介護・福祉事業所版

インカム・タブレット・Wi-Fiに使える補助金と、「探して歩く時間」の計算

2026年9月3日更新 / 設備投資と補助金の介護・福祉事業所向けガイド

ナビコッコ
介護施設のWi-Fi整備は「ソフトのおまけ」扱いされがちですが、逆です。電波が届かない施設では、どんな高機能ソフトも紙に負けます。基盤が先、アプリが後——工事の順番だけは間違えないようにしましょう。

「〇〇さん、どこ?」——介護施設で1日に何十回も交わされる言葉です。応援を呼ぶため、確認を取るため、職員がフロアを探して歩く。この移動は記録に残らない人時ですが、確実に現場の体力を削っています。インカム・タブレット・Wi-FiというICTの基盤3点セットは、この「探して歩く」を消す投資です。

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まず相場観: ICT基盤の価格帯

業務用インカム1台2万〜5万円。10人分で20万〜50万円。ハンズフリーで介助しながら話せる機種が主流
タブレット・スマホ端末1台3万〜8万円。記録入力+見守り通知の受け皿。フロア2〜3台から
施設内Wi-Fi工事込み30万〜100万円。鉄筋・防火扉で電波が減衰するため、現地の電波調査が必須
ナースコール連携数十万円〜。既設のコールをスマホ・インカムに飛ばす改修。更新時期なら合わせて検討

計算例: 「探して歩く時間」を数字にする

  • 応援要請・確認・呼び出しでの移動: 1回2分×1人1日15回=1人30分/日
  • 職員10人なら1日5時間、月約150時間。時給1,300円換算で月約20万円分の人時です
  • インカム10台50万円+Wi-Fi整備50万円=100万円の投資が、補助率1/2なら自己負担50万円——3ヶ月分の「探して歩く時間」で回収する計算になります
  • 数字にならない効果も大きい。入浴介助中に応援を呼べる安心感、夜勤の孤立感の解消——「辞めない職場」への投資でもあります

使える制度の型

ICT・テクノロジー導入支援本命。都道府県の基金事業で、Wi-Fi工事・インカム・タブレットを対象に含む例が多い。介護ソフト見守り機器とのセット申請で金額を作る
デジタル化・AI導入補助金ソフト主体の申請にハード費用が付随する類型。単体のWi-Fi工事だけでは組みにくい
自治体の職場環境改善系介護人材確保の文脈で通信環境整備を支援する独自制度が出ることがあります。下の募集中リストで確認を

整備の順番: 基盤が先、アプリが後

  1. 電波調査 — どの居室・浴室・廊下で電波が切れるかを実測。業者の現地サーベイは無料〜数万円
  2. Wi-Fi基盤 — 業務用とゲスト用をネットワーク分離できる業務用機器で。個人情報を扱う業界なので家庭用の流用は避けましょう
  3. インカム — 効果が最速で出る機器。運用ルール(チャンネル分け・夜勤の使い方)を決めて開始
  4. タブレット・ソフト — 基盤が整ってから。介護ソフトの記事に選定の要点をまとめています

この順番を逆にすると「タブレットは買ったが居室で圏外」という定番の失敗が起きます。基盤工事は地味で稟議が通りにくいからこそ、補助事業の対象になっているうちに済ませるのが得策です。

夜勤とインカム: 孤立を消す使い方

インカムの価値が最も出るのは夜勤帯です。ワンオペや少人数の夜勤では、「何かあったら1人で対応」という心理的負担が離職の隠れた原因になっています。フロア間・建物間でつながるインカムがあれば、判断に迷う場面で即相談でき、緊急時は応援を呼びながら処置に入れます。「夜勤が怖くなくなった」という声は、求人票に書ける採用力でもあります。オンコールの管理者との連絡手段を兼ねれば、夜間の電話連絡網より速く確実です。

よくある誤解

  • 「インカムは大きい施設のもの」 — 2階建て以上、または浴室と居室が離れている構造なら、小規模でも効果が出ます。判断基準は規模でなく「声が届かない場所があるか」です
  • 「Wi-Fiはポケットルーターで十分」 — 同時接続数と電波範囲が業務用途に耐えません。記録データ・見守り通知という「落ちてはいけない通信」を載せる基盤は、業務用機器で組みましょう
  • 「個人情報があるからクラウドや無線は怖い」 — 適切に分離・暗号化された無線LANは、鍵のかからない書庫の紙記録より安全です。怖いのは無線ではなく、設計せずに使うことです

費用対効果の順番: 迷ったらインカムから

3点セットを一度に入れる予算がないときの順番は、①インカム(数十万円・効果が翌日から出る)②Wi-Fi基盤(タブレット運用の前提)③タブレット・ソフト連携——です。インカムは工事がほぼ不要で、県の導入支援の対象にもなりやすく、現場の「便利になった」体感が次のICT投資への合意形成を作ってくれます。小さく始めて、効果の実感で次を積む。ICT導入の王道はここでも同じです。

BCPの通信手段としても働く

介護事業所には業務継続計画(BCP)の策定・運用が求められています。災害・停電時の職員間連絡は計画の重要項目で、電池・充電で動くインカムは停電時の館内連絡手段としてそのままBCPの装備になります。「ICT投資」と「BCP対応」を同じ購入で満たせる——稟議と計画書の両方で使える一石二鳥の論点です。

導入前チェックリスト

  • ☐ 電波調査で施設内の「圏外マップ」を作ったか
  • ☐ 業務用/ゲスト用のネットワーク分離を設計に入れたか
  • ☐ インカムの運用ルール(チャンネル・夜勤帯)を決める担当者はいるか
  • ☐ ソフト・見守り機器とのセット申請で県の支援を使えるか確認したか
  • ☐ 停電時の連絡手段としてBCPに位置づけたか(充電池の備蓄も忘れずに)
  • 交付決定前に発注しない段取りか → 下の募集中リストで使える制度を確認

結論。ICT基盤は「探して歩く」「圏外で使えない」という地味なストレスを根本から消す投資です。今日できることは、職員に「1日に何回、人を探して歩くか」を聞くことと、スマホ片手に施設を一周して圏外の場所をメモすること。その2つで、整備計画の下書きは完成します。地味な基盤ほど、入れた後に「なぜ早くやらなかったのか」と言われる投資です。

いま募集中の関連制度

データベースの募集中制度から、インカム・タブレット・施設内Wi-Fiに関連しうる制度が4件見つかりました(2026年9月3日時点・毎朝自動更新。対象経費に含まれるかは必ず公募要領で確認しましょう):

介護・福祉事業所対象

令和8年度神奈川県小規模事業者デジタル化支援推進事業費補助金

神奈川県内の小規模介護・福祉事業所向け。予約・会計・顧客管理等のデジタル化に最大50万円(2/3補助)。個人事業主対象。

地域: 神奈川県 上限: 50万円 締切: 2026年9月30日
介護・福祉事業所対象

令和8年度札幌市観光施設受入環境整備補助金

札幌市内の介護・福祉事業所が外国人観光客の受入環境整備に行う設備投資を補助。観光消費増加・満足度向上を支援。

地域: 北海道 上限: 100万円 締切: 2026年12月21日
介護・福祉事業所対象

【久留米市】久留米市小規模事業者デジタル化支援補助金(令和8年度)

久留米市内の小規模介護・福祉事業所がDX診断後、POSレジやクラウド導入等デジタル化に最大20万円(1/2補助)。従業員5名以下が対象。

地域: 福岡県 上限: 20万円 締切: 2026年12月28日
対象か要確認

令和8年度テレワークトータルサポート助成金

東京都内の介護・福祉事業所が対象だが、従業員2人以上が要件。個人経営や1人店舗は対象外。テレワーク導入が現実的でない業態も多い。

地域: 東京都 上限: 250万円 締切: 2027年2月5日

インカム・タブレット・施設内Wi-Fiに使える制度は、どの地域に多いか

2026年9月3日時点で該当する4件を地域別に数えました。うち全国対象が0件で、これはどの地域の介護・福祉事業所でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている4件で見ると、中央値は100万円、最大は250万円です。

直近の締切は令和8年度神奈川県小規模事業者デジタル化支援推進事業費補助金の2026年9月30日(あと27日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

あわせて確認したい定番制度

よくある質問

Q. インカムやWi-Fi工事にも補助金は使えますか?

A. 使える枠組みがあります。都道府県のICT導入支援・介護テクノロジー導入支援事業では、介護ソフトやタブレットに加えて、インカムやWi-Fi環境の整備費を対象に含める県が多くあります(要件は県・年度で異なります)。単体では小粒なので、ソフト・見守り機器とセットで申請額を作るのが定石です。

Q. インカムの価格と効果はどのくらいですか?

A. 業務用インカムで1台2万〜5万円、10人分で20万〜50万円が目安です。効果は「職員を探して歩く時間」の消滅。ナースコール対応・入浴介助の応援要請・来客対応で、フロアを探し回る数分×1日何十回が積み上がっています。導入施設で最も「戻れない」と言われる機器です。

Q. タブレットは何台必要ですか?

A. 記録用途なら「同時に記録する人数」分で足ります。職員全員分は不要で、フロアに2〜3台+夜勤用が現実的な初期構成です。見守りセンサーの通知受けを兼ねるならスマホ型が向きます。

Q. 施設内Wi-Fiの整備費はどのくらいですか?

A. 既存回線がある前提で、アクセスポイント+配線工事で30万〜100万円が目安です。鉄筋の建物・防火扉の多い施設は電波が届きにくく、アクセスポイントの数が費用を左右します。必ず電波調査(現地サーベイ)つきで見積もりを取りましょう。

Q. 利用者や家族向けのWi-Fiも一緒に整備すべきですか?

A. 業務用とゲスト用を分離できる業務用機器なら、同じ工事で両方整備できます。面会のオンライン化・利用者のタブレット利用など使い道は増える一方なので、工事は1回で済ませ、ネットワークだけ分離するのが効率的です。

Q. 何から始めればいいですか?

A. 順番は①電波調査(どこに電波の穴があるか)②Wi-Fi基盤③インカム④タブレット・ソフトです。基盤を後回しにしてタブレットから買うと「電波が届かなくて使えない」が起きます。県のICT導入支援の公募前に電波調査だけ済ませておくと、公募が出た瞬間に申請できます。

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