建設業・工務店版

経営事項審査(経審): P点の仕組みと、点数が決まるタイミング

2026年9月3日更新 / 建設業の経営者向けガイド

ナビコッコ
経審の点数を上げたいという相談は多いのですが、決算が終わってから相談に来る方がほとんどです。経審は決算書の写像なので、点数は決算の組み方で決まります。つまり相談すべきは決算の3ヶ月前。順番を変えるだけで、来年の入札の土俵が変わります。

公共工事を元請として受注するには、経営事項審査(経審)を受けて総合評定値(P点)を持つ必要があります。P点は発注機関の格付けに直結し、「どのランクの工事に応札できるか」を決めます。そして最も大事なポイントは、P点は決算書の写像であるということ。つまり点数の勝負は、決算が締まる前に終わっています。この記事では、P点の構成、点数が決まるタイミング、現実的な引き上げ策を整理します。制度は改正されることがあるため、最終確認は所管の許可行政庁の手引きで行いましょう。

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P点は何でできているか

要素見られるもの動かせる時期
X1(完成工事高業種別の完成工事高(平均年間)決算まで(工事の計上時期・業種の振り分け)
X2(自己資本額・平均利益額)純資産、利払前税引前償却前利益決算まで(増資・利益の確保)
Y(経営状況分析)負債の状況、収益性、財務健全性、絶対的力量の8指標決算まで(借入と資産の構成)
Z(技術力)技術職員の数(資格区分ごとの点数)、元請完成工事高年間を通じて(資格取得・採用)
W(社会性等)雇用・保険加入、退職金制度、防災協定、法令遵守、建設機械の保有、CCUSの活用などいつでも

「経審の点数を上げたい」という相談の多くは決算後に来ます。しかしX1・X2・Yは決算の数字そのものなので、締まった後にできることはほとんどありません。動かせるのはZとW——特にWは決算と無関係に積める点数です。

決算前にやるべきこと

  • 完成工事高の計上時期: 期末をまたぐ工事の完成・引渡しのタイミングを、無理のない範囲で意識する(当然ながら実態に反する計上はできません)
  • 業種の振り分け: 完成工事高を許可業種ごとにどう振り分けるかで、業種別のP点が変わります。実態に沿った区分を正確に行う
  • 利益の確保: 節税を優先しすぎると自己資本と利益が薄くなり、X2とYが下がります。節税と経審は逆方向に働くことを理解して判断する
  • 借入と資産の構成: 負債の圧縮、遊休資産の整理は財務指標に効きます
  • 未成工事支出金・受取手形の管理: 財務指標に影響するため、期末の状態を把握しておく

ここが経審の面白いところで、税理士に「節税してください」と頼むほど点数は下がることがあります。公共工事の比率が高い会社ほど、決算方針を「税負担」と「経審」の両面で決める必要があります。

W(社会性等)は今日から積める

取り組み内容着手の目安
社会保険等の加入雇用・健康・厚生年金の適正な加入未加入は減点。最優先で是正
退職金制度建設業退職金共済(建退共)や中小企業退職金共済への加入加入手続きのみで評価対象
法定外労災の付保上乗せ労災保険への加入保険会社との契約
建設キャリアアップシステム事業者・技能者の登録と就業履歴の蓄積登録と現場での運用
防災協定自治体等との災害時協定(単独または団体経由)建設業協会経由が現実的
若年技術者の育成若手の継続雇用と新規育成採用計画と連動(人材助成金の解説
ISO・エコアクション等の認証品質・環境のマネジメント認証取得に数ヶ月〜1年

Wの項目は「やっているのに申告していない」だけで点数を落としていることがあります。建退共に入っているのに証紙の管理が不十分、防災協定に参加しているのに書類がない——申請前に、自社の取り組みを棚卸ししましょう。

Z(技術力)は採用と資格で積む

技術職員は資格区分ごとに点数が異なり、1級の国家資格者は高い点数になります。既存の社員が資格を取れば、その年から点数に反映されます。

打ち手効果あわせて使える制度
社員の1級・2級施工管理技士の取得支援Zが上がる。本人の処遇改善にもなる人材開発支援助成金(研修前の計画届が必須
有資格者の中途採用即効性があるトライアル雇用・特定求職者雇用開発
技術職員の名簿整備申告漏れの防止

申請の流れと年間サイクル

時期やること
決算の3ヶ月前税理士と決算方針を協議(節税と経審のバランス)。Wの取り組みを点検
決算決算確定、税務申告
決算後登録経営状況分析機関へ経営状況分析(Y)を申請
分析結果の受領後許可行政庁へ経営規模等評価(X・Z・W)と総合評定値(P)を申請
結果通知P点の通知を受領(有効期間は審査基準日から1年7か月)
並行発注機関ごとの入札参加資格審査(申請時期は機関ごとに異なる)

注意したいのは、経審の結果と入札参加資格審査は別の手続きだということです。P点を取っても、発注機関ごとの資格申請をしなければ入札には参加できません。機関ごとの受付時期をカレンダーに入れておきましょう。

P点とランクの関係を数字で見る

発注機関ごとに基準は異なりますが、格付けの考え方はおおむね共通です。目安として、土木一式のランク分けは次のようなイメージになります(機関により大きく異なるため、必ず自社が参加する機関の基準を確認しましょう)。

ランクの目安P点の帯対象工事の規模感必要な体制
下位ランク600〜700点台数百万〜3,000万円程度技術者2〜3名、地域密着の施工
中位ランク700〜900点台3,000万〜1億円程度技術者5名以上、機械の保有
上位ランク900点以上1億円超技術者10名以上、資金力と施工管理体制

W(社会性等)の項目は、1つ整えるだけで数点から十数点動くことがあります。社会保険の適正加入、建退共への加入、法定外労災、防災協定、CCUSの活用——この5つを揃えるだけでランクの境目を越える会社は珍しくありません。一方でX1(完成工事高)を1割増やしても点数の伸びは緩やかで、しかも1年では動きません。短期はW、中期はZ、長期はX1とYという時間軸で考えると、打ち手の優先順位が決まります。

点数を上げる前に考えること

P点を上げれば上のランクの工事に応札できますが、ランクが上がると競争相手も変わります。技術者の配置、資金繰り、施工体制が追いつかないまま大型工事を受けると、赤字工事や人員の疲弊につながります。点数は「取れる工事の幅」を広げる道具であって、目的ではありません。自社の施工能力と資金力に合ったランクを見極めることも、経営判断の一部です。

実務チェックリスト

  • ☐ 直近の経審結果通知書を確認し、X1・X2・Y・Z・Wの内訳を把握した
  • ☐ 有効期間(審査基準日から1年7か月)の満了日をカレンダーに登録した
  • ☐ 決算の3ヶ月前に、税理士と「節税と経審」の方針を協議した
  • ☐ 完成工事高の業種別の振り分けが実態に沿っているか確認した
  • ☐ 社会保険等の加入状況に漏れがないか点検した
  • ☐ 建退共・中退共など退職金制度への加入状況を確認した
  • ☐ 法定外労災(上乗せ労災)に加入しているか確認した
  • ☐ 建設キャリアアップシステムの事業者・技能者登録の状況を確認した
  • ☐ 防災協定への参加状況(単独・団体経由)を確認した
  • ☐ 技術職員の名簿と資格を棚卸しし、申告漏れがないか確認した
  • ☐ 資格取得支援に使える助成金の計画届の時期を確認した
  • ☐ 発注機関ごとの入札参加資格審査の受付時期を一覧にした

結論: 点数の勝負は、決算の前に終わっている

経審のP点は決算書の写像です。X1・X2・Yは決算が締まれば動かせず、動かせるのはZ(技術力)とW(社会性等)。特にWは決算と無関係に今日から積める点数で、「やっているのに申告していない」だけで損をしている会社が少なくありません。相談すべきタイミングは決算後ではなく決算の3ヶ月前——この順番を変えるだけで、翌年の入札の土俵が変わります。制度は改正されるため、最新の手引きを所管の行政庁で確認しましょう。

開業に使える制度は、どの地域に多いか

2026年9月3日時点で該当する211件を地域別に数えました。うち全国対象が22件で、これはどの地域の建設業・工務店でも申請できます。残りは地域限定なので、自分の都道府県にあるかを先に見ましょう。

上限額が公表されている156件で見ると、中央値は500万円、最大は10億円です。下から4分の1は80万円以下なので、「小さく試す」規模の制度も含まれています。

直近の締切は令和8年度「滋賀県ローカルベンチャー創出支援金」【三次募集】…の2026年9月4日(あと1日)です。締切の並びは締切間近の制度でまとめて確認しましょう。

よくある質問

Q. 経営事項審査とは何ですか?

A. 公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない客観的な評価です。会社の規模・財務・技術力・社会性などを数値化し、総合評定値(P点)として表されます。P点は発注機関の入札参加資格の格付けに使われます。

Q. P点はどう構成されていますか?

A. 大きく5つの要素で構成されます。X1(完成工事高)、X2(自己資本額と平均利益額)、Y(経営状況分析=財務の健全性)、Z(技術力=技術者の数と元請完成工事高)、W(その他の審査項目=社会性等)です。それぞれにウエイトがあり、合成してP点が算出されます。

Q. 点数はいつ決まりますか?

A. <strong>決算の内容で決まります</strong>。経審は決算書を審査するため、決算が締まった後にできることは限られます。点数を意識するなら、決算日の数ヶ月前から動く必要があります。

Q. 有効期間はどのくらいですか?

A. 経審の結果通知書の有効期間は審査基準日(決算日)から1年7か月です。公共工事を直接請け負う間は切れ目なく更新する必要があるため、毎年決算後に受け続けるのが基本です。

Q. 点数を上げる近道はありますか?

A. 短期で効きやすいのはW(社会性等)です。建設キャリアアップシステムの活用、退職金制度や法定外労災への加入、防災協定、若手技術者の育成といった項目は、決算に関係なく取り組めます。逆にX1(完成工事高)やY(財務)は決算の組み方と実績の積み上げが必要です。

Q. 経審を受けないと公共工事はできませんか?

A. 発注者から直接請け負う(元請となる)場合は必要です。下請として工事を行う場合は経審は必須ではありません。ただし元請が下請の体制を評価する際に、経審の有無や点数が見られることはあります。

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