
  3. 電波調査なしでの見積もり。現地サーベイを省いた見積もりは、設置後に「浴室だけ圏外」が発覚しがちです。アクセスポイントの追加工事は、後からのほうが割高になります

ICT・介護テクノロジー導入支援事業の解説にもあるとおり、公募要領には補助対象外の経費が明記されています。契約前に見積もりと公募要領を並べて、どの費用が補助対象外として残るかを洗い出しましょう。

導入前チェックリスト

  • ☐ 電波調査で施設内の「圏外マップ」を作ったか
  • ☐ 業務用/ゲスト用のネットワーク分離を設計に入れたか
  • ☐ インカムの運用ルール(チャンネル・夜勤帯)を決める担当者はいるか
  • ☐ ソフト・見守り機器とのセット申請で県の支援を使えるか確認したか
  • ☐ 停電時の連絡手段としてBCPに位置づけたか(充電池の備蓄も忘れずに)
  • ☐ 交付決定前に発注しない段取りか → 下の募集中リストで使える制度を確認

結論として、ICT基盤は「探して歩く」「圏外で使えない」という地味なストレスを根本からなくす投資です。今日できることは、職員に「1日に何回、人を探して歩くか」を聞くことと、スマホ片手に施設を一周して圏外の場所をメモすることです。この2つで、整備計画の下書きは完成します。地味な基盤ほど、入れた後に「なぜ早くやらなかったのか」と言われる投資です。

参考・出典

いま募集中の関連制度

データベースの募集中制度から、インカム・タブレット・施設内Wi-Fiに関連しうる制度が4件見つかりました(2026年10月19日時点・毎朝自動更新。対象経費に含まれるかは必ず公募要領で確認しましょう):

介護・福祉事業所対象

令和8年度札幌市観光施設受入環境整備補助金

札幌市内の介護・福祉事業所が外国人観光客の受入環境整備に行う設備投資を補助。観光消費増加・満足度向上を支援。

地域: 北海道 上限: 100万円 締切: 2026年12月21日
介護・福祉事業所対象

【久留米市】久留米市小規模事業者デジタル化支援補助金(令和8年度)

久留米市内の小規模介護・福祉事業所がDX診断後、POSレジやクラウド導入等デジタル化に最大20万円(1/2補助)。従業員5名以下が対象。

地域: 福岡県 上限: 20万円 締切: 2026年12月28日
介護・福祉事業所対象

奄美市ユニバーサルツーリズム受入体制整備費助成事業

奄美市内の介護施設が高齢者・障がい者・外国人対応のユニバーサルツーリズム受入体制を整備する場合、補助金の交付を受けられる制度。詳細は奄美市に確認が必要。

地域: 鹿児島県 上限: 15万円 締切: 2027年1月29日
対象か要確認

令和8年度テレワークトータルサポート助成金

東京都内の介護・福祉事業所が対象だが、従業員2人以上が要件。個人経営や1人店舗は対象外。テレワーク導入が現実的でない業態も多い。

地域: 東京都 上限: 250万円 締切: 2027年2月5日

インカム・タブレット・施設内Wi-Fiに使える制度は、どの地域に多いか

2026年10月19日時点で該当する4件を地域別に数えました。うち全国対象が0件で、これはどの地域の介護・福祉事業所でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている4件で見ると、中央値は100万円、最大は250万円です。

直近の締切は令和8年度札幌市観光施設受入環境整備補助金の2026年12月21日(あと63日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

あわせて確認したい定番制度

よくある質問

Q. インカムやWi-Fi工事にも補助金は使えますか?

A. 使える枠組みがあります。都道府県のICT導入支援・介護テクノロジー導入支援事業では、介護ソフトやタブレットに加えて、インカムやWi-Fi環境の整備費を対象に含める県が多くあります(要件は県・年度で異なります)。単体では金額が小さいため、ソフト・見守り機器とセットにして申請額を積み上げるのが定石です。

Q. インカムの価格と効果はどのくらいですか?

A. 業務用インカムで1台2万〜5万円、10人分で20万〜50万円が目安です。効果は「職員を探して歩く時間」がなくなることです。ナースコール対応・入浴介助の応援要請・来客対応で、フロアを探し回る数分×1日何十回が積み上がっています。毎日の移動が減るので、効果を実感しやすい機器です。

Q. タブレットは何台必要ですか?

A. 記録用途なら「同時に記録する人数」分で足ります。職員全員分は不要で、フロアに2〜3台+夜勤用が現実的な初期構成です。見守りセンサーの通知受けを兼ねるならスマホ型が向きます。

Q. 施設内Wi-Fiの整備費はどのくらいですか?

A. 既存回線がある前提で、アクセスポイント+配線工事で30万〜100万円が目安です。鉄筋の建物・防火扉の多い施設は電波が届きにくく、アクセスポイントの数が費用を左右します。必ず電波調査(現地サーベイ)つきで見積もりを取りましょう。

Q. 利用者や家族向けのWi-Fiも一緒に整備すべきですか?

A. 業務用とゲスト用を分離できる業務用機器なら、同じ工事で両方整備できます。面会のオンライン化・利用者のタブレット利用など使い道は増える一方なので、工事は1回で済ませ、ネットワークだけ分離するのが効率的です。

Q. 何から始めればいいですか?

A. 順番は①電波調査(どこに電波の穴があるか)②Wi-Fi基盤③インカム④タブレット・ソフトです。基盤を後回しにしてタブレットから買うと「電波が届かなくて使えない」が起きます。ただし、Wi-Fiを使わないタイプのインカムなら、予算が足りないときに先に入れてもかまいません。県のICT導入支援の公募前に電波調査だけ済ませておくと、公募が出てすぐに申請できます。

他の設備の補助金

公開 2026年8月8日 / 最終更新 2026年10月5日 / この記事は、公的機関が公開する一次資料をもとにホジョナビ編集部が作成したもので、執筆補助にAIを使用。金額・要件・締切は各制度の公募要領が常に優先。制作方針と情報源

更新履歴(2件)
  • 契約前に確認すべき3点(解約時のデータ持ち出し、保守・通信費が補助対象外になりやすいこと、電波調査なしの見積もり)を追記
  • 予算不足時に先に入れられるインカムをWi-Fiを使わないタイプに限定、BCPの策定・研修・訓練が令和6年4月から義務である点を追記、参考・出典を追加
  • 公開